空手馬鹿の俺が転生したら規格外の治癒士になっていた 〜筋力Eのひ弱少年治癒士が高みを目指す!?〜

くまみ

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後編 ヒールが使えない治癒士〜ついに魔力覚醒!?〜

第五十二話 双魂覚醒者

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 「ライオスがノエルに命を救われたそうで、なんとお礼を言えばよいのか……」イカルロスが深々と頭を下げた。

 「いえ、いいんですよ。イカルロス様、顔を上げてください」

 オスカーは慌てて言葉を返す横で、セリアが目を丸くして驚きを露わにする。

 「でも、ノエルがヒールを使えたなんて信じられないわ。ここ最近は全く治癒士の鍛錬なんてしていないのよ!」

 「先輩、ノエル君のあれをヒールと呼ぶべきなのか......。とにかくあの治療は凄まじかった。まるで全盛期のオスカー......いや、先輩を見ているようだったわ」

 タミルが言い直すと、セリアは誇らしげに微笑んだ。

 「......いいわよ、タミル。気を遣わなくたって。私だってオスカーの実力は誰よりも知っているから」


 アドバンスドクラス(上級者)の四人がテーブルを囲み、重苦しい空気が流れる。


 「あなた、ノエルに治癒士の鍛錬ってしたことがあったの?私が知っているのは、筋トレばかりだったけど」

 「……まぁ、少しだけ……本当に少しだけ……汗」

 三人の視線がオスカーに突き刺さり、オスカーは額から汗が流れる。

 「先輩。私は、ノエル君は『双魂覚醒者そうこんかくせいしゃ』じゃないかって思うの......」

 「双魂覚醒者!?まさか......」

 タミルが静かに告げた言葉に、セリアは何かに弾かれたように椅子から飛び上がった。

 「実はライオスからも話を聞いた。ノエルが緑色に光り、凄まじい威力の攻撃を繰り出したとな。タミルの見立てと合わせれば、私も同じ結論に至る」イカルロスは冷静な分析を続ける。

 「以前の、ルナ・グリズリーとの戦いや、我が息子ライオスを負かした時の身のこなし。あれが資質や才能で片付くものか。......そう考えれば全て納得がいく」

 「そうよ!ねぇ、あなた!この前ノエルは魔力暴走を起こしたじゃない!あれだって不自然よ!」

 「あぁ……まぁ、そうだね……でもまだ決まった訳じゃない......」オスカーは努めて冷静を装うが、その手は微かに震えていた。

 「ノエルに直接聞いてみるわ!」二階へ駆け上がろうとするセリアを、オスカーは鋭い声で制した。

 「待ちなさい!まだノエルは疲れている。あれだけの激戦の後だ。心が傷ついていないか心配だし、こういう話はもっと落ちついてからするべきだ」

 「だってあなた!これはまさに『規格外』よ!なんて名誉なことなの!落ち着いてなんていられないわ!」
 
 「......先輩。オスカーの言う通りよ。ノエル君が落ち着いてからにしましょう......」

 歓喜に包まれるセリアに対し、タミルがそっと寄り添い、その場を取り繕った。


 「......そうだな。もし、双魂覚醒者だったら騎士団で保護を……。いや、今日のところは失礼するとしよう……オスカー、すまないな。『精霊除染』など面倒な頼み事をして。

 「いえ、構いません。......俺に出来るのかどうかはわかりませんが」オスカーは深々と頭を下げ、真剣な眼差しで付け加えた。

 「イカルロス様、どうかこの事は事実か否かハッキリするまではご内密にお願いします」

 「あぁもちろんだ......それではまた近いうちに......」


 ***

 「あんな必死なイカルロス様、初めて見たわ。一体どうしたのかしら……」

 客人を送り出し、セリアが不思議そうな顔で呟いた。

 「……」

 「ねぇ!あなた!聞いているの?」

 「あ、あぁ、聞いているよ……。ちょっと出てくる」

 「えっ?どこに行くのよ」

 「散歩だ。直ぐ戻る」

 *** 

 夕暮れの心地よい風が吹く通りを、オスカーは独り、ぶつぶつと呟きながら歩く。


 「ノエルが『双魂覚醒者』だと?まさか。......いや、確かに思い当たる節がありすぎる」

 オスカーの脳裏に浮かぶのは、時折息子が見せる、子どもらしからぬ鋭い眼光。


 「イカルロス様は、もしノエルが双魂覚醒者なら、間違いなく国の戦力として囲い込もうとするだろう。それはおそらく騎士団ではない『影の組織』だ......」オスカーは苦虫を嚙み潰したような顔で空を見上げた。

 「そうなれば他国だって黙っちゃいない。様々な刺客がノエルの命を狙うかもしれない……」

 オスカーは拳を強く握りしめた。

 「せめて、ノエルがもう少し力をつけ、自分の身が自分で守れるようになるまでは......。この事実は何としても隠さなければならない」

 黄昏の闇が迫る街角で、父オスカーは静かなる決意を固めるのだった。
 
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