星明かりの記憶

第2話: 闇の中の微かな灯

1. 闇の始まり

私は闇に覆われた都市に住んでいた。

その場所は、どんなに太陽が昇っても常に灰色の空に包まれており、

人々は互いに無関心で生きていた。

私はその暗い都市に完全に溶け込んでいた。

過去は限りなく重く、絶え間なく私を押しつぶす記憶の影だった。

子供のころから始まった苦しみは、私を徐々にもっと暗い場所へと押し込んでいった。

そして、私はそこから抜け出すことを望まなかった。

父は酒に酔って毎晩暴力を振るい、

母はそんな父に無力に従い続けていた。

私に与えられたのはひとつだけ、絶えず涙を流しながら生きる人生だった。

学校に行っても友達は一人もおらず、家庭はもはや「家」と呼ぶには程遠かった。

私は世界と完全に断絶されたまま生きていた。

そして、暗い部屋の中でひとりぼっちで過ごし、次第に自分を失っていった。

人々との関係を恐れ、私はますます孤独になった。

私の世界は、まさに「闇」そのものだった。

私の中にはもはや光を見つけることはできなかった。

死を考えることもあったが、それさえも私には全く新しい考えではなかった。

私はそのまま、闇の中で生きる運命だと信じていた。

2. 君に出会う

彼女と初めて出会ったのは、小さなカフェだった。

その日も私はいつものように暗い顔をして座っていて、周りを意識しないようにしていた。

人々は私を無視し、私はその視線を避けていた。

しかしその日、彼女は違った。

一目で私を見つけたかのように、静かに近づいてきて座った。

最初は奇妙な感じだった。

私は誰にも話しかけないし、一人でいる方が楽な人間だったからだ。

「一人で座るのが好きですか？」彼女の声は柔らかく温かかった。

私はしばらくぼんやりと彼女を見つめていた。

そのような質問をされるのは気まずかったが、心の中のどこかで何かが芽生えるような感覚があった。

答えはできなかったが、ただうなずくだけだった。

彼女は私に自然に話しかけ、私は次第に彼女との会話に慣れていった。

彼女の名前はセヒだった。

セヒは私に何も尋ねなかった。

私の過去や傷について、何も聞こうとはしなかった。

ただ、私が話すことをそのまま聞き、うなずきながら待ってくれた。

ある日、彼女は私に言った。

「あなた、きっと光を見つけられるよ。闇の中に隠された光があるんだよ。」

彼女の言葉は、私には信じ難いものだった。

私はそんな光を見つけることができるなんて思ったことがなかった。

しかし、セヒと一緒にいると、私の中で長い間眠っていた希望が少しずつ目を覚ますような気がした。

彼女の笑顔と温かい言葉が、私に大きな力を与えてくれた。

初めて、私の人生に希望が芽生えたと感じた。

セヒは私に光を与えてくれた。

彼女の存在そのものが、私の暗い世界に光を照らすような感じがした。

彼女と一緒にいると、私は初めて「生きている」と感じることができた。

彼女は私に少しずつ変化をもたらす存在だった。

私は、彼女と一緒なら、闇を乗り越えられると思った。

3. 彼女の離脱

そうして数ヶ月が過ぎ、私はますます彼女と近づいていった。

しかし、その時、私には予期しない出来事が起こった。

偶然起きた交通事故で、私は大きな怪我を負った。

不運にも、私は回復が困難な傷を負い、

私の人生は再び暗いトンネルへと引き込まれていった。

セヒは私の側を離れた。

私は彼女がなぜ私を離れたのか、理解できなかった。

私は自分でも予想できなかった傷により崩れ去り、

彼女はその崩れた私が苦しんでいる姿に疲れ果てて離れていった。

「私はもうあなたが大丈夫だとは信じられない。」

彼女は最後に私に言い、私の手を離した。

「あなたに力を与えることができないかもしれない。ごめん…」

その言葉は、私の心に刃のように突き刺さった。

私は変わっていると信じていたが、

結局、私の暗い過去と傷が、彼女さえも私から遠ざける結果を生んだ。

その時、私は本当に自分が誰なのか、なぜ彼女が去らなければならなかったのか理解できなかった。

私には再び闇しか残されていなかった。

彼女がくれた光は、今は私の中にはもうなかった。

4. 闇の中の私

私は再びひとりになった。

彼女が去った後、世界はさらに冷たく、暗くなった。

私は過去と同じように、再び一人で闇の中を彷徨った。

傷ついた体と心を癒そうとしたが、何も私を救うことはできなかった。

彼女が去った後、私はもう何の理由でも人生の意味を見つけられなくなった。

しかし、ある日、再び彼女が私の記憶の中に現れ始めた。

彼女が私にくれた希望と光を思い出しながら、

私は自分の中に残っていた小さな光を呼び覚まし始めた。

私は彼女に頼っていたわけではなかった。

彼女が私に見せてくれた光は、実は私自身が見つけられる力だった。

彼女は去ったが、彼女の光は今も私の中に存在していた。

私は再び立ち上がれるだろう。

たとえ彼女が私の側にいなくても、彼女から学んだことを通じて、再び世界と向き合う準備ができた。

私が探すべき光は、実は私の中にあった。

その光を追い求めれば、いつか闇を抜け出せるという希望を再び胸に抱いた。

セヒは去ったが、私は彼女の光を胸に抱えて生きていくことに決めた。

私がセヒに期待していたように、

今度は私が自分自身に光を与えて生きていかなければならないことに気づいた。

暗い過去の中でも、私はその光を信じて前に進むだろう。

彼女の笑顔と温かい瞳は、今や私の心の中で永遠に生き続けるだろう。

暗い世界の中でも、私はその光を追い求め、再び始める。

そして、その後、私は驚愕の事実を知ることになる。

セヒが実は、私に与えた光の代償として、借金の額が膨れ上がり、

ついにはその負債が彼女を追い詰め、極端な選択をさせてしまったということを…。

彼女の死は、私の心に深い闇を残しながらも、

私を一層強くさせることになった。

最終的に、彼女の命を代償にして見つけた「光」とは、

その存在が私にとって何だったのかを理解するための試練でしかなかったのかもしれない。

「光を信じて生きることの意味は、時にその代償を払わなければならないということだ。」