スキルを得られない特殊体質の少年。祠を直したらユニークスキルもらえた(なんで??)

屯神 焔

文字の大きさ
9 / 10

8 森猿??

しおりを挟む
 ・・・まだ生物の気配を感じられない。

 「ギル。なんかヤバイ。」
 「分かってる。警戒を強める。」

 ギルは【蝶】をさらにもう20体呼び出し、半径50メートルの円形にばら撒いた。

 リーナは呼吸を整えながら山をゆっくり進んでいく。
 ギルは、それに置いていかれないようにしながら、【蝶】から送られてくる映像を確認していた。

 しばらく、ギルとリーナ以外の気配を感じられないまま山を1つ越えた。

 山の麓に川を見つけ、そこに降りていく二人。

 「まだなにも感じられないね。」
 「ああ。異常すぎる。」

 ギルが答えた瞬間、2人は同時に背中を合わせ武器を抜いた。
 周囲の至る所から赤く光る2つの点が現れる。

 モンスターの眼光だった。

 「【蝶】は全部壊された。俺たちがこいつらに気づいたと同時にだ。」
 「じゃあ、最低でも30匹は居るわけだ。」

 ギルは黙って頷く。

 山の中から明らかに30匹分を超える眼光が現れる。

 2対多じゃあ【悪魔】のデバフはあまり意味を持たない。
 俺たちにメリットのあるバフを重ね掛けしたほうが効率的だ。

 「【兵士】【妖精】【天使】」

 ギルはバフを使える【妖精】と【天使】、そして状況に応じてさまざま武器に自動で変える【兵士】を呼び出した。

 ギルとリーナはそれぞれ二歩ほど前へ出た。

 剣と盾を持った【兵士】を2体、ギルの傍へ。
 そして2体の【天使】は、それぞれ2人の頭上に。

 【妖精】は2体ともリーナの周囲に。

 「『パワー』『クイック』『鬼竜体』。いくよギル。『鬼竜の咆撃』!!」

 リーナが声を掛けたと同時に耳を強く塞ぐギル。
 リーナから、可憐な少女から発せられているとは思えない轟音が響く。

 「グオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアア!!!」

 〔〔『パワー』『バリア』〕〕
 〔〔『パワー』『バリア』『マナバリア』〕〕

 2体の妖精と天使の無機質な声が重なる。

 リーナから発せられる轟音により、周囲で眼光のみ光らせていたモンスターが正体を現す。

 取り囲んでいたモンスターの3分の1はリーナのアビリティによって鼓膜を破壊され、気を失っていた。

 2人を取り囲んでいたのは、木の葉のような深い緑の毛色をした、仮面を被ったサルだった。

 「ウキャー! キャー!」
 「仮面猿か!」

 いや、仮面を被ったように見える、といったほうが正確だ。
 顔面の皮膚が高質化し、仮面のように変質したため、仮面猿と呼ばれている。

 正式名称は『フォレストマスクモンキー』。

 外見そのままである。

 森仮面猿の本来の住処は、木々が生い茂る深い森である。
 それがどうしてこんな山の中に居るのか、ギルは疑問に思った。

 ギルは、グランから冒険者が知っていて当然のモンスターや、出会うことがありそうなモンスターの情報は全て頭に叩き込まれていた。

 「ウキャキャー!」
 「キャーッ!」

 疑問に思ったのも束の間、飛び掛ってくる森仮面猿。
 リーナに襲い掛かった森仮面猿は、リーナが横に振るった一撃で全て胴体を真っ二つに切り裂かれた。

 攻撃範囲外にいた森仮面猿は天使の光球に打ち抜かれた。

 ギルは、落ち着いて目の前の2匹を一太刀で首を半ばまで切ることで殺した。
 残った4匹の森仮面猿は、ギルの両側に居た【兵士】に頭、もしくは心臓を貫かれ死に、それを見て躊躇した森仮面猿の首をギルが刎ね、【天使】の光球が周囲の森仮面猿を打ち抜いた。

 そして、その勢いのまま森仮面猿を切り伏せていくギルとリーナ。

 わずか数分でギルとリーナを取り囲んでいた森仮面猿は半数以上減った。

 残っている森仮面猿は約20匹。

 その中の1匹が、迷うそぶりを見せながらも、顔を歪めながら大きな鳴き声をあげた。

 「ウキャーーーッ! ウキャキャーーーッ!!」

 その瞬間、その場に居た全ての森仮面猿が血相を変えて叫び始めた森仮面猿を叩き潰した。
 川原にあった大きな石や流木で叩き潰されていく1匹の森仮面猿。

 原型を留めなくなり、もともとの姿がまったく分からなくなるくらいグチャグチャになったころ、森仮面猿たちは動きを止め、そーっとあたりを見回した。

 ギルとリーナは警戒したまま、ゆっくりと、一歩ずつ離れた。

 地面に下ろした荷物に手を伸ばそうとしたとき、突然空から影が差した。
 反射的に上を見上げる2人。森仮面猿たちも同様であった。

 空から降ってきたのは、暗い緑の毛玉だった。

 ドチュッ!!

