空手馬鹿の俺が転生したら規格外の治癒士になっていた 〜筋力Eのひ弱少年治癒士が高みを目指す!?〜

くまみ

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後編 ヒールが使えない治癒士〜ついに魔力覚醒!?〜

第五十三話 おとぎ話

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 「ノエル、朝だぞ!ランニングに行くぞ!」

 「ムニャムニャ……父ちゃん、俺、体中が痛いし重いし、今日は休む……」

 「若者が何を言ってる!そんなのは動けば治る。いいから起きろ!」

 (なんだよ……今日の父ちゃん厳しいな……タミルさんみたいだ......)「今起きるっす!」ノエルは眠い目をこすり、不貞腐れた様子でベッドを這い出した。

 ***

 爽やかな朝の光が二人を照らし、心地よい風が吹き抜ける街路を、二人は軽いランニングで抜けていく。

 「あれ?父ちゃんどこに行くの?」

 「どこって......たまには朝から行くのもいいもんだぞ」

 (って…ここ、朝からやってたんだな……マジ銭湯みたいだ)

 到着したのは、湯気立ち込める湯屋だった。


 **ザブーン!** ノエルとオスカーが肩まで浸かると、湯船から大量に湯があふれ出した。

 「ふぅぅ......気持ちいい!」

 ノエルがホット息をついたところで、オスカーが不自然に声を低くした。


 「なぁノエル......。ライオス君を治療したときのことを、覚えているか?」

 「ギクッ!......お、俺......覚えていないっす......」(やっぱりそう来たか......。これはきっとバレない方が良さそうだ。さてどうやって誤魔化そうか......)ノエルは咄嗟に否定した。

 「そうか......ならいい......」(こいつは意外に鋭いな。ノエルが知らぬ存ぜぬを決め込んでくれるのなら、それが一番安全だ......)オスカーもまた、内心で安堵の溜息を漏らした。

 「ノエル、これから話すことはあくまで『おとぎ話』だ。ただし他言無用だぞ!」

 (おとぎ話で他言無用って......かなり無理があるぞ。まあいいけど......)

 「昔々、あるところに、優秀な治癒士がいました。その国では治癒士のことを『医師』と呼び、彼は『手術』という方法で人々の病を治していました。そんなある時、彼は事故で死んでしまい......目覚めた時は、全く知らない世界の男の子になっていました。元々あったその子の魂と共存し、その医師は治癒士と名を変えて、異世界の技を用いて多くの人々を救ったのです」

 「......父ちゃんのこと?」

 「ち、違うぞ......。ユニブアート共和国の治癒士組合に伝わるおとぎ話だ。俺の師匠で治癒士組合長の『フローラ・ナイタンゲーテ様』より聞かされた話だ」

 「『ナイタンゲーテ様』??」(ナイチンゲールかよ!?......汗)

 「この話には続きがあってな。その治癒士は生涯、自分の素性を明かさなかった。......別名を『双魂覚醒者』とも言われている」

 「『双魂覚醒者』?」

 「その名の通り、一つの体に二つの魂を宿す者のことだ。お、俺も、おとぎ話でしか聞いたことがないんだけど......」

 (怪しい......。父ちゃんってわかりやすいよなぁ......。まだ何か隠している......)ノエルは目を細めてオスカーを凝視した。

 「さて、そろそろ上がらないと、今日はお前、ギルドに呼ばれているからな!......汗」オスカーは唐突に湯船から立ち上がった。

 「ノエル、と、とにかく、色々なことは黙っているのが賢明だぞ!」

 「わかったよ......父ちゃん。わかったから......子どもの顔の前でぶらぶらさせてないで、前くらい隠せよな」

 「あっ!......」オスカーの顔が、湯気のせいか羞恥のせいか、真っ赤に染まった。

 (俺がいうのもなんだけど、この父ちゃんはわかりやすすぎる......)

 (さて、本当は全部覚えているんだけどね……。父ちゃんももしかして、俺と同じ?)ノエルは心の中でそっと呟いた。

 
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