空手馬鹿の俺が転生したら規格外の治癒士になっていた 〜筋力Eのひ弱少年治癒士が高みを目指す!?〜

くまみ

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後編 ヒールが使えない治癒士〜ついに魔力覚醒!?〜

第三十九話 激しくて涼しい鍛錬

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 「ハァハァハァ……やったわ……ハァハァ……100メートルダッシュ、10本終わったわ……もう死にそう……」サリーサは荒い呼吸と共に、全身から吹き出す汗を拭った。
 
 自警団訓練所のコース。屈強の自警団員に混じり、少女一人が必死に食らいついている。

 コースの内側では、激しい剣術の鍛錬が行われていた。

 「あら?サリーサ。最後の一本は手を抜いたわね……」

 「ギクッ!……私は、一生懸命に走ったわよっ……汗」

 「あら?だ・め・よ!最後に気を抜いたわね。はい、もう一本追加ね!」タミルは人差し指を立てて左右に振る。

 「……だって……疲れちゃって……」

 「あら?サリーサ。最後の一息手を抜いて、精霊獣は待ってくれるのかしら?」

 「……。いえ……。」(もう!ぐうの音も出ないじゃないの……)

 サリーサは唇を噛み、もう一本、全力を出し切って走り抜いた。

 「ものわかりのいい子は好きよ!」タミルは満足気に微笑んだ。

 「ハァハァハァ……タ、タミルさん……走りました!」肩で息をするサリーサ。

 「良くやったわ!次は筋トレよ!」

 (えぇぇ!今走ったばかりなのに……!)サリーサは心の中で叫んだ。

 「うぉぉぉりゃぁ……!」

 その時、凄まじい気合の声がグラウンドに響き渡った。

 サリーサが目を向けると、そこには巨大な木刀を振り回し、大男たちを次々と薙ぎ払うライオスの姿があった。

 「ライオス君……凄い!」サリーサは呟いた。

 子供とは思えない恵まれた体格。しかしそれ以上に、大人を圧倒するその勇姿には、将来の英雄を予感させる迫力が満ちていた。

 「あら、サリーサ。ライオス君のことが気になるのかしら? うふ!」タミルは冗談まじりに笑う。

 「ち、違います! ただ、凄いなと思って見ていただけです!」

 「そうなのよ。ライオス君は凄いのよ。なんて言ったってあのイカルロス様の血筋なのでね!しっかりと資質も受け継がれているわ!」タミルは微笑んだ。

 (あれは親の七光りじゃないわ!本物の実力よ!でも、あんなに強い彼を、あのノエルが倒したなんて、何かの間違いじゃないの?……)

 ライオスの圧倒的な力を見せつけられ、サリーサの心に疑問が浮かぶ。

 「ただね……あの力は凄いんだけど……」タミルが何かを言いかけた。

 「タミルさん……ライオス君に何か問題でもあるの?」

 「いや……その……問題って訳じゃないんだけどね……」タミルは珍しく言葉を濁す。

 (な、何かしら!凄い気になる!……)

 「いいのよ!サリーサ……さぁ続きをやるわよ!筋トレ筋トレ!」

 「えー!こんな気持ちのままじゃ、筋トレに集中出来ないわ!」

 「仕方ないわね……。集中力が落ちているのなら、お手本を見せてあげるわ。フンッ!」

 次の瞬間、サリーサは目を疑った。

 「えっ?タ、タミルさん!? す、凄すぎ! どこにそんな筋肉があるの!?」

 タミルは超絶的な速度で、腹筋、背筋、腕立て伏せ各100回を、涼しい顔でこなしてしまったのだ。

 「ざっとこんなもんよ」

 「凄いです、タミルさん……!」

 「ありがとう。……じゃあ、あなたの番ね!」

 タミルは再び、涼やかな、そして逃げ場のない微笑みを浮かべた。

 (ガーン!やっぱり私もやるのね。そんな「涼しい顔」してやることは鬼だわ……)

 こうして、タミルがサリーサへ果たす、「地獄の鍛錬」は続いていくのだった。

 ***

 (まさか言えないわよね……イカルロス様のご子息に向かって「ちょっとお馬鹿なの」なんて……)

 タミルは、巨大な木刀を振り回して猪突猛進するライオスを見つめ、心の中でそっと呟いた。



 


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