 それは、ギルとリーナのほうではなく、一箇所に固まった森仮面猿たちを潰しながら着地した。

 運よく生き残った1匹の森仮面猿は、毛玉から伸びた太い指の間に頭を挟まれ、胴体から頭を引きずり出され死んだ。

 暗い緑色の毛玉は、ゆっくりと起き上がった。

 顔の前面だけではなく、首から上を覆う兜のような高質化した皮膚。
 全身を筋肉の鎧で覆われた暗い緑色の体毛。
 拳の表面は濁った赤を含んだ灰色の金属を連想させる質感だった。

 「兜大猿か。」

 「ウホホホホホッウホホホオオオオオオオオオッ!!」

 大声を上げ、興奮した様子の森兜大猿。

 体長は2~3メートルはあるだろう。
 腕は人間の胴体が2つは入りそうな太さだ。
 足は短いが太い。あれじゃあ足から狙っても効果は薄そうだ。

 なら背中から奇襲すれば?
 とギルは考える。

 しかし体毛も光沢を放ち、簡単に刃が通るとは思えなかった。

 では、モンスター全てに共通する弱点、『核』を狙うのはどうだろうか。
 あの大猿の胸部には体毛は生えていない。なら、下手に追い詰めるより、一気に勝負を決めたほうが良い。

 「リーナ、バフを掛けるからあの兜大猿の胸の中心を狙え。なるべく短期決着を狙う。血の臭いでさらに猿たちが寄ってくるかもしれない。そうなると俺たちが圧倒的に不利だ。」
 「うん。あの大猿、私たちにまったく意識を裂いてない。警戒されてないなら好都合。」

 リーナは額に血管を浮き出させながら答えた。
 警戒すらされていないことに大層怒っていた。

 「【妖精】【堕天使】」

 【兵士】と【天使】を戻し、6体の【妖精】と1体の【堕天使】を呼び出した。

 〔〔〔〔〔〔『パワー』『クイック』〕〕〕〕〕〕
 〔『ハイパワー』〕

 6体分の『パワー』と『クイック』に、今のところ【堕天使】にしか使えない『ハイパワー』のバフが掛かったリーナは、ギルがガチャで得た両手剣を構え、一度深呼吸をする。

 〔『アンチガード』〕

 リーナが踏み出す瞬間、森兜大猿に【堕天使】が防御力を下げる支援魔法を放った。

 「総攻撃!」
 〔〔〔〔『ダークスピア』〕〕〕〕
 「『鬼竜斬砲』!!」

 【妖精】と【堕天使】を戻し、代わりに魔法攻撃力の高い【悪魔】を4体呼び出したギル。
 そして、アビリティを発動したときには、すでに死体で遊んでいた森兜大猿の懐に入っていたリーナ。

 リーナの攻撃が入る一瞬先に森兜大猿の胸部に魔法の6連続攻撃が入る。
 そして肉が抉れた胸に、リーナの攻撃が突き刺さった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

1000年生きてる気功の達人異世界に行って神になる

まったりー
ファンタジー
主人公は気功を極め人間の限界を超えた強さを持っていた、更に大気中の気を集め若返ることも出来た、それによって1000年以上の月日を過ごし普通にひっそりと暮らしていた。 そんなある時、教師として新任で向かった学校のクラスが異世界召喚され、別の世界に行ってしまった、そこで主人公が色々します。

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした

茜カナコ
ファンタジー
魔法使いよりも錬金術士の方が少ない世界。 貴族は生まれつき魔力を持っていることが多いが錬金術を使えるものは、ほとんどいない。 母も魔力が弱く、父から「できそこないの妻」と馬鹿にされ、こき使われている。 バレット男爵家の三男として生まれた僕は、魔力がなく、家でおちこぼれとしてぞんざいに扱われている。 しかし、僕には錬金術の才能があることに気づき、この家を出ると決めた。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

処理中です...