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第36話
(35)
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「俺、春まで佐伯さんと会えません。いくら、目に焼き付けておいても、記憶は絶対に薄れます。だから、映像として残しておきたいんです。いつでも眺められるように」
玲は本気で言っていた。だからこそ、困るのだ。和彦はこれまでに浅ましい姿を撮られた経験はあるが、はっきり言って、トラウマになるほど嫌な記憶となっている。玲本人に悪意はなくても、それ以外の人間が悪意を持って利用する可能性はいくらでもある。
「ダメだ。……恥ずかしい、から……」
本当の理由は、玲には言えない。しかし、今すぐではなくても、玲なら察するはずだった。
「こんなに、きれいなのに――」
機嫌を損ねた様子もなく、名残惜しげにそんなことを言った玲が、覆い被さってくる。和彦は、両腕でしっかりと抱きとめた。
「……昨日から思っていたけど、君は末恐ろしいな」
和彦の言葉に、玲がちらりと笑む。
「俺、ヤクザになりそうに見えますか?」
「そういうことじゃなくて……、すごいタラシに、なりそうだ」
瞬く間に笑みを消した玲が唇を塞いできながら、もどかしげに腰を動かし、内奥の入り口に熱く硬い感触を押し当ててきた。先端を擦りつけられたかと思うと、一気に挿入された。
それでなくても敏感になっている襞と粘膜を強く擦り上げられ、電流にも似た快感が繋がった部分から這い上がっていく。和彦は玲にしがみつきながら、ビクビクと腰を震わせていた。
内奥の感触を堪能するように、玲はすぐには動かなかった。おかげで和彦も、内奥で息づく逞しい感触をじっくりと感じることができる。二人は荒い呼吸を繰り返しながら、さらに繋がりたいとばかりに、唇を吸い合い、舌先を擦りつけ合う。
「――好きです、あなたのこと」
ようやく緩やかな律動を刻み始めたところで、唐突に玲が告白してきた。畳の上ですっかり蕩けていた和彦は、汗が浮かんだ凛々しい顔を撫でる。
「ありがとう……」
「……本気にしてないですね。それとも、高校生がセックスを覚えたばかりでのぼせ上がっている、と思ってますか?」
「真剣に受け止められない程度には、ぼくは経験を積んでる。今だって、同時に何人もの男と関係を持ってる。君の好意は、ぼくにはもったいなさすぎる」
「でも、俺の好意なんだから、誰に押し付けようが、かまわないですよね」
気の迷いだとか、錯覚だとか、まさに今玲が言ったように、のぼせ上がっているだけとか、忠告の言葉はいくらでも頭に浮かぶ。だが、一心に見つめてくる玲の眼差しがあまりに心地よくて、和彦はずるい大人にならざるをえない。つまり、返事を避けたのだ。
顔を背けると、首筋に唇が這わされる。内奥深くを一度だけ突き上げられ、全身が震えた。もう一度突き上げられて、甘ったるい悦びの声を上げる。歓喜する内奥がきつく収縮し、欲望を逃すまいと締め付ける。玲が耳元で苦しげに洩らした。
「すげー、気持ち、いい……」
玲が、単調な律動によって生み出される快感に夢中になり、そんな玲に和彦も引きずられる。
「あっ、あっ、あうっ……、くっ、うぅっ」
突き上げられるたびに和彦の背が畳と擦れる。それに気づいた玲が背に両腕を回して庇ってくれる。示された気遣いに口元を緩めた和彦だが、間断なく内奥深くを攻められて、すぐにその余裕もなくなる。
室内に、二人の荒い息使いと、淫靡な湿った音が響く。まるで追い立てられるように快感を貪っていた。
玲の引き締まった下腹部に擦り上げられて、和彦の欲望が精を迸らせる。それを、内奥の反応によって知ったらしく、玲が囁いてきた。
「よかった、イッてくれたんですね」
ゾクリと甘美な震えが走り、和彦は上擦った声を洩らす。耳元で玲がため息交じりに続けた。
「……やっぱり、少しだけでも、スマホで撮っておきたかった。せめて、声だけでも」
「何、言って――」
「今の声、すごく可愛かったから……」
一方的に動揺させられるのが悔しくて、玲のうなじから髪の付け根にかけて指でまさぐる。思っていた以上に効果的だったらしく、玲が呻き声を洩らした。疾駆を続けている獣のように力を漲らせていた体が震え、一気に弛緩する。
内奥深くに精を注ぎ込まれていた。和彦は熱い体を抱き締め、満たされる感覚に恍惚とする。もしかすると、軽い絶頂に達していたかもしれない。
「――春までです。春まで、俺のことを覚えていてください」
体を繋げたままぼそぼそと玲が言う。和彦は気だるい仕草で玲の頭を撫でながら応じた。
「春からは?」
