血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
895 / 1,289
第37話

(7)

しおりを挟む
 痛みを感じるほど乱暴に揉みしだかれ、腰が震える。暴力的な行為に怯えながらも和彦は、促されるままに大きく足を開き、どんな愛撫でも受け入れるという姿勢を見せる。賢吾の指先は的確に弱みを探り当て、打って変った優しい手つきで刺激してきた。
 和彦は、賢吾の下で身をくねらせ、息を弾ませる。
「ここも、弄られたか?」
「そこは……、ない。怖い、から――」
「慣れた男に弄られるのが一番か?」
 涙が滲んだ目で賢吾を睨みつけると、軽く唇を吸われた。
「お前の機嫌は取らない。むしろ俺のオンナとして、しっかり仕置きをしないとな」
 囁かれた途端、どうしようもなく体が疼いた。和彦は小さく喘いで答えた。
「それでも、いい……」


 ようやく玲の愛撫の痕跡が消えた体に、賢吾は容赦なく吸いつき、歯を立てていく。到底、愛撫と呼べるものではなく、和彦はときおり痛みに声を上げ、本能的に逃れようとすらしたが、がっちりと押さえ込まれる。
「ひっ……」
〈オンナ〉には必要ないとばかりに、最初のうちに欲望をしっかりと紐で縛められていた。賢吾はときおり指の腹で先端を擦り上げると、すぐに興味を失ったように、今度は執拗に柔らかな膨らみを揉みしだき、弱みを攻める。
 和彦は甲高い悲鳴を上げ、全身を戦慄かせる。刺激の強さに惑乱し、賢吾の肩を押し上げようとしたが、それが気に食わなかったのか、いきなりうつ伏せにされて、後ろ手に浴衣の紐で手首を拘束された。
 無造作に腰を抱え上げられたところで、一旦賢吾の体が離れた。
「――お前をどうやって仕置きしてやろうかと考えて、いろいろと準備しておいた。誰も彼も甘やかして咥え込む淫奔な尻には、特に念入りに躾をしてやりたいしな」
 ピシャリと尻を叩かれたあと、冷たい潤滑剤が秘裂に垂らされる。さらに、指によって内奥にも施され、よく解されないまま、熱く硬い感触がいきなり挿入されてきた。
「ううっ、うっ、うっ、うくっ……」
 苦しさと痛さに呻き声を洩らした和彦は、必死に上体を動かして前に逃れようとしたが、腰を掴まれて引き戻される。このとき、内奥深くまで欲望をねじ込まれた。
 息をするたびに、痛みが頭の先まで響く。潤滑剤の滑りのおかげで、内奥の粘膜が切れることはないが、圧倒的な重量を持つものに強引に押し広げられているため、まるで下肢から引き裂かれているようだ。
 しかし和彦は、痛いのは嫌だと訴えられなかった。いつでも和彦を快感で追い詰めてきた男が、今は容赦なく痛みを与えてくる理由を、理解しているつもりだ。
 これは剥き出しの、賢吾の執着心と独占欲だ。和彦が体を重ねた玲に対してのものもあるだろうが、何より強いのは、さんざん和彦の気持ちを掻き乱して姿を消した鷹津に対してのものだろう。賢吾は、嫉妬に狂っているのだ。
 和彦と会わなかったおよそ一か月の間、賢吾は一人で煮え滾る感情と向き合っていたのかもしれない。
 内奥からズルリと欲望が引き抜かれ、高々と腰を突き出した姿勢を取らされる。濡れてひくつく内奥の入り口を指で擦られ、さらに潤滑剤を垂らされる。柔らかな膨らみにも垂れ落ちていき、そこを指で揉み込まれて、上擦った声を上げて腰を揺らす。
「んうっ」
 再び背後から挑まれ、内奥を犯される。乱暴に腰を突き上げられるたびに、賢吾の引き締まった下腹部と尻がぶつかって派手な音を立てる。そこに、粘膜同士が強く擦れ合う卑猥な音も加わる。
 和彦の快感を一切考慮しない一方的な行為は、さほど長くは続かなかった。一際大きく腰を突き上げられた次の瞬間、賢吾が尻の肉を鷲掴む。内奥深くに熱い精を注ぎ込まれていた。
 ゆっくりと繋がりが解かれてから、和彦は詰めていた息を吐き出す。
「――久しぶりだからこそ実感するな。お前の尻の具合のよさを。こんなものを高校生に味わわせたんだから、それは、酷ってもんだぜ」
 賢吾の皮肉交じりの言葉に、上気した頬がさらに熱くなる。
 内奥に指を挿入され、乱雑に掻き回される。指が引き抜かれると同時に、注ぎ込まれたばかりの精と潤滑剤がドロリと溢れ出してきて、その感触に和彦は腰を震わせる。
「尻をしっかり締めてろ。これから、いいものを食わせてやる」
 背後からかけられた言葉に、なぜか寒気を感じた。今度こそ容赦なく痛めつけられるのではないかと思ったのだ。覚悟はしてはいるものの、だからといって怖くないわけではない。
 両手を後ろで縛められ、肩を布団に押し付けた不自由な姿勢で、なんとか賢吾の様子を探ろうと身じろいだが、ここで内奥の入り口に何かが触れた。指かと思ったが、いきなり内奥に挿入され、和彦は声を上げる。
「な、に……?」

しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

帝は傾国の元帥を寵愛する

tii
BL
セレスティア帝国、帝国歴二九九年――建国三百年を翌年に控えた帝都は、祝祭と喧騒に包まれていた。 舞踏会と武道会、華やかな催しの主役として並び立つのは、冷徹なる公子ユリウスと、“傾国の美貌”と謳われる名誉元帥ヴァルター。 誰もが息を呑むその姿は、帝国の象徴そのものであった。 だが祝祭の熱狂の陰で、ユリウスには避けられぬ宿命――帝位と婚姻の話が迫っていた。 それは、五年前に己の采配で抜擢したヴァルターとの関係に、確実に影を落とすものでもある。 互いを見つめ合う二人の間には、忠誠と愛執が絡み合う。 誰よりも近く、しかし決して交わってはならぬ距離。 やがて帝国を揺るがす大きな波が訪れるとき、二人は“帝と元帥”としての立場を選ぶのか、それとも――。 華やかな祝祭に幕を下ろし、始まるのは試練の物語。 冷徹な帝と傾国の元帥、互いにすべてを欲する二人の運命は、帝国三百年の節目に大きく揺れ動いてゆく。 【第13回BL大賞にエントリー中】 投票いただけると嬉しいです((꜆꜄ ˙꒳˙)꜆꜄꜆ポチポチポチポチ

かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。 たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡ そんなお話。 【攻め】 雨宮千冬(あめみや・ちふゆ) 大学1年。法学部。 淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。 甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。 【受け】 睦月伊織(むつき・いおり) 大学2年。工学部。 黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

奇跡に祝福を

善奈美
BL
 家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。 ※不定期更新になります。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

星を戴く王と後宮の商人

ソウヤミナセ
BL
※3部をもちまして、休載にはいります※ 「この国では、星神の力を戴いた者が、唯一の王となる」 王に選ばれ、商人の青年は男妃となった。 美しくも孤独な異民族の男妃アリム。 彼を迎えた若き王ラシードは、冷徹な支配者か、それとも……。 王の寵愛を受けながらも、 その青い瞳は、周囲から「劣った血の印」とさげすまれる。 身分、出自、信仰── すべてが重くのしかかる王宮で、 ひとり誇りを失わずに立つ青年の、静かな闘いの物語。

処理中です...