スキルを得られない特殊体質の少年。祠を直したらユニークスキルもらえた(なんで??)

屯神 焔

文字の大きさ
8 / 10

7 準備??

しおりを挟む
 「・・・山が見えてきたな。」
 「ホントだ。村の近くの山の何倍もあるね。」

 低木がぽつりぽつりとしかない草原から、突然木々が生い茂る山々が連なっているので、草原と山の間はお互いの領域をきっちりと分けているかのようになっている。

 山と草原がこんなにはっきりと分かれるものなのか?

 ギルはふと疑問に思った。

 小さな丘の上に来たところで山が見えたので、現在は丘の上で留まっている。

 「ねえぎギル。行かないの?」
 「・・・もうじき日が暮れる。今晩は見張りを魔導傀儡にまかせてここで夜を明かそう。」

 まだ山に入らない理由には、もうじき日が暮れることと、他にも、ここまで一切自分たち以外の生物の気配を感じなかったことが関係している。

 あの山の中に、その原因が居る。

 そう直感的に感じたギルは、まだ山に入らないと決めた。

 「分かった。私、あの山から嫌な気配がするんだけど、ギルはどう?」
 「俺もだ。明日、いつでも戦闘に入れるようにしてから行こう。」

 ここで野宿することが決まった時点で二人はテントを立て始めた。
 日が暮れてしまえば何も見えなくなってしまう。

 薪をくべようにもそんなものは無いため、グランから譲ってもらった明かりを灯す魔導具を使う。

 テントを立てた後、その小さな明かりの下で不味い保存食を食い、明日の方針を話し合った。

 「私、明日あの嫌な気配がするやつを叩いてから山を越えたほうがいいと思う。」
 「つまり、こっちから向こうを探し出すのか?」
 「うん。そうすれば、そのあとはそこまで警戒せずにいけるじゃん。」

 リーナの意見に、少し考えてからギルは首を横にふる。

 「いや、こっちは待ち構えながら行くべきだと思う。向こうは腹ペコなようだし、あっちから探し出してくれるだろう。」
 「えー。それじゃあ奇襲されるよ? さすがに私でもエンペラー級がいたらギルをかばいながら逃げられないと思うよ?」
 「エンペラー級がいるわけない、といいたいが、これだけ生物がいないと否定もできないんだよなあ。」

 モンスターのなかにも序列が有り、たとえばゴブリンなら、ゴブリン→ゴブリンリーダー→Gキング→Gエンペラー→Gゴッドといった風になる。
 モンスターの種類によって多少異なることはあるが、基本はこのような形になる。

 そして、キング級を越えた固体が現れた時点で町1つが壊滅する可能性がでてくる。
 エンペラー級なら、都市も危うくなり、ゴッド級が現れたら国家の危機として国を挙げて討伐することになる。

 実際過去にもゴッド級が現れ、二つの国が崩壊、五つの国が壊滅状態、十九の国が領土の2割をモンスターにより失った。

 エンペラー級でも、国が崩壊することがあるくらいだ。
 しかも現れるたびに何かしらの前兆があるという。

 ならば、現在の生物の気配がしないという異常事態も、この前兆なのではないだろうか。
 ギルは、その可能性も頭の中に入れておくことにした。

 「そう、だな。これだけの異常事態だ。こっちから迎えに行ってやろう。」
 「やた! だったら明日は戦闘日和になるといいね!」

 ギルは、リーナが立派な戦闘狂になったような気がしてくらっとした。

 その夜は、【巨人】をテントの前に、周囲に15体の【蝶】を配置した。

 「それじゃ、おやすみ。」
 「おやすみ、ギル。」





 夜が明け、ギルに魔導傀儡たちから日が昇ったと連絡が入った。

 「ふぅぁあああ。りーな。おきろ。あさだ。」
 「ぎるぅぅぅ。だきおこしてぇ。」
 「・・・自力でおきろ。」

 先に起きたギルも、起こされたリーナもまだ寝たりないといった雰囲気だった。

 もしかしたら寝ているうちに奇襲を受けるかもしれないと考えると、眠りも浅くなるを得なかった。
 しかし、グランとの訓練のおかげで慣れていたおかげか、二人はすぐに切り替える。

