空手馬鹿の俺が転生したら規格外の治癒士になっていた 〜筋力Eのひ弱少年治癒士が高みを目指す!?〜

くまみ

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前編 空手馬鹿、異世界転生!〜チート発動!?〜

第二十三話 ゴッドハンド

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 「いいかノエル……ルナ・グリズリーはな、鋭い爪を下ろして相手の頭を狙ってくる……」イカルロスがノエルの肩を抱き、静かに語った。
 
 その言葉通り、まだ若い兵士の頭部の損傷は凄まじかった。

 「あの自警団員は戦士らしいぞ……駆け出しで兜を買う金もなかったのだろう。……せめて装備さえ整っていれば」

 (戦士でもこうなるのか。俺たち三人はが生還出来たのは本当に運が良かっただけなんだな……ノエルは背筋が凍る思いだった。

 「ノエル、良く見ておけ……これがお前が目指す冒険者の世界……死と隣り合わせの現実だ!」イカルロスの眼差しは真剣そのものだった。

 (空手はルールがある競技だ。……殺し合いなんて、俺は考えたこともなかった)

 ***

 診察室の中では、息つく暇もない連携が続いていた。

 オスカーが癒合ゆごうをセリアがバイタル管理を担当する。

 二人の手のひらから放たれる黄色の光は、ノエルが転んだ時に見たオスカーのヒールとは比べ物にならないほど力強かった。

 「すげぇ!あれが、父ちゃんと母ちゃんの本当の実力……」

 「側頭骨が複雑に骨折しているわ、脳動脈からの出血が酷すぎる!これを繋ぐのはいくらあなたでも無理よ……魔力の消耗が激しくて持たないわ!」セリアの声に焦りが混じる。

 「落ち付けセリア。ただ闇雲やみくもにヒールをかけるんじゃない!、魔力を一点に絞れ!今魔力が尽きて治療が中断したらこの子は助かっても失明し脳に障害が残るぞ!」

 「駄目!出血が止まらない……この子死ぬわ!」

 「セリア!落ち着きなさい!まずは麻酔だ!次に心臓の動きを抑えて血圧を下げろ、血流を絞るんだ……その隙に俺が血管と神経を繋ぐ」

 オスカーは額に汗を滲ませながら驚くほど冷静に声を発した。

 「わ、わかったわ!」

 「セリア、バイタルサインに注意!呼吸管理も忘れるなよ。心拍は40でキープ、30は切るなよ……」

 「……よし、視神経と脳動脈を繋げたぞ!次は周囲の組織、側頭骨を癒合ゆこうする、セリア、バイタルは!?」

 「心拍は40をキープ、呼吸安定。……あなた、いけるわ!」

 「よし、頭部修復……コンプリート」

 安堵の溜息が漏れた瞬間、セリアが叫んだ。

 「あなた!!心拍数35!血圧30!さらに低下!!」

 「何っ!?セリア!アドレナリン!じゃなかった……交感神経を刺激しろ!」

 「わかったわ……だ、駄目よ!心拍数更に低下……30、25……このままじゃ心停止するわ!!」

 「……セリア!再サーチだ!どこか見落としがあるはずだ!」

 「『サーチ!』……あなた、胸部よ!折れた肋骨が大動脈を損傷!ヘモレージ(大出血)しているわ!」

 「大動脈だと!?塞がないと3分もたないぞっ!!」

 「さっきは見つけられなかった……」

 「セリアナイスサーチだ!出血で傷が広がったんだ!落ち込んでいる暇はない、大動脈を塞ぐぞ!」

 「無理よ!こんな太い血管を繋ぐなんて……出血が多すぎて、修復が追いつかない!」

 「セリア……『グラウンディング』で大地のエーテルを吸収しろ。それを血液に変換して直接輸血するんだ!」

 「な、何言ってるの!!グラウンディング?!エーテルを血液に変換する?!そんな神業かみわざ私にできるわけないじゃない!」

 「セリア!やるしかないんだ!頼む!」

 「わかったわ!グラウンディ……」**バタン!**過負荷に耐えられずセリアが膝をついた。

 「セリア!!」

 「大丈夫……もう一度やるわ……」

 「ダメだ!俺がやる!セリアは『デバイス(中継器)』になってくれ!」

 「な、何?どうしたらいいの!!」

 「『グラウンディング!』『エーテルトランスポーテーション!』オスカーが吠えるように呪文を紡ぐ。

 オスカーの体が眩いばかりの金色の光を放った。

 左手は少年兵の胸に、右手はセリアに向けて。

 それは夢でも見ているような光景だった。時がゆっくりと流れているようにも感じた。

 「『ブロッドトランスフュージョン!えっ?」セリアは知らない呪文をわからずに唱えた。

 セリア体を通して、地脈エネルギーであるエーテルが血液へと変換。その少年兵の血管に流れ込んでいく。

 「ゴッドハンド……」オスカーの左手からは霊体の手が伸び、少年兵の胸腔内へと直接入り込み、損傷した大動脈を魔法的に癒合していく。

 「……コンプリート」オスカーは小さく呟いた。

 「……あなた、バイタル復活!血圧90、心拍60!峠をこえたわ!」

 治療室を支配していた私の気配が、一瞬で霧散した。

 「うぉぉぉぉ!父ちゃんすげぇっ!」ノエルは思わずガッツポーズをして飛び跳ねた。

 「さ、さすがだオスカー!それにセリア!本当に……本当にありがとう!」イカルロスは歓喜に震える声で礼を言う。

 「イカルロス様、まだです致命傷を塞いだだけです。ここには入院設備もないですし、細かい裂傷治療と体力の回復は王立治療院へ引き継いでください」

 「さすがに俺たちは魔力切れです……」オスカーは疲労困憊様子でイカルロスに微笑んだ。

 「わかった、本当にありがとう!」イカルロスは再び深く頭を下げた。

 やがて、イカルロスが手配した専用馬車が到着し、自警団の少年兵は王立治療院へと運ばれていった。

 「ノエル……治癒士も悪くないだろう?」

 「ウッス!父ちゃん最高にかっこ良かったっす!!」ノエルは誇らしさげにオスカーに抱きついた。

 「そうかそうか、お前はいい子だ!」オスカーはノエルの頭を撫でた。

 「オスカー……ノエル……」セリアはオスカーとノエルの様子を見て安堵の笑みを浮かべる。

 「でも……ノエルのあの『っす!』っていう言葉遣い、どうにかならないのかしら……」セリアは呟いた。


<あとがき>

今回の話は、テレビドラマなどで見る手術室の風景をイメージし、手術の仕方を魔法を用いてアレンジしながら書きました。つい手に汗握り、熱く暑苦しくなってしまい、読みにくかったらすみません。

魔法の説明をさせていただきます。
・グラウンディング:魔法の源となるエーテルが地中に広がっていると物語は仮定しております。大地と繋がることでエーテルを無限に吸収できるという魔法です。
・エーテルトランスポーテーション:エーテルの輸送、すなわち魔力供給の魔法です。
・ブロッドトランスフュージョン:エーテルから血液に変換し、輸血をする魔法です。

いよいよ次の話からは、ギルドの依頼を受け、鍛錬が本格化していきます。
今後とも「空手馬鹿の俺が転生したら規格外の治癒士になっていた」をどうぞよろしくお願いします。

くまみ
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