スキルを得られない特殊体質の少年。祠を直したらユニークスキルもらえた(なんで??)

屯神 焔

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9 逃走??

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 「やあああああ!!」

 「ヴホオオオオオオオオオ!!」

 突然攻撃を受けた森兜大猿は叫び声を上げた。

 リーナの持つ両手剣が森兜大猿の胸に深くめり込んでいく。
 しかし分厚い筋肉に阻まれ、核まであともう一押しが足りなかった。

 「【天使】!」
 〔〔〔『パワー』〕〕〕

 そこに、【悪魔】を戻し【天使】を出したギルがリーナに攻撃量上昇のバフをさらに重ね掛けする。

 メリメリ バキン!

 「ヴぼお”お”お”お”お”お”お”お”お”お”お”ぉぉぉぉぉぉ・・・・・!」

 両手剣が森兜大猿の胸に深々と突き刺さり、ついに核を破壊した。

 断末魔を上げ倒れる森兜大猿。

 抜けない両手剣から手を離し離れるリーナ。
 ギルも【天使】を戻さず周囲への警戒を緩めない。

 ギルは連続で魔導傀儡の呼び出しと収容を繰り返した影響で息を切らしていた。

 リーナもアビリティを連発し、MPが半分を切っていた。

 ギルの【魔導傀儡】のスキルは、使用するたびに使用者の精神力を削っていく。
 リーナの【鬼竜】のスキルも、強力な反面、反動や代償が大きく、本来は今回のように一度の戦いで2回以上使用するべきではない。

 そもそも、30匹を超える森仮面猿と戦い、葬った直後での戦闘。
 2人はいざとなれば逃げ出せるよう体力の回復に努めていたが疲労していることに間違いはなかった。

 ドン・・・ ドン・・・ ドン・・・

 遠くから一定間隔をあけて低い太鼓の様な、大地を踏み鳴らすような音がギルとリーナの耳に届いた。

 音のするほうへ顔を向けるた2人は、即座に逃げる以外の選択肢を除外した。

 山の向こう側からこちらへ飛んでくるいくつもの暗い緑の毛玉。
 その毛玉にしがみついている何匹もの森仮面猿。
 森兜大猿が5匹、そこにしがみつく森仮面猿が不特定多数。

 先ほどの戦闘よりも厳しくなる、否、勝てないことは明確だった。

 「逃げるぞ! 【妖精】!」
 〔〔『クイック』〕〕
 「分かってる!」

 ガチャで手にいれた武具をすぐさましまい、【妖精】はバフを受けた瞬間にしまい、全速力で山を駆け抜ける。

 草原のような広く平坦な場所ならば【狼】に乗れば逃げ切れるだろうが、残念ながらここは森猿のホームに近い木々が多く生えた山の中。
 ステータスの上ではギルとリーナの方が優れてはいるが、初めて来た山の中で逃げる人間と、住み慣れた木々を飛び跳ねる猿。

 ステータスに差があるのでなんとか追いつかれずに済んでいるが、慣れない山の中では先に体力が尽きるのはギルとリーナのほうであろう。

 さらに、森猿たちは数の利を活かして、ギルとリーナを草原のほうへ行けないよう追い立てた。

 追いつけなくても、逃げる方向を誘導するくらいなら森猿にもできた。

 「ハッ。ハッ。誘導されているな。」
 「喋らない。ギルは私より体力が少ないんだから。誘導されているのはともかく、この先何がいるかによる。」

 残念なことに、山に入る前から感じていた嫌な気配はどんどん近付いてきている。

 木々の間を駆け抜けながらもギルは思考を止めない。

 こんなところで死ねない。リーナも死なせるわけにはいかない。
 この先には例の『嫌な気配』がする。その方向に誘導されているのは分かってるが、森猿の数が多すぎて逃げ道が限定されすぎている。

 どうすれば良い?

 どうすれば・・・。

 ギルが考えている中、リーナは呼吸を整え生き残るために体力を少しでも温存させていた。

 何があっても生き残る。
 ギルは一度断言したことを破らない。なら、私は絶対に生き残る。
 でも、そのときはギルも必ず一緒だ。そうじゃなかったら意味がない。

 ギルと一緒に生き残るにはどうすれば良いのか。

 2人が生き残るために必死で頭を振り絞っていたときだった。

 「ヴゴオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアア!!! グオオオオオガアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 その叫び声は、ギルとリーナが追い立てられていた方向から轟いた。

 すぐさま『嫌な気配』の主の断末魔だと気づいたが、二人はそれでも足を止めなかった。

 もしかしたら『嫌な気配』の主を倒したのがもっと恐ろしいモンスターかもしれないという考えが2人の脳裏をよぎったが、その可能性をすぐに否定する。

 そんなものが現れたら嫌でも気づいてしまうだろう。
 しかし、今2人が向かっている方向には、嫌な気配どころか、むしろ少し安心できるような気配が感じられた。

 木々を通り抜けていくと、突然開けた場所に出た。

 なぎ倒された、黒焦げになった、吹き飛んだなどの原因が考えられるであろう光景が、ギルとリーナの目の前に広がっていた。

 大きな森猿の親玉が倒れ、その奥に20人を超える冒険者だと思われる人々が応急処置を受けていた。

 倒れた体長5メートルを優に超える筋骨隆々の肉体に、攻撃を受けたせいだろうか、全身を覆っていたであろう鎧のような甲殻は周囲に砕けて散らばっていた。

 その光景を見たギルは、すぐさま交渉モードに入る。
 リーナはすでに安心しきった表情をしていた。

 「おい! そこのお前ら! 今山の中から出てきたな! 何をしていた!」
 「私たち、リー「俺たちは田舎から出てきた冒険者志望のものだ! 先ほど森猿系統のモンスターたちに襲われそれに応戦! 最初の戦闘には勝利したが、その後大量に出現したモンスターに追われ逃げてきた!」

 リーナの言葉をさえぎってギルが言葉を発する。

 「ギルどうして?」
 「まだ下手に名前を口に出すな。俺たちはモンスターのボスとの戦闘に彼らが勝利した後に現れたんだぞ。怪しさ抜群だ。」

 それを聞いて大人しく頷くリーナ。

 こちらに気づき2人に最初に声を掛けた大男が声を張り上げる。

 「そうか! 少し待ってろ! こちらの回復が終わり次第そちらの回復に向か「何言ってるんですか! あんな子供たちがモンスターに襲われて逃げてきたんですよ!? すぐさま回復するべきです!」・・・お前なぁ。」

 大男が喋っているときに言葉をかぶせたのは小柄なショートカットの女性だった。

 2人の体格差が大きすぎてまるで熊とウサギのように感じたギル。
 リーンの顔をちらりと見ると、ギルと同じような顔をしていてなぜだが安心するギル。

 「100%絶対確実にモンスターではないと確信できるならお前一人で回復して来い。それができないなら大人しくここで座ってろ!」
 「俺たちなら大丈夫です! たいした怪我はしていません! そちらの回復がおわってからでかまいません! ただ、よろしければ最寄の町へ連れて行っていただきたい!」

 倒れた巨大猿の死骸を挟んで声を掛け合うギルと大男。

 結局、回復が終わり次第話をし、人間である証明ができたら連れて行くということになった。
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