 「よし、体をほぐしたらいくぞ。」
 「うん。武器はお願いね。」

 朝食をとり、軽い組み手を行い戦闘のスイッチをいつでも入れられるように準備を進める。

 装備を整え、テントを片付け、ギルのスキルのガチャで手に入れた武具を装備していく。

 ギルの装備は、胸を覆う無料ガチャで手に入れた鎧と、リリナから手渡された篭手と脚甲だ。
 そして、腰に傀儡の長剣と短剣を刺した。

 リーナは胸、腕、足、に傀儡の鎧を着け、腰に片手斧を二つと、両腕に篭手の上に小盾を装着した。

 「よし、準備万端! いくよ、ギル!」
 「そのまえに魔導傀儡の戦力確認をさせてくれ。」
 「・・・。」

 いますぐに飛び出しそうだったリーナは、残念そうにうなだれた。

 そんなリーナにも見慣れてしまったギルは、リーナを無視して戦力確認をしていく。

     【魔導傀儡 亜空保管庫】
     蝶 :30体   鳥 :10体   狼 :5体
   小人:2体  妖精:2体    人 :2体
   兵士:3体  天使:3体  悪魔:4体
   巨人:4体   堕天使 :1体

 ・・・うん。キング級までなら大丈夫かな。一回戦ったこともあるし。

 ギルとリーナは、グランの訓練で山に放り込まれたときに、一度単独のゴブリンキングと戦ったことがあるのだ。

 キング級の脅威を知っていた2人は、全力を尽くして戦い、何とか追い出すことができた。
 ただ、追い出した後に二人とも気を失ってしまい、異常に気づいたグランが助けに来なければ危険だった。

 ギルは、あのときからさらに鍛錬を積み、強くなり、経験を得た今なら、キング級までなら倒せると考えた。
 エンペラー級が現れても、逃げ出すことくらいならできると、そう考えていた。

 リーナは、あのときのゴブリンキングの目を片方奪い、ダメージを負わせたのだから、強くなった今ならキング級なら倒せる。そう考えていた。

 運悪く・・・、2人の考えは一致していた。

 2人は勘違いをしていた。
 ゴブリンというのは、モンスターの中で最底辺の存在である。
 たとえキング級だったとしても、やはりキング級の中ではゴブリンキングは底辺の存在だ。

 そのうえ、当時のゴブリンキングは、キング級になったばかりで新しい体にまだ馴染んでいなかった。
 尚且つ、その固体は単独であり、武器・防具を装備していなかった。

 以上の理由から、2人はゴブリンキングを退けたのであって、万全の状態のキング級にもまだ勝つことは難しい。

 「確認終わった?」
 「ああ、行こう。」

 ギルは周囲に【蝶】10体を半径30メートルの円状に配置し、いち早く周囲の状況が把握できるように準備した。

 リーナは、いつ何がきてもすぐに戦闘のスイッチをいつでも押せるようにしていた。

 2人は、まだ自分たちの力を過信したまま山々のなかへ足を踏み入れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

1000年生きてる気功の達人異世界に行って神になる

まったりー
ファンタジー
主人公は気功を極め人間の限界を超えた強さを持っていた、更に大気中の気を集め若返ることも出来た、それによって1000年以上の月日を過ごし普通にひっそりと暮らしていた。 そんなある時、教師として新任で向かった学校のクラスが異世界召喚され、別の世界に行ってしまった、そこで主人公が色々します。

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした

茜カナコ
ファンタジー
魔法使いよりも錬金術士の方が少ない世界。 貴族は生まれつき魔力を持っていることが多いが錬金術を使えるものは、ほとんどいない。 母も魔力が弱く、父から「できそこないの妻」と馬鹿にされ、こき使われている。 バレット男爵家の三男として生まれた僕は、魔力がなく、家でおちこぼれとしてぞんざいに扱われている。 しかし、僕には錬金術の才能があることに気づき、この家を出ると決めた。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

処理中です...