信州観劇日記

ことい

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上田いろいろ

『ゲバルトの杜 〜彼は早稲田で死んだ』(上田映劇・長野県上田市)

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アフタートークとともに。

いや…ついこの間まで「モアパッション!」って言ってた人に内ゲバの話ってのは、なかなか酷い…と思いつつ、野次馬根性込みで馳せ参じる。

日本赤軍のあれこれについては人間の動きで記憶しているので、再現ドラマ付きのドキュメンタリーかなんかを見たんだと思う。若さと閉鎖空間で剥き出しになる本能と欲望。それを正当化するためだけの存在に成り果てる大義。重い。

因みに漫画『RED』は未見。いつかはと思いつつ、あれを浦上さんの絵で見たら、立ち直れないだろうなと、自分のコンディションを整え切れずにいる。

そういう意味では、今回の内容はまだ素直に捉えられた。

端的に言うなら『生き残り』と『敵討ち』が行動のベースでシンプルに思えた。まぁ、だからこそ質が悪いわけだが。厳密な意味での「目には目を」にしろ「右の頬も差し出せ」にしろ、仲間やら団結やらが醸す正義を前にして…結局、第三勢力にしかならんのだろうな。

組織がいくつにも分裂し、互いに抗争を複雑化させていく。今、この瞬間、誰が敵やら味方やら。よく紡ぎ切ったと思う。

鴻上さんの作中劇は、正直、再現ドラマの印象だったが、オーディションから映される今どきの若者らが事実を知り、そこに身を置き、追体験することに意味があったのではないかと思う。途中、演じるにあたっての感情を若者が鴻上さんに問うていたが、本人の内面に湧き上がるもので良いとしていたことでも、そういうことだと解釈した。

池上彰さんを講師として迎えて若者らが座学を受ける場面、質疑で「学生運動が残したのは?」との問いに「机と椅子が固定されただけ」と答えられた。それは冗談めいて片付けられていたが、個人的には自分の幼少期の例えようもない閉塞感と厭世感の理由が理解できた気がする。この前提で、今どきの若者はって言われても「あんたらのせいじゃ」としか言いようがない。

無論、自分もヒッピー的な自由に救われた経験もあり、個人がどうとか世代がどうとかではなく、大局的には陰と陽の大きな揺らぎの一場面でしかない…と、今は理解しているけども。

監督は革マル派の方の声も残したかったという。サインを貰うときに「家族への影響を懸念されてね」と教えてくれた。そうか…と…。だからこそ、あの極限と今を行き来した人達の言い分と記録は残っていて欲しく、自分も耳にしておきたい…そう感じた。

そんなこともあり、ノンフィクションに対しては失礼かもしれないが、事件の正確性に対しては鵜呑みにしていない。片方の視点を素直に並べたものと理解した。関係者や後継者にはけして風化しておらず、センシティブな内容だとも理解した。

が、一つひとつの発言、写真、そして若者らの言葉、それらも一つの真実だろう、と。

また、ひとつ、学べた気がします。

そして、こういう諸々の生々しさも踏まえた上で、「モア、パッション!」っ言わせちゃう、つかこうへいさんの凄さもあらためて実感した次第です。

お疲れ様でした!

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