信州観劇日記

ことい

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INDEPENDENT in 松本

『名前のつかない有様に』 尾沢奈津子☓勝山修 (INDEPENDENT in 松本 2024・上土劇場・長野県松本市)

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自ブロック終演後、来てくれた友人に挨拶をと駆け寄って、ひとしきり話した後で「そうきたか」と言われる。「いや、自分の演技をやりきったか、悔いが残ったか、どっちかなと思ってたんだけど、他の人の芝居の感想が来ると思ってなかった」って。確かに。

演出の勝山さんの作品は恐らく3つ目。上田のインディペンデントで観た「プシュケ」は「今時&テクニカル」のイメージ。同じく上田の「スーパー短編劇場」も「『トップ』&テクニカル」…と思いつつ女の友情にマンマと泣かされた。

で、今回。



SFやファンタジー要素はなく、話として目新しいかと言えばそうではないのだが、ダンサーとしての演者の特性を踏まえつつ…あぁもう悔しい。

インディペンデントの限られた文字数での作品紹介を読み返して「そうなんだけど、そうじゃない」ってなる。「ダンサーが台詞を得る」って、いや、確かにそうなんだけどさ。本質的に逆では?ってなる。いや、むしろそのミスリードが後半のギャップに繋がる訳で、それもあざとい計算づくか?天然か?ってモヤモヤする。

もっと、作品に触れたいが、ネタバレが怖くて言えない。…うーん、この。

今回、舞台裏も見れている訳たが、尾沢さんの表現に対する態度の謙虚かつストイックなこと。不勉強で申し訳ないが、ポリシーを持って自身のカンパニーを長年率いた実績があり、そのうえで身一つになろうとしている。

喉を含めた身体のウォーミングアップ、微調整、そして全力。終わった瞬間の演者を舞台袖で間近に観られた訳だが、本当に全てを使い果たしていた。それでいて、二日目も同様のパフォーマンスをキッチリ出力する。プロだなぁって。当然、そのためだけの生活をしているからこそなのだけどさ。いいもんみさせてもらったなぁって。

ところで、劇中の関西弁、リハでは早口で緊張でもしてたのかと思ってたら、そっちの方がネイティブ表現だったっぽい。かつ、「それだと圏外の人には伝わらない」と言う演出からの助言で本番はだいぶ大袈裟な関西弁に切り替えたらしい。当然っちゃ当然だが、こういう寄り添ってくれる気持ちって、ありがたいよな…って。

先入観によるミスリードがある分、2回目の気付きにも繋がる。もし、機会あれば、また是非。
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