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第43話
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自分の体はこんなにも見境なく多淫なのかと、また目に涙が滲む。しかし体は、快感を貪り始める。
「あぁっ、はぅっ、うっ……、んうっ」
「その調子だ、先生。――もうすぐだ」
反り返って揺れる欲望を扱かれて、性急に追い上げられる。南郷にも余裕がないのだと、息遣いから感じ取る。うかがうように見上げた先で、南郷はうっすらと笑みを浮かべていた。それは、達成感とも満足感とも言える、南郷が初めて見せた表情だった。
堪える術もなく、和彦は南郷の手に促されるまま絶頂に達する。自らの精で下腹部を濡らし、内奥を激しく収縮させる。すると南郷が唸り声を洩らし、和彦の中に精を放った。
内奥で、南郷の欲望がドクドクと脈打っている。和彦は激しい虚脱感に襲われ、両腕を投げ出したまま動けなかった。頭の中は真っ白で、何も考えることができない。いっそのことこのまま気を失ってしまえば、目を覚ましたとき、すべてなかったことになっているのではないかと、現実逃避をしかけていた。
だがまだ、これで終わりではなかった。
大きく息を吐き出した南郷が、和彦の下腹部に散った精を指で掬い取る。
「――俺はオヤジさんと、ずいぶん昔に親子盃を交わした。ドラマや映画で見たことがないか? 盃に酒を注いでもらって、飲み干すんだ。ただ、正式な世話人や立会人を立ててのものじゃない。俺は表向きは、オヤジさんとはなんの縁も持たない人間だ。長嶺組の人間じゃないし、長嶺組と結縁のある組織にいたわけでもないからな」
俺は拾われただけの野良犬だと、傲然とすらした口調で南郷は言い放つ。
「今からあんたと、特別な盃を交わす」
内奥から、まだ興奮の形を保ったままの欲望を引き抜いた南郷は、今度は和彦の精を掬った指を挿入してきた。意識しないまま内奥が蠢き、太い指を柔らかく締め付ける。
「今この瞬間、あんたの中で、オヤジさんと俺と、あんたの精が交じり合った」
「……何を、言って……」
「あんたは一度、経験があるはずだ。三世代の長嶺の男たちと、こうやって――」
あっ、と和彦は小さく声を洩らす。確かに経験はあった。今年の夏、宿泊先で、長嶺の男三人の精を受け止めた和彦に、同じように和彦自身の精を内奥に塗り込めながら、守光が言ったのだ。裏切ることを許さない、血の契約だ、と。
だがそれ以前に、南郷自身が同じような行為に及んできたことがある。賢吾の精が残る内奥に、南郷自身と和彦の精を塗り込んできた。
あのときから南郷は、今のような状況になることが、わかっていたのかもしれない。そう思った途端、和彦はゾッとした。
南郷はこれまで、主の許可が下りるのを待ちながら、ひたすら非力な獲物を嬲っていたのだ。いや、南郷だけではない。主である守光もまた、何かを目論見、ずっと準備をしていた。
「これから俺は、あんたによく尽くし、よく支え、よく愛す。これは、それを誓うための盃だ。そしてあんたは、俺の特別なオンナとなる」
情愛の感じられない、ギラギラとした欲望だけを湛えた表情で、しかし厳かな声音で南郷が言う。和彦は迫力に圧されながら、それでも拒絶する。
「無理、です……。嫌だ……」
あなたは嫌いだと絞り出すように告げたが、南郷は端から和彦の意見など求めていなかった。
「あんたがどう思おうが関係ないんだ。――長嶺守光の隠し子なんて噂される俺だが、当然、そんな大層なもんじゃない。悲しいが、俺には長嶺の血は一滴も流れてない。それが、抗いようのない事実だ。だが、長嶺の男たちに愛されているオンナを介して、繋がることはできる」
「どうして、そこまで……」
「長嶺の男たちは、俺のすべてだ。何もない俺に、生きる意味をくれた。まあ、ちょっと青臭い表現だが、ガキだった俺には、それほど強烈だったんだ。オヤジさんも、その息子である長嶺賢吾という男も。恵まれた家で生まれ育ったあんたにはわからないだろうが、俺にとってはたった一つの出会いが、地獄に垂らされた一本の蜘蛛の糸になった。その糸にすがりついて這い上がった結果、今の俺がいる」
ようやく体を離した南郷は手早く浴衣を羽織ると、ティッシュペーパーを数枚手に取り、いきなり和彦の片足を抱え上げた。反射的に起き上がろうとした和彦だが、足を掴む指に力が込められ、動けなくなる。
「じっとしてろ、先生。もう何もしない。――今夜は、な」
自分を〈汚した〉当人によって後始末をされるのは、屈辱以外の何ものでもなかった。しかし、疲れ果てた和彦には、抵抗する気力も体力も残っていない。南郷自身も、これ以上和彦の神経を逆撫でる気はないのか、淡々と手を動かしている。優しさは微塵も感じないが、少なくとも丁寧ではあった。
