転生したら妹溺愛(シスコン)になりました。

なぎ

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第4章:モンブラン

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朝食後、俺たちは役場へ向かうことになった。
もちろん、俺は行きたくなかったが、エリーに「当然でしょ?」と一蹴されて渋々同行することに。

役場までの道中、少女は目を丸くしてあたりを見回していた。
人の多さに驚いているようだった。

それも無理はない。
この国には、ヒトだけではなく、獣人、ドワーフ、エルフなど、様々な種族が共に暮らしている。
通りにはしっぽを揺らす子ども、耳の長いエルフの老婦人、金属の腕を持つドワーフの職人たち――多様な存在が入り混じって生活しているのだ。

初代国王の方針だと聞いたことがある。
戦争を終わらせ、多種族を迎え入れ、奴隷制度を撤廃した――英雄と呼ばれる人物。
人種・出自にかかわらず共に暮らせる国をつくるため、あえて“辺境”から始めたのだと、歴史書に記されていた。

この国の自由と平和な日々が、その人の理想から始まったのだと思うと、少しだけ胸が熱くなる。

今、俺たちがこうして歩けているのも、その人のおかげなのだろう。
俺は心の中で、初代国王に礼を述べた。

──

役場に着き、事情を説明する。
やはり、少女の迷子届けは出ていなかった。

係員が申し訳なさそうな表情で言った。

「最近、隣国の動きが活発になっていましてね……。実は、あの森で“他国の者”を見たという報告が入っているんです。どうか、お気をつけて」

不安が胸に広がる。
この子は――やはりこの国の出身ではない。

それどころか、もしかすると運ばれていた“途中”だったのかもしれない。

どこから? 誰の手によって?
謎は深まるばかりだった。

帰りに立ち寄ったカフェで、エリーが突然提案した。

「この子に、名前をつけましょう!」

「……は?」

「そのままだと呼びにくいし、何より“存在”として認識してあげたいの。名前って、そういうものだと思うのよ!」

なんか立派なこと言ってるが、目がキラキラしてる。
……絶対、楽しんでるだけだろ。

「かわいい名前がいいよね? えーっと……モンブラン!」

「……今エリーが食べたいものじゃないか?」

「ふふん、バレたか。じゃあ、アスナが考えてよ」

「そうだな……“リン”とか、どうだ?」

「リン? それって、アスナのお気に入りの人形の――」

「注文しようか。ナズナ、何飲む?」

アスナが食い気味に被せてきた。声も妙に大きい。
何かを隠そうとしたのが、あからさまに分かる。

俺は反射的に返す。

「……え? あ、ああ、水でいいよ……?」

急に話を振られて戸惑ったが、やり取りの内容は聞こえてなかった。
ただ、アスナが焦ってるのだけは伝わってきた。

少女――まだ名前のないその子は、
俺のことをじっと見ていた。不器用な笑顔を浮かべながら。

……やめろ。俺を見るな。

「この子に選ばせましょう。どの名前が好きか、反応を見ればいいのよ」
「いいわね、勝負よ。ナズナ、あなたにも一つだけ考える許可をあげるわ」

なぜか俺にも参加権が与えられた。
断ろうとしたが、自然と口が動いていた。

「……ミヤ」

その瞬間、少女が俺の服をぎゅっと掴んだ。

まるで、最初からその名前が自分のものだったかのように、
小さく、けれど確かに、微笑んだ。

「……俺の勝ちだな」

「むぅ……悔しい……」

「ミヤちゃん。あなたを名前で呼べて、すっごく嬉しいわ」
エリーが優しく頭を撫でる。

「ミヤ、モンブラン食べるか?」
アスナが笑って声をかける。

「モンブランは私が食べます!」

すかさずエリーがツッコミを入れ、2人が笑い合う。

そのやり取りに、ミヤも――ほんの少しだけ、肩を揺らして笑ったように見えた。

……不思議と、静かなあたたかさに包まれていた。

目の前にある、ささやかだけど賑やかな光景。
誰かが料理して、誰かが笑って、誰かがすねて、誰かがそれをフォローする。

――子どもの頃の記憶がふとよみがえる。

朝の食卓。
笑い声。
気の抜けた会話。
両親がいて、俺がいて――なんでもない、けれど確かな幸せ。

ああ、似てる。
今、この瞬間が。
あのころの“家族”に。

俺は黙って、目の前の光景を見つめていた。
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