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第30話
(12)
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低い声で鷹津に問われ、和彦は恨みがましく睨みつける。
「当たり前だ……」
「そうか。俺もきつい。お前の尻が、俺のものを食い千切りそうなほど、締め付けてくる。どいつもこいつもお前を甘やかしているんだろうが、この痛みが、繋がる醍醐味だ。俺は、お前を犯している」
物騒なことを言いながらも、唇に触れる鷹津の息遣いは、羽根でくすぐってくるかのように優しい。和彦は息を喘がせると、鷹津の頬に片手を押し当てる。和彦の求めがわかったように、鷹津が唇を触れ合わせてきた。
濃厚に舌を絡めながら、互いの唾液を啜り、貪り合う。その間も鷹津の侵入は深くなり、和彦は内奥を深々と貫かれていた。痛みに怯えていた肉がざわつき、うねるように鷹津の欲望を締め付ける。官能の高まりを知らせるように、内奥の襞と粘膜が、擦られることによって次第に快感めいたものを発し始める。
「あっ、あっ、あっ……ん、んんっ、あんっ」
緩やかに内奥深くを突かれ、口づけを解かれた和彦は悦びの声を上げる。鷹津の唇の端に笑みが刻まれた。
「もう感じ始めたのか。いやらしいオンナだ」
そう言う鷹津も、ひどく興奮していた。その証拠に、内奥で息づく欲望は力強く脈打ち、これ以上ないほど大きく膨らんでいる。鷹津のほうにこそ、余裕がないのだ。
和彦が物言いたげな視線を向けると、鷹津は傲然と言い放った。
「中に出してやるから、しっかり受け止めろ」
鷹津を押し退けようと、肩に手をかけた和彦だが、結局、必死にシャツを握り締めてすがりついていた。
温めの湯に胸元まで浸かりながら、ほっと息を吐き出した和彦はわずかに身じろぐ。背に感じるのはバスタブの感触ではなく、ごつごつとした男の筋肉の感触だった。ぴったりと重なっている感覚が心地いいと感じるのは、湯のせいかもしれない。
標準より大きめのバスタブだが、成人した男二人が入ると、さすがにゆったりというわけにはいかない。和彦は両足を思いきり伸ばせないため、少し膝を曲げた姿勢で湯に浸かっている。そんな和彦を背後から抱えるようにして座っている鷹津も、窮屈そうだ。だが、だからこそ、互いに体を密着させることになる。
思い出したように鷹津の唇がうなじに押し当てられ、和彦は声にならない声を上げる。ベッドで性急に繋がったあと、湯を溜めたバスタブに連れ込まれたのだが、体の熱は冷めるどころか、官能が高ぶったまま燻ぶり続けている。それは、鷹津も同じようだ。腰の辺りで感じる欲望は、いつの間にか雄々しく育っていた。
どういう意図でこうして一緒に湯に浸かっているのか、和彦にはわからない。鷹津は何も言わないまま、さきほどまでの乱暴な行為とは対照的に、和彦を丁寧に扱っていた。
最初は戸惑っていた和彦も、湯の温かさと鷹津の抱擁に、完全に身を任せきっていた。それを待っていたように、鷹津の手が動く。
胸元に手が這わされ、くすぐるように胸の突起を弄られる。もう片方の手は、両足の間に入り込み、和彦の欲望を握り締めて緩く扱き始めたのだ。
「うっ……」
微かに声を洩らした和彦が身じろいだ拍子に、小さく水音が立つ。振り返ると、じっとこちらを見つめている鷹津と目が合った。何も言われなかったが、和彦から顔を寄せ、そっと唇を重ねる。唇と舌を吸い合いながら、鷹津の愛撫を体に受ける。
片足を持ち上げられて腰を浮かされると、支えがほしくて上体を捩り、鷹津の肩にすがりついた。
一度、欲望に奥までこじ開けられ、精を注ぎ込まれた内奥は、突き込まれた鷹津の指を嬉々として締め付ける。指が蠢かされ、湯が内奥に入り込むが、その感触にすら和彦は感じてしまう。
「痛くないか?」
真剣な声で鷹津に問われ、和彦は頷く。
「なら、まだまだ楽しめるな」
「な、に、言って――」
「さっき言っただろ。あとで嫌というほどよがらせてやると。お前も知ってるだろ。俺はけっこう、律儀なんだ」
ヌケヌケとそう言った鷹津が、内奥から指を引き抜く。そして、こう命令された。
「体の正面をこっちに向けて、俺の腰に跨れ」
素直に従えるはずもなく、鷹津を睨みつけた和彦は立ち上がろうとしたが、腰に腕が絡みつき、そのうえ尻の肉を乱暴に鷲掴まれる。噛み付くように唇を吸われ、湯に浸かったまま軽い攻防を繰り広げたあと、和彦は体の向きを変え、鷹津の腰の上に座った。
向き合った鷹津と見つめ合うことに、苦痛に近い羞恥を覚える。和彦は顔を背けようとしたが、追いすがってきた鷹津に唇を求められ、応じる。