「あぁっ、はぅっ、うっ……、んうっ」
「その調子だ、先生。――もうすぐだ」
反り返って揺れる欲望を扱かれて、性急に追い上げられる。南郷にも余裕がないのだと、息遣いから感じ取る。うかがうように見上げた先で、南郷はうっすらと笑みを浮かべていた。それは、達成感とも満足感とも言える、南郷が初めて見せた表情だった。
堪える術もなく、和彦は南郷の手に促されるまま絶頂に達する。自らの精で下腹部を濡らし、内奥を激しく収縮させる。すると南郷が唸り声を洩らし、和彦の中に精を放った。
内奥で、南郷の欲望がドクドクと脈打っている。和彦は激しい虚脱感に襲われ、両腕を投げ出したまま動けなかった。頭の中は真っ白で、何も考えることができない。いっそのことこのまま気を失ってしまえば、目を覚ましたとき、すべてなかったことになっているのではないかと、現実逃避をしかけていた。
だがまだ、これで終わりではなかった。
大きく息を吐き出した南郷が、和彦の下腹部に散った精を指で掬い取る。
「――俺はオヤジさんと、ずいぶん昔に親子盃を交わした。ドラマや映画で見たことがないか? 盃に酒を注いでもらって、飲み干すんだ。ただ、正式な世話人や立会人を立ててのものじゃない。俺は表向きは、オヤジさんとはなんの縁も持たない人間だ。長嶺組の人間じゃないし、長嶺組と結縁のある組織にいたわけでもないからな」
俺は拾われただけの野良犬だと、傲然とすらした口調で南郷は言い放つ。
「今からあんたと、特別な盃を交わす」
内奥から、まだ興奮の形を保ったままの欲望を引き抜いた南郷は、今度は和彦の精を掬った指を挿入してきた。意識しないまま内奥が蠢き、太い指を柔らかく締め付ける。
「今この瞬間、あんたの中で、オヤジさんと俺と、あんたの精が交じり合った」
「……何を、言って……」
「あんたは一度、経験があるはずだ。三世代の長嶺の男たちと、こうやって――」
あっ、と和彦は小さく声を洩らす。確かに経験はあった。今年の夏、宿泊先で、長嶺の男三人の精を受け止めた和彦に、同じように和彦自身の精を内奥に塗り込めながら、守光が言ったのだ。裏切ることを許さない、血の契約だ、と。
だがそれ以前に、南郷自身が同じような行為に及んできたことがある。賢吾の精が残る内奥に、南郷自身と和彦の精を塗り込んできた。
あのときから南郷は、今のような状況になることが、わかっていたのかもしれない。そう思った途端、和彦はゾッとした。
南郷はこれまで、主の許可が下りるのを待ちながら、ひたすら非力な獲物を嬲っていたのだ。いや、南郷だけではない。主である守光もまた、何かを目論見、ずっと準備をしていた。
「これから俺は、あんたによく尽くし、よく支え、よく愛す。これは、それを誓うための盃だ。そしてあんたは、俺の特別なオンナとなる」
情愛の感じられない、ギラギラとした欲望だけを湛えた表情で、しかし厳かな声音で南郷が言う。和彦は迫力に圧されながら、それでも拒絶する。
「無理、です……。嫌だ……」
あなたは嫌いだと絞り出すように告げたが、南郷は端から和彦の意見など求めていなかった。
「あんたがどう思おうが関係ないんだ。――長嶺守光の隠し子なんて噂される俺だが、当然、そんな大層なもんじゃない。悲しいが、俺には長嶺の血は一滴も流れてない。それが、抗いようのない事実だ。だが、長嶺の男たちに愛されているオンナを介して、繋がることはできる」
「どうして、そこまで……」
「長嶺の男たちは、俺のすべてだ。何もない俺に、生きる意味をくれた。まあ、ちょっと青臭い表現だが、ガキだった俺には、それほど強烈だったんだ。オヤジさんも、その息子である長嶺賢吾という男も。恵まれた家で生まれ育ったあんたにはわからないだろうが、俺にとってはたった一つの出会いが、地獄に垂らされた一本の蜘蛛の糸になった。その糸にすがりついて這い上がった結果、今の俺がいる」
ようやく体を離した南郷は手早く浴衣を羽織ると、ティッシュペーパーを数枚手に取り、いきなり和彦の片足を抱え上げた。反射的に起き上がろうとした和彦だが、足を掴む指に力が込められ、動けなくなる。
「じっとしてろ、先生。もう何もしない。――今夜は、な」
自分を〈汚した〉当人によって後始末をされるのは、屈辱以外の何ものでもなかった。しかし、疲れ果てた和彦には、抵抗する気力も体力も残っていない。南郷自身も、これ以上和彦の神経を逆撫でる気はないのか、淡々と手を動かしている。優しさは微塵も感じないが、少なくとも丁寧ではあった。
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