追放された聖騎士は《武具分解》と《武具融合》を駆使して成り上がる

くぬぎ

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頼れる相棒

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  翌日、俺たちは冒険者ギルドの依頼掲示板の前に立っていた。リリの初陣にふさわしい、それでいて危険の少ない依頼を選ぶためだ。
 俺としては簡単なゴブリン討伐あたりが妥当だと考えていたが、リリはやる気に満ち溢れていた。

「おにいちゃん、これにしよう!『オルンの森のゴブリン退治』! 最近、数が増えてて、ちょっと手強いって書いてあるよ!」
「……少し背伸びしすぎじゃないか?」
「大丈夫! 今のリリと、おにいちゃんならできる!」

 その自信に満ちた瞳に押され、俺は結局その依頼書を手に取った。数はおおよそ10匹前後。リーダー格のホブゴブリンがいる可能性もある、少し骨のある依頼だ。



 オルンの森は、昼なお暗い鬱蒼とした場所だった。湿った土の匂いと、不気味な静寂が俺たちの緊張感を高める。

「リリ、油断するな。敵はどこに潜んでいるか分からん」
「うん!」

 リリはショートソードを抜き、小さな円盾を構える。その時、彼女の狐耳がぴくりと動いた。

「おにいちゃん、右の茂みと、あと、上の木の上! キラキラが二つある!」
「なにっ!?」

 リリの言葉と同時に、茂みから一体、そして頭上からもう一体のゴブリンが襲いかかってきた! 挟み撃ち、しかも高低差を利用した奇襲。ただのゴブリンとは思えない知能だ。

「くっ!」

 俺は茂みから来たゴブリンの前に立ちはだかり、その棍棒を大盾で受け止める。だが、木の上からリリに飛びかかったゴブリンへの対処が遅れる!

「リリ!」

 俺の焦りをよそに、リリは驚くほど冷静だった。
 リリは飛びかかってくるゴブリンを正面から見据え、教えた通りに盾を構える。しかし、ただ防ぐだけではなかった 。

 ガキン!

 盾で相手の短剣を受け流した瞬間、リリはまるで猫のようにしなやかに体を回転させた。その遠心力を利用した斬撃が、体勢を崩したゴブリンの脇腹を鮮やかに切り裂く!

「グルァ!?」

 悲鳴を上げたゴブリンが地面に転がる。だが、敵の猛攻は終わらない。森の奥から、リーダー格である体格のいいホブゴブリンを含む、残りのゴブリンたちが一斉に姿を現した。

「チッ、やはりいたか!」

 ホブゴブリンは俺に狙いを定め、巨大な鉈を振りかぶってくる。その一撃は重く、俺は大盾で受け止めるのに集中していた。その隙に、二匹のゴブリンが左右からリリに襲いかかる。

「リリ、対処できるか!?」
「まかせて!」

 リリは、もはや俺の指示を待ってはいなかった。
 右から来たゴブリンの突きを、最小限の動きでバックステップして回避。左から来たゴブリンの薙ぎ払いを、驚異的な跳躍力で飛び越える。空中でくるりと体を捻り、着地と同時に一匹の背中を斬りつけた。

 その動きは、俺が教えた剣術とは全く違う。獣の本能が導き出す、予測不能で、あまりにも美しい戦闘舞踊。

 俺がホブゴブリンと力比べを演じている間に、リリはたった一人で三匹のゴブリンを相手に立ち回っていた。
 盾で攻撃を受け流し、剣で反撃するだけではない。木の幹を蹴って三角飛びのように敵の背後に回り込んだり、低い姿勢で駆け抜けて敵の陣形をかき乱したりと、その小柄な体を最大限に活かして戦場を駆け巡る。

 リリの戦いは、守られるべき弱者のそれではなく、紛れもなく、敵を狩る捕食者の動きだった。

「シャアァァ!」

 ホブゴブリンが、俺の盾を弾き飛ばそうと渾身の力を込めてくる。その瞬間、視界の端で、最後の一匹のゴブリンを仕留めたリリが、地面を強く蹴るのが見えた。

「おにいちゃん、今!」

 リリは俺とホブゴブリンの間に割って入るように、その小さな体で突進してきた。そして俺の大盾を踏み台にして、高く、高く跳躍した。

「なっ!?」

 ホブゴブリンが驚きに見上げたその顔面に、空中で逆さまになったリリの痛烈な蹴りが叩き込まれる。

 ゴッ!

 鈍い音と共に、巨体がぐらりと揺らぐ。
 その一瞬の隙を、俺が見逃すはずがなかった。

「終わりだ!」

 渾身の力を込めた剣の一振りが、体勢を崩したホブゴブリンの首を薙ぎ払った。

 静寂が森に戻る。残されたのは、ゴブリンたちの亡骸と、肩で息をする俺たち二人だけだった。

「リリ、お前……」

 俺は言葉を失い、ただ目の前の少女を見つめた。リリの体は泥と返り血で汚れていたが、その瞳は、勝利の喜びに力強く輝いていた。

「はぁ……はぁ……。おにいちゃん、やったよ!」

 リリは興奮で頬を赤らめながら、息を切らして俺を見上げた。

「リリ、おにいちゃんのこと、ちゃんと守れたかな?」

 誇らしげに、そして少し照れくさそうに笑うリリ。俺は、こみ上げてくる笑いを抑えきれなかった。

「ああ、見事だった。お前の動きは完璧だ」

 俺はリリの頭を撫でながら、心からの賛辞を贈った。聖騎士として、数々の冒険者とパーティを組んできたが、これほどまでに息の合った連携ができたのは初めてだった。

 俺が鉄壁の守りを固め、その守りの中で、リリという名の鋭い刃が自由に舞う。
 この戦い方こそが、俺たち二人にとっての最適解なのかもしれない。

「さて、依頼は完了だ。ギルドに戻って報告するぞ」
「うん!」

 俺はリリの頭をわしわしと撫でた。
 こいつは、俺が守るべきか弱い存在なんかじゃない。
 俺の背中を預けるに足る、唯一無二の「相棒」だ。
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