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第3章:小さな命
しおりを挟む家では、エリーとアスナがちょうどお茶を飲んでいた。
掃除を終えて、ひと息ついていたのだろう。
俺が少女を抱えたまま玄関を開けると、
カップが落ちて割れる音とともに、空気が凍りついた。
「……ロリコンだったのね。驚いたし、キモいし……もう友達やめる」
そう言い放ったのは、銀髪ショートのエリー。
「見損なったわ」
冷たい声で言ったのは、黒髪のアスナ。
いや、そもそも友達だった覚えもないけど……
さすがに言い返す気力もなかった。
「違う。違うから。まず話を聞け。俺はそんな趣味ない」
必死に説明した。
森で出会った経緯や、彼女が傷だらけだったこと。
言葉も通じない、助けが必要な状態だったこと。
彼女たちはめちゃくちゃ疑っていたが、
なんとか……なんとか納得してくれた。
少女は俺の服をずっと掴んだままだった。
まるで、離したらどこかへ連れていかれるとでも思っているかのように。
エリーは少女に優しく声をかけた。
「こんにちは、私はエリー。こっちはアスナ。お名前、教えてくれるかな?」
少女は返事をしなかった。
俺の服を掴んだまま、じっと様子をうかがっている。
「やっぱり、言葉が通じないみたいね……」
エリーはそう呟くと、微笑みながら少女の頭に手を添えた。
「大丈夫、私たちはあなたの味方よ」
優しく頭を撫でると、回復魔法をかけてやった。
「お風呂借りるね。アスナ、この子の服と食材お願い」
アスナは無言で頷き、すぐに買い出しへ向かった。
──
アスナが戻ってくると、袋いっぱいに服と食材が詰まっていた。
「好みがわからなかったから、たくさん買ってきた」
「さすがアスナ、かわいいお洋服がいっぱいね♪」
しばらくして、少女が湯上がりの姿で現れた。
淡いブルーのワンピース。
汚れが落ちた金髪が、さらりと揺れる。
俺の隣にちょこんと座り、不器用な笑顔を向けてくる。
……やめろ。俺を見るな。
夕食は、エリーとアスナがキッチンで手際よく作った。
「ナズナは、ちゃんとこの子を見ててね」
俺は黙って少女と座っていた。
エリーの料理は家庭的で香りがよく、食欲をそそった。
「さぁ、できたわ。一緒に食べましょう」
エリーが運んできた。
少女に食べさせようとすると、彼女はスプーンを拒んでコップを指差した。
まるで「水だけでいい」と言うように。
一瞬、食卓に静寂が走る。
「大丈夫。食べてもいいのよ。お腹空いたでしょ? ほら、美味しいよ」
エリーが優しく口元にスプーンを運ぶ。
少女は涙を浮かべながら、静かに食べ始めた。
アスナが黙って取り分け、俺の皿にも置く。
……案外、美味かった。
少女は食べ終えると、安心したようにすぐに眠ってしまった。
──
アスナが少女を空き部屋のベッドに運ぶと、エリーがそっと頭を撫でて「おやすみ」と囁く。
「体の見えない場所に痣があった。……あんな小さな子に暴力なんて」
エリーの目に涙がにじむ。
「隣国にはまだ奴隷制度がある。森で他国の人間を見たって話も聞く。逃げてきた可能性もある」
アスナの言葉に、エリーはうなずく。
「とにかく、明日役場で迷子届けが出てないか確認しましょう」
二人はそのまま少女の隣で寝ることにした。
「……泊まっていくのか」と俺は心の中で呟いた。
──
翌朝、悲鳴で目覚める。
「いない!どこにもいない!!」
ベッドの中で起き上がると、俺の隣にいた。
少女が、ぐっすりと寝息を立てていた。
エリーとアスナがドアを蹴破るように入ってきて、
俺の顔を見ると蔑んだ目で言った。
「本当に最低……」
「地に落ちたな」
「エリーさん、アスナさん。ボソボソ言ってるけど、聞こえてますよ」
──
朝食はシンプルだったが、昨日食べすぎた俺にはちょうどよかった。
少女は相変わらず感情をあまり表に出さないが、よく観察していれば、なんとなく気持ちは読み取れる。
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