「俺が、あなたの前に現れます。そうしたら、あなたに忘れられるかもしれないと、不安になる必要もなくなります。……地元に戻ったら、受験勉強がんばらないと」
玲は本気で言っていた。だからこそ、困るのだ。和彦はこれまでに浅ましい姿を撮られた経験はあるが、はっきり言って、トラウマになるほど嫌な記憶となっている。玲本人に悪意はなくても、それ以外の人間が悪意を持って利用する可能性はいくらでもある。
「ダメだ。……恥ずかしい、から……」
本当の理由は、玲には言えない。しかし、今すぐではなくても、玲なら察するはずだった。
「こんなに、きれいなのに――」
機嫌を損ねた様子もなく、名残惜しげにそんなことを言った玲が、覆い被さってくる。和彦は、両腕でしっかりと抱きとめた。
「……昨日から思っていたけど、君は末恐ろしいな」
和彦の言葉に、玲がちらりと笑む。
「俺、ヤクザになりそうに見えますか?」
「そういうことじゃなくて……、すごいタラシに、なりそうだ」
瞬く間に笑みを消した玲が唇を塞いできながら、もどかしげに腰を動かし、内奥の入り口に熱く硬い感触を押し当ててきた。先端を擦りつけられたかと思うと、一気に挿入された。
それでなくても敏感になっている襞と粘膜を強く擦り上げられ、電流にも似た快感が繋がった部分から這い上がっていく。和彦は玲にしがみつきながら、ビクビクと腰を震わせていた。
内奥の感触を堪能するように、玲はすぐには動かなかった。おかげで和彦も、内奥で息づく逞しい感触をじっくりと感じることができる。二人は荒い呼吸を繰り返しながら、さらに繋がりたいとばかりに、唇を吸い合い、舌先を擦りつけ合う。
「――好きです、あなたのこと」
ようやく緩やかな律動を刻み始めたところで、唐突に玲が告白してきた。畳の上ですっかり蕩けていた和彦は、汗が浮かんだ凛々しい顔を撫でる。
「ありがとう……」
「……本気にしてないですね。それとも、高校生がセックスを覚えたばかりでのぼせ上がっている、と思ってますか?」
「真剣に受け止められない程度には、ぼくは経験を積んでる。今だって、同時に何人もの男と関係を持ってる。君の好意は、ぼくにはもったいなさすぎる」
「でも、俺の好意なんだから、誰に押し付けようが、かまわないですよね」
気の迷いだとか、錯覚だとか、まさに今玲が言ったように、のぼせ上がっているだけとか、忠告の言葉はいくらでも頭に浮かぶ。だが、一心に見つめてくる玲の眼差しがあまりに心地よくて、和彦はずるい大人にならざるをえない。つまり、返事を避けたのだ。
顔を背けると、首筋に唇が這わされる。内奥深くを一度だけ突き上げられ、全身が震えた。もう一度突き上げられて、甘ったるい悦びの声を上げる。歓喜する内奥がきつく収縮し、欲望を逃すまいと締め付ける。玲が耳元で苦しげに洩らした。
「すげー、気持ち、いい……」
玲が、単調な律動によって生み出される快感に夢中になり、そんな玲に和彦も引きずられる。
「あっ、あっ、あうっ……、くっ、うぅっ」
突き上げられるたびに和彦の背が畳と擦れる。それに気づいた玲が背に両腕を回して庇ってくれる。示された気遣いに口元を緩めた和彦だが、間断なく内奥深くを攻められて、すぐにその余裕もなくなる。
室内に、二人の荒い息使いと、淫靡な湿った音が響く。まるで追い立てられるように快感を貪っていた。
玲の引き締まった下腹部に擦り上げられて、和彦の欲望が精を迸らせる。それを、内奥の反応によって知ったらしく、玲が囁いてきた。
「よかった、イッてくれたんですね」
ゾクリと甘美な震えが走り、和彦は上擦った声を洩らす。耳元で玲がため息交じりに続けた。
「……やっぱり、少しだけでも、スマホで撮っておきたかった。せめて、声だけでも」
「何、言って――」
「今の声、すごく可愛かったから……」
一方的に動揺させられるのが悔しくて、玲のうなじから髪の付け根にかけて指でまさぐる。思っていた以上に効果的だったらしく、玲が呻き声を洩らした。疾駆を続けている獣のように力を漲らせていた体が震え、一気に弛緩する。
内奥深くに精を注ぎ込まれていた。和彦は熱い体を抱き締め、満たされる感覚に恍惚とする。もしかすると、軽い絶頂に達していたかもしれない。
「――春までです。春まで、俺のことを覚えていてください」
体を繋げたままぼそぼそと玲が言う。和彦は気だるい仕草で玲の頭を撫でながら応じた。
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「俺が、あなたの前に現れます。そうしたら、あなたに忘れられるかもしれないと、不安になる必要もなくなります。……地元に戻ったら、受験勉強がんばらないと」
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