【さっくり読める】幸福の黒い鳥【本編二話完結】

日野リア

文字の大きさ
5 / 5
番外

もしもただの父だったなら

しおりを挟む
 わしは国王だ。
 その代を受け継いで三十二年、妻とは愛のある結婚ではなかったが、それなりにうまくやってきたと思っているし、二人の王子にも恵まれた。
 ――――――幸せだったのだろう。

 妻と息子が死んだ。
 下の王子と視察に行き、帰る途中で事故があり、馬車ごと崖下に落ちたのだという。即死だった。遺体は潰れて、もはや誰なのかすらわからぬほど。かろうじて着ていた服や背格好で見分けが付いた。
 わかっている。
 これは、事故などではなかった。



「兄上、お元気そうでなりより。ああ、そうだ。王太子殿下は最近はどうです?」

「貴様!!」

 ――――――こいつがやったのだ。
 血をわけた弟のこいつが。

「あれは医者に診せても何もわからぬ。何をしたのだっ!!」

「おお、兄上少し落ち着いてください。私が何をしたのです?」

 日に日に顔色が悪くなっていく息子は、最早寝台から起き上がることすらできない。どんな医者に診せても首を振るばかりで、薬師にも診せたが何もわからなかった。
 わしは国王だが、父としてたった一人残った息子すら守れない。

「ぐっ………がはっ。」

 己の口から血を吐いた時、あの弟は兄のわしすら殺そうとしているのだと悟った。そして、もう長くないことも。だが、もうしばらく生きねばならない。なんとしても息子を救い、死なせてしまった妻と息子の仇を討たねば。
 そのために、力ある四大侯爵の一つ、青き鳥の一族に力を貸してもらわねばならない。アーバン侯爵が代々受け継ぐあの力ならば、この身を蝕む呪いを解くこともできるだろう。

 ――――――頼む。
 どうか、力を貸して欲しい。

「陛下、申し訳ありません…。妻は臨月でして、力を使うことは………。なにより、少し前に継承の儀をしたばかりなのです。」

 ――――――なぜだ。
 なぜ、わしの言うことが聞けぬ!!!
 頭ではわかっていた。継承の儀は受け継がれてきた力を子へ渡すもの。それを行ったばかりならば、その子はまだ力をうまく使うことはできないだろう。仕方がないことだった。
 ――――――だが!

 ほどなくして、侯爵家に子が産まれたという一報が入った。

「アーバン侯爵家に男児が産まれたか。ならば、その男児と継承の証を奪ってくるのだ。他は殺してかまわぬ!」

 間に合わぬというならば、血肉を喰らってでもわしは生きねばならぬ。力を受け継いだ母親とその娘を喰らえば、少々命を引き延ばせる筈だ。そう、これはこの国のためだ。そうだろう、ああ――――――目を開けておくれ。頼む………頼む頼む頼む――――――。お願いだから。
 なぜ、わしは国王なのだ――――――。


しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

“いつまでも一緒”の鎖、貴方にお返しいたします

ファンタジー
男爵令嬢エリナ・ブランシュは、幼馴染であるマルグリット・シャンテリィの引き立て役だった。 マルグリットに婚約が決まり開放されると思ったのも束の間、彼女は婚約者であるティオ・ソルベに、家へ迎え入れてくれないかというお願いをする。 それをティオに承諾されたエリナは、冷酷な手段をとることを決意し……。 ※複数のサイトに投稿しております。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

どうぞ添い遂げてください

あんど もあ
ファンタジー
スカーレット・クリムゾン侯爵令嬢は、王立学園の卒業パーティーで婚約もしていない王子から婚約破棄を宣言される。さらには、火山の噴火の生贄になるように命じられ……。 ちょっと残酷な要素があるのでR 15です。

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

処理中です...