空手馬鹿の俺が転生したら規格外の治癒士になっていた 〜筋力Eのひ弱少年治癒士が高みを目指す!?〜

くまみ

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前編 空手馬鹿、異世界転生!〜チート発動!?〜

第二十二話 戦慄の治療現場

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 ノエルは治療院の扉を押し開けて、中へと足を踏み入れた。

 その途端に、鼻を突く血の匂いと、耳を裂くような絶叫がノエルを襲う。

 「うぐぁぁぁぁっ!痛い!助けてくれぇ……」

 治療台の上でのたうち回っているのは、自警団の兵士だった。ひと目でわかる深い裂傷と、からの出血は彼の服を真っ赤に染め上げていた。

 ノエルはその悲惨な光景に思わず足がすくんでしまう。

 部屋の隅には、険しい表情で立つ武装したイカルロスの姿があった。

 「イカルロス様、これは……一体何が……」ノエルは恐る恐る状況を尋ねた。

 「おお、ノエルか。……街のすぐそばににルナ・グリズリーが現れたんだ。それで自警団に依頼し討伐に向かわせたのだが……」

 イカルロスは悔しげに拳を握りしめた。

 「私のミスだ……。自警団にルナ・グリズリーの恐ろしさを徹底させておくべきだった」

 「彼らは経験の浅いビギナーの三人で討伐に向かってしまったんだ」

 「報告を受けて私が駆けつけた時には、一人が今にも喰われそうになっていてな……」

 「幸い二人は軽傷で済んだが、今、治療台に乗っている一人は重体だ……全ては私の責任だ」イカルロスは顔を両手覆う。

 (イカルロス様のせいじゃないよな……)

 顔を両手で覆うイカルロスの姿、ノエルは彼の責任感の強さを感じずにはいられなかった。

 「イカルロス様、どうして王立治療院に運ばなかったんですか?」

 「ノエル、お前の父、オスカーは治癒士として超一流だ。この傷では王立治療院の治癒士では間に合わない……俺がそう判断した」

 「父ちゃんが……そんなに凄いのか?」

 「『ゴッドハンドのオスカー』の名を、この国で知らぬ者はいないだろう」

 「ゴッドハンドのオスカー?」初めて聞く父の二つ名に、ノエルは言葉を失った。

 ***

 「あなた、この怪我……私一人じゃ治せない!」

 「これは酷い……即死じゃないのが奇跡だ!それでセリア、診断をしろ!」

 セリアとオスカーが治療に取り掛かる。

 先ほどまでノエルやオスカーに「筋肉馬鹿」と罵っていたセリアの顔からは、一切の余裕が消えていた。

 「『サーチ』……最優先は頭部のようね。外部裂傷も酷いけど、それ以上に側頭骨が陥没かんぼつ骨折しているわ……それに伴って脳動脈と視神経が損傷している」

 「あとは……」セリアの手が、黄色い魔力波動を放ちながら患者の体をスキャンしていく。

 「あとは、肋骨が数本、左の橈骨とうこつ尺骨しゃっこつが粉砕骨折しているわ、恐らく防御したところを噛み砕かれたのね……」

 「その他は全身に無数の裂傷があるけど、それは後回しでいいわ!」

 「ナイスサーチだ、セリア、まずは頭部の治療を優先する……始めるぞ!」

 「わかったわ、あなた!」緊張に声を振るわせながらもセリアは両手を患者の上に構えた。

 目の前で繰り広げられる光景は、ノエルが想像していた、ただ手をかざすだけの「お手軽な魔法治癒」などという生易しいものではない。

 それは、生と死の狭間の命を救うために戦う治癒士の戦場、救急治療室(ER)そのものだった。
 
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