血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
1,150 / 1,289
第44話

(10)

しおりを挟む
 自嘲気味な呟きが耳に届く。内奥の入り口を唾液と思しきもので湿らされ、指を出し入れされる。感じる異物感は、内奥の襞と粘膜を擦り上げられているうちに砂糖菓子のように溶け、もどかしい疼きだけが残る。
 唾液をさらに垂らされ、指の本数を増やされながら、和彦の内奥は綻んでいく。三本の指をしっかりと挿入され、掻き回すように蠢かされていた。
「んうっ……、は、あぁっ。んっ、んっ」
「ほら、しっかり腰を上げて、俺によく見せろ。お前のいやらしい――」
 魅力的な声が紡ぐ卑猥な言葉は、まるで愛撫そのものだ。和彦は涙ぐみながら、懸命に指示に従う。
 開いた足の間に片手が差し込まれ、反り返った欲望を掴まれる。その間も、内奥を指で押し広げられ、潤う蜜がない代わりに、たっぷりの唾液を施された。
「ひぁっ」
 欲望の先端を擦り上げられて、腰が揺れる。
「この部屋に、綿棒はあるか?」
「……な、に……」
「あとでここも、じっくり可愛がってやる。漏らすほどな」
 和彦の肌がざっと粟立つ。苦痛と紙一重の狂おしい刺激――快感を思い出したからだ。男たちによって目覚めさせられた感覚に、自分はすでに虜になりつつあるのではないかと、ふいに怖さを覚える。だが、嫌だとは言えなかった。それが賢吾の手によってもたらされるものなら、なおさらだ。
 内奥から指が引き抜かれ、背後で賢吾が身じろぐ気配がする。
 戦くほど熱いものが、喘ぐようにひくつく内奥の入り口に擦り付けられる。それだけで和彦は鼻にかかった呻き声を洩らしていた。
「――入れるぞ。和彦」
 低い囁きとともに、圧倒的な力によって内奥を押し広げられる。重苦しい痛みが下肢に広がり、和彦は慎重に息を吐き出す。すかさず、欲望の太い部分を呑み込まされていた。
「はっ……、あっ、あっ、あぅっ……」
「相変わらず、美味そうに咥えるな。そんなに、〈これ〉が好きか?」
 含まされたばかりのものがあっさりと引き抜かれ、尻の肉を割り開かれる。また検分されているのだとわかり、全身から汗が噴き出す。
 このとき賢吾は何を考えたのか、肉を掴む指に力が入った。
 そして再び侵入が始まる。
「ふっ、うっ……、んあぁっ」
 無意識に前へと逃れそうになる和彦だが、そのたびに引き戻される。まるで刺し貫くように欲望を捩じ込まれ、衝撃に息が詰まる。襞と粘膜を擦り上げられながら、まだ頑なな肉を押し広げられるのだ。姿勢のせいもあり、圧迫感と痛みをよりはっきりと味わうこととなる。
 賢吾の形を強く感じる。それに熱さと硬さも。これが、自分に向けられる執着と独占欲だと思うと、苦痛すら、不思議と愛しく思えてくるのだ。
 体の中を賢吾の肉で埋め尽くされたと感じ始めたところで、一際大きく腰を突き上げられる。これ以上なく深くしっかりと賢吾と繋がった瞬間だった。
 和彦が大きく息を喘がせていると、尻から腰にかけて撫でられる。賢吾がどんな顔をしているのか見てみたかったが、それは叶わない。
 緩やかな律動が始まり、内奥深くを丹念に突かれる。堪えきれず上げた声は愉悦を滲ませていた。蠢く逞しいものを、和彦は本能のままに締め付け、淫らな襞と粘膜をまとわりつかせる。気がついたときには、律動に合わせて腰を前後に揺らしていた。
 体の奥から狂おしい情欲が溢れ出し、もっとひどくしてほしいと願ってしまう。賢吾が与えてくれる痛みなら、いくらでも甘受できる。
「賢、吾――」
 哀願が口を突いて出ようとしたとき、前触れもなく内奥から欲望が引き抜かれる。何が起こったのか、和彦はすぐには理解できなかった。再び体をひっくり返され、力の入らない両足を大きく左右に開かれる。中から刺激によって和彦の欲望は、先端をしとどに濡らしながら、今にもはち切れんばかりの状態となっていた。
「苛めてやる前に、ここを空っぽにしておかないとな」
 和彦の欲望の形を指先でなぞってから、賢吾が両足の間に顔を埋める。熱い口腔にいきなり欲望を呑み込まれ、きつく吸引される。和彦は甘い呻き声を洩らすと、上体をのたうたせていた。
 先端を硬くした舌先で擦られ、突かれながら、括れを唇で締め付けられる。同時に、柔らかな膨らみを容赦なく揉み込まれていた。指先で弱みを弄られて、腰が跳ねる。
「暴れるな。痛い思いをするのはお前だぞ」
 そんな恫喝をしてきた賢吾が欲望にそっと歯を当ててきて、ゾッとするより、疼きを覚えた。大蛇の牙が突き立てられる様を想像したのだ。和彦の興奮が伝わったのか、賢吾が荒々しく欲望を貪ってくる。
「あうっ、うっ、賢吾……、賢吾っ……」
 根本から欲望を舐め上げられ、さらには柔らかな膨らみすらも激しい口淫を受ける。いつの間にか内奥には深々と指を含まされていた。

しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

奇跡に祝福を

善奈美
BL
 家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。 ※不定期更新になります。

かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。 たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡ そんなお話。 【攻め】 雨宮千冬(あめみや・ちふゆ) 大学1年。法学部。 淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。 甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。 【受け】 睦月伊織(むつき・いおり) 大学2年。工学部。 黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。

帝は傾国の元帥を寵愛する

tii
BL
セレスティア帝国、帝国歴二九九年――建国三百年を翌年に控えた帝都は、祝祭と喧騒に包まれていた。 舞踏会と武道会、華やかな催しの主役として並び立つのは、冷徹なる公子ユリウスと、“傾国の美貌”と謳われる名誉元帥ヴァルター。 誰もが息を呑むその姿は、帝国の象徴そのものであった。 だが祝祭の熱狂の陰で、ユリウスには避けられぬ宿命――帝位と婚姻の話が迫っていた。 それは、五年前に己の采配で抜擢したヴァルターとの関係に、確実に影を落とすものでもある。 互いを見つめ合う二人の間には、忠誠と愛執が絡み合う。 誰よりも近く、しかし決して交わってはならぬ距離。 やがて帝国を揺るがす大きな波が訪れるとき、二人は“帝と元帥”としての立場を選ぶのか、それとも――。 華やかな祝祭に幕を下ろし、始まるのは試練の物語。 冷徹な帝と傾国の元帥、互いにすべてを欲する二人の運命は、帝国三百年の節目に大きく揺れ動いてゆく。 【第13回BL大賞にエントリー中】 投票いただけると嬉しいです((꜆꜄ ˙꒳˙)꜆꜄꜆ポチポチポチポチ

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

処理中です...