信州観劇日記

ことい

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犀の角

『パンとバラで退屈を飾って、わたしが明日を生きることを耐える』趣向 (犀の角・長野県上田市) 2024/4/26

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オススメされたのが嬉しく、調子に乗って観に行く。
当日パンフの用語集にメンヘラワードが羅列されているのをみて「あ~ね」と心の準備を整える。



メンヘラ界隈には一定の知識があり、自らの通院歴もある。振り返ると自分がどこまで重篤だったかは分からず、喉元を過ぎた無責任さもあって、経験者とは主張しがたい。が、当時の待合室の馴れ合いっぽさをはらんだ人間模様や個人の掲示板での荒れ具合とかは、当時の厨二病的な憧れや嫉妬の感情も含めて記憶に残っている。今回感じたのもそんな雰囲気。
自分が参加しかけたお芝居があって、似た台詞があって。当時、自分でもなんであんな解釈したんかなって思ってたのが、あぁ乖離か…って。なんか記憶にあったんかもな。

もちろん重篤な方はこの世にいて、全てがファッションとは言わんが、自助グループの危うさは感じている。近しい存在として理解が早く助け合うことは合理的なのだけど、彼らは被害者であり加害者でもあって。なかなかに綱渡りな光景だ。そんな当たり前のことなのに、なんか強く意識した。当時なかった意識。両者を極端に行き来した気はするが、同時に両方なんだよな。



鬱を風邪に例えることもあるが、正直感染する病だと思ってる。ある程度の健全性がないと危うい。親身な顔をしながら、ふっと距離を取ってる時の私は身を守っている。
変な話、今回は演者さんが健全性を保ってて、あちらとこちらを行き来してくれてて、安心して観られた気がする。けっこうな内容なんだけど。終わりがけ、演出の方と他の人が話してるのを聴いてて、やっぱ訓練が必要っぽくて、学びたい気持ちになった。

そんなリスクをおかしてまで、この界隈を表現するのは何故か。…ってそこまでは聞かなかったのだけど、拙作「三つ巴」で表現したかったことと近いものは感じた。これでもこんな状態でも「生きてく」みたいな。見る人が見たら、こう見えたのかな…とか。
今の私は「ただ生きる」もなんとなく出来て、それは完全に年の功で。「たまたま生きている係」という言葉に救われただけに過ぎない。
その分、彼らの若さというエネルギーと欲に足掻く姿にヒリヒリする。そこを上手いこと通り抜けて、「ここまでおいで」とか。いや、彼らの方がもっと上手く泳ぎ切るのかもしれないけど。それくらい生々しいエネルギーを感じられたと思う。

作者の方に聞き覚えがあると思ったら、松本演劇祭にも来ていただいていた。また何かで観たい。有難い。

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