高ぶった二人の欲望がもどかしく擦れ合い、無意識のうちに和彦は腰を揺らす。鷹津の指が思わせぶりに、内奥の入り口をまさぐってきた。
「俺が欲しいか?」
「当たり前だ……」
「そうか。俺もきつい。お前の尻が、俺のものを食い千切りそうなほど、締め付けてくる。どいつもこいつもお前を甘やかしているんだろうが、この痛みが、繋がる醍醐味だ。俺は、お前を犯している」
物騒なことを言いながらも、唇に触れる鷹津の息遣いは、羽根でくすぐってくるかのように優しい。和彦は息を喘がせると、鷹津の頬に片手を押し当てる。和彦の求めがわかったように、鷹津が唇を触れ合わせてきた。
濃厚に舌を絡めながら、互いの唾液を啜り、貪り合う。その間も鷹津の侵入は深くなり、和彦は内奥を深々と貫かれていた。痛みに怯えていた肉がざわつき、うねるように鷹津の欲望を締め付ける。官能の高まりを知らせるように、内奥の襞と粘膜が、擦られることによって次第に快感めいたものを発し始める。
「あっ、あっ、あっ……ん、んんっ、あんっ」
緩やかに内奥深くを突かれ、口づけを解かれた和彦は悦びの声を上げる。鷹津の唇の端に笑みが刻まれた。
「もう感じ始めたのか。いやらしいオンナだ」
そう言う鷹津も、ひどく興奮していた。その証拠に、内奥で息づく欲望は力強く脈打ち、これ以上ないほど大きく膨らんでいる。鷹津のほうにこそ、余裕がないのだ。
和彦が物言いたげな視線を向けると、鷹津は傲然と言い放った。
「中に出してやるから、しっかり受け止めろ」
鷹津を押し退けようと、肩に手をかけた和彦だが、結局、必死にシャツを握り締めてすがりついていた。
温めの湯に胸元まで浸かりながら、ほっと息を吐き出した和彦はわずかに身じろぐ。背に感じるのはバスタブの感触ではなく、ごつごつとした男の筋肉の感触だった。ぴったりと重なっている感覚が心地いいと感じるのは、湯のせいかもしれない。
標準より大きめのバスタブだが、成人した男二人が入ると、さすがにゆったりというわけにはいかない。和彦は両足を思いきり伸ばせないため、少し膝を曲げた姿勢で湯に浸かっている。そんな和彦を背後から抱えるようにして座っている鷹津も、窮屈そうだ。だが、だからこそ、互いに体を密着させることになる。
思い出したように鷹津の唇がうなじに押し当てられ、和彦は声にならない声を上げる。ベッドで性急に繋がったあと、湯を溜めたバスタブに連れ込まれたのだが、体の熱は冷めるどころか、官能が高ぶったまま燻ぶり続けている。それは、鷹津も同じようだ。腰の辺りで感じる欲望は、いつの間にか雄々しく育っていた。
どういう意図でこうして一緒に湯に浸かっているのか、和彦にはわからない。鷹津は何も言わないまま、さきほどまでの乱暴な行為とは対照的に、和彦を丁寧に扱っていた。
最初は戸惑っていた和彦も、湯の温かさと鷹津の抱擁に、完全に身を任せきっていた。それを待っていたように、鷹津の手が動く。
胸元に手が這わされ、くすぐるように胸の突起を弄られる。もう片方の手は、両足の間に入り込み、和彦の欲望を握り締めて緩く扱き始めたのだ。
「うっ……」
微かに声を洩らした和彦が身じろいだ拍子に、小さく水音が立つ。振り返ると、じっとこちらを見つめている鷹津と目が合った。何も言われなかったが、和彦から顔を寄せ、そっと唇を重ねる。唇と舌を吸い合いながら、鷹津の愛撫を体に受ける。
片足を持ち上げられて腰を浮かされると、支えがほしくて上体を捩り、鷹津の肩にすがりついた。
一度、欲望に奥までこじ開けられ、精を注ぎ込まれた内奥は、突き込まれた鷹津の指を嬉々として締め付ける。指が蠢かされ、湯が内奥に入り込むが、その感触にすら和彦は感じてしまう。
「痛くないか?」
真剣な声で鷹津に問われ、和彦は頷く。
「なら、まだまだ楽しめるな」
「な、に、言って――」
「さっき言っただろ。あとで嫌というほどよがらせてやると。お前も知ってるだろ。俺はけっこう、律儀なんだ」
ヌケヌケとそう言った鷹津が、内奥から指を引き抜く。そして、こう命令された。
「体の正面をこっちに向けて、俺の腰に跨れ」
素直に従えるはずもなく、鷹津を睨みつけた和彦は立ち上がろうとしたが、腰に腕が絡みつき、そのうえ尻の肉を乱暴に鷲掴まれる。噛み付くように唇を吸われ、湯に浸かったまま軽い攻防を繰り広げたあと、和彦は体の向きを変え、鷹津の腰の上に座った。
向き合った鷹津と見つめ合うことに、苦痛に近い羞恥を覚える。和彦は顔を背けようとしたが、追いすがってきた鷹津に唇を求められ、応じる。
高ぶった二人の欲望がもどかしく擦れ合い、無意識のうちに和彦は腰を揺らす。鷹津の指が思わせぶりに、内奥の入り口をまさぐってきた。
「俺が欲しいか?」
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