スキルを得られない特殊体質の少年。祠を直したらユニークスキルもらえた(なんで??)

屯神 焔

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6 涙??

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 「じゃ、行ってくるね!」
 「おう。何があっても死ぬなよ。」

 15歳になった日の早朝。

 リーナとグランが別れの挨拶をしているのを、リリナとギルは一歩離れたところで見守っていた。

 「リリナさんもお元気で。今までお世話になりました。」
 「・・・ギル君、これ、君のお母さんに頼まれたものよ。」

 そういって、リリナはギルに篭手と脚甲を手渡した。

 鈍い色の鉄のような金属と、光を飲み込むような黒い物質で作られたものだった。

 「私は、あの時何もできなかった。だけど彼女は、それでも私を親友だと言ってくれたわ。」

 リリナはつぶやくようにぽつりと語り始めた。

 「私は何もしなかったことを心底後悔したわ。だから、あなたは間違えないで。」
 「ええ。ありがとうございます。」

 ギルはその場で装備をつけ始めた。
 なぜかサイズはぴったりで、長年使い込んだような付け心地の良さだった。

 「ギル早くいこー!」
 「分かったよ。【狼】黒丸、赤丸。」

 魔導傀儡の狼、なぜか色がつき強化された2体。
 よく呼び出していた2匹が強化され、それぞれ独立している人格を獲得している。

 黒丸はギルが普段よく呼び出していた【狼】で、ある日呼び出してみると、体が一回り大きくなり、一部黒くなり、強化されていた。
 理由はまだ明確には分かってないが、本物の動物のような動きをするのでギルは黒丸に愛着がわいている。

 赤丸はリーナがよく乗っていた【狼】で、黒丸と同様に強化された。
 体の大きさは変わっていないが、赤い色がつき、よく目立つ。

 赤丸と黒丸にはグランから知人に頼んでつくってもらった鞍がついている。
 鞍が無ければつかまる場所がないので、ギルが、というよりも赤丸に乗りたいリーナが頼み込んだのだ。

 「よし、日が昇りきる前に行くぞ。頼んだぞ黒丸。」
 コクッ

 「赤丸! ギルと黒丸を置いてくぐらい速く走るんだー!」
 ・・・コク

 一瞬うなずくのに躊躇する赤丸と、それに気づかずにテンションをあげていくリーナ。

 そして、二人は生まれ育った村を旅立った。

 黒丸と赤丸はかなり速く、バイク並みの速さで荒い道を駆けていく。
 【狼】の四本の足は、直接胴体と接していないので、揺れもひどくない。

 「あはは! 風が気持ちいいね、ギル!」
 「そうだな。こうやって広いところを走るのは初めてだ。」

 楽しそうな声とは裏腹に、ギルの前を走るリーナの瞳からが涙がこぼれていた。
 それをなんとかごまかそうと明るく振舞っていたが、限界が来たようだった。

 涙が止まらないリーナは、それを知らない振りをして笑顔を保つ。
 ギルは黙ってリーナの言葉に黙ってうなずく。

 「やっとパパとママの訓練終わったね。」
 「はじめて魔物を狩れたときは嬉しかったね。」
 「お母さんのお肉の料理、おいしかったね。」
 「おとうさん、私たちのこと、いっぱい、手伝ってくれたね。」
 「お母さんも、応援してくれたね。」
 「・・・リーナ。」
 「なあに?」

 突然問いかけてきたギルに、顔を向けないまま答えるリーナ。

 「泣いてもいいんだぞ。」
 「っ。」

 ギルの前を走るリーナの肩がピクリと動く。

 「溜め込まないでくれ。全部吐き出しても構わない。」
 「・・・っ。・・・いやだ。絶対、に、泣かない。」

 泣きそうになるのを必死にこらえるリーナに、ギルはため息をつく。

 「ギルは、泣かないん、だね。」
 「二度と会えないわけじゃない。これからのことが不安じゃないわけじゃない。大きな傷や苦痛を受けることが怖いわけじゃない。」
 「・・・。」

 ギルの話を聞きながら、リーナは少し落ち着いたようだった。

 「でも、それ以上に嬉しい。俺たちを信じて手伝ってくれたおじさん。俺たちを否定せずに応援してくれたリリナさん。本当に、嬉しくて嬉しくたまらない。だから、涙は出さない。」
 「・・・私は、もう会えなくなるかもしれない、って、思うと、怖くて、怖くて、冒険者になるのを諦めかけたりもしたんだよ?」

 意外な告白に、ギルは驚く。
 しかし、底無しに優しく、そして甘いリーナなら、おかしくないなと思った。

 「大丈夫だ。」
 「どうして? どうして大丈夫だって言えるの?」
 「俺がお前を守るからだ。絶対にお前を死なせない。だから、何があってももう一度あの二人に会える。」

 そう力強く言うギルに、リーナは思わず笑みがこぼれる。

 「もう、なにそれ。」

 それっきり黙ってしまったリーナは、しばらくギルの顔をまともに見られなかった。

 臭いセリフを言い放ったギルは、リーナの後ろで羞恥にもだえていた。

 ((顔を見られない。))

 二人の心の声がぴったりと重なった。





 「そろそろ一旦止まろう。日が高くなってきた。」
 「う、うん。」

 少し顔を赤くしながら、もう恥ずかしいのは諦めたギルが声をかける。
 リーナはまだ割りきれずに顔を赤らめたままうなずく。

 あの木の下でいいか。

 そう思ったギルは、道から少しはなれたところにある木の陰へと入る。
 少し遅れてリーナもやってきた。

 「都市ダリムまであと丸2日以上かかる。不味い保存食だが我慢できるか?」
 「う、うん。だだ大丈夫。」

 まだ挙動不審なリーナを見て、気まずいと感じるギルだった。

 乾燥した固いパンと干した塩漬け肉。正直言ってかなり不味い。
 あんな辺鄙な村ではこんなものしか用意することができなかった。

 「途中で獲物がいればよかったんだが。」
 「一匹もいなかったねえ。鳥も飛んでなかった。」

 胃袋を満たし、リラックスしたリーナが答える。
 どうやら先ほどまでのことは忘れたようだ。

 「ああ。たしか、都市ダリムには動物を寄せる効果がある超大型の魔導具があるらしい。」
 「パパが言ってたやつだね。動物を餌にする魔物もよってくるから、冒険者の仕事がたくさんあるっていう。」
 「ときおりバケモノもやってくるらしいけどな。まあつまり、動物や魔物が現れ始めたら都市ダリムに近づいている証拠だ。」

 リーナはうなずきながら赤丸にまたがる。
 それと同時に、村を出た後の一連の出来事を思い出したようだった。

 顔を赤らめ始めたリーナを見てギルも気づくが、知らない振りをして黒丸にまたがり、走り始める。

 また、しばらくお互い顔を見られない道中になってしまった。
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