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番外
もしもただの父だったなら
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わしは国王だ。
その代を受け継いで三十二年、妻とは愛のある結婚ではなかったが、それなりにうまくやってきたと思っているし、二人の王子にも恵まれた。
――――――幸せだったのだろう。
妻と息子が死んだ。
下の王子と視察に行き、帰る途中で事故があり、馬車ごと崖下に落ちたのだという。即死だった。遺体は潰れて、もはや誰なのかすらわからぬほど。かろうじて着ていた服や背格好で見分けが付いた。
わかっている。
これは、事故などではなかった。
「兄上、お元気そうでなりより。ああ、そうだ。王太子殿下は最近はどうです?」
「貴様!!」
――――――こいつがやったのだ。
血をわけた弟のこいつが。
「あれは医者に診せても何もわからぬ。何をしたのだっ!!」
「おお、兄上少し落ち着いてください。私が何をしたのです?」
日に日に顔色が悪くなっていく息子は、最早寝台から起き上がることすらできない。どんな医者に診せても首を振るばかりで、薬師にも診せたが何もわからなかった。
わしは国王だが、父としてたった一人残った息子すら守れない。
「ぐっ………がはっ。」
己の口から血を吐いた時、あの弟は兄のわしすら殺そうとしているのだと悟った。そして、もう長くないことも。だが、もうしばらく生きねばならない。なんとしても息子を救い、死なせてしまった妻と息子の仇を討たねば。
そのために、力ある四大侯爵の一つ、青き鳥の一族に力を貸してもらわねばならない。アーバン侯爵が代々受け継ぐあの力ならば、この身を蝕む呪いを解くこともできるだろう。
――――――頼む。
どうか、力を貸して欲しい。
「陛下、申し訳ありません…。妻は臨月でして、力を使うことは………。なにより、少し前に継承の儀をしたばかりなのです。」
――――――なぜだ。
なぜ、わしの言うことが聞けぬ!!!
頭ではわかっていた。継承の儀は受け継がれてきた力を子へ渡すもの。それを行ったばかりならば、その子はまだ力をうまく使うことはできないだろう。仕方がないことだった。
――――――だが!
ほどなくして、侯爵家に子が産まれたという一報が入った。
「アーバン侯爵家に男児が産まれたか。ならば、その男児と継承の証を奪ってくるのだ。他は殺してかまわぬ!」
間に合わぬというならば、血肉を喰らってでもわしは生きねばならぬ。力を受け継いだ母親とその娘を喰らえば、少々命を引き延ばせる筈だ。そう、これはこの国のためだ。そうだろう、ああ――――――目を開けておくれ。頼む………頼む頼む頼む――――――。お願いだから。
なぜ、わしは国王なのだ――――――。
その代を受け継いで三十二年、妻とは愛のある結婚ではなかったが、それなりにうまくやってきたと思っているし、二人の王子にも恵まれた。
――――――幸せだったのだろう。
妻と息子が死んだ。
下の王子と視察に行き、帰る途中で事故があり、馬車ごと崖下に落ちたのだという。即死だった。遺体は潰れて、もはや誰なのかすらわからぬほど。かろうじて着ていた服や背格好で見分けが付いた。
わかっている。
これは、事故などではなかった。
「兄上、お元気そうでなりより。ああ、そうだ。王太子殿下は最近はどうです?」
「貴様!!」
――――――こいつがやったのだ。
血をわけた弟のこいつが。
「あれは医者に診せても何もわからぬ。何をしたのだっ!!」
「おお、兄上少し落ち着いてください。私が何をしたのです?」
日に日に顔色が悪くなっていく息子は、最早寝台から起き上がることすらできない。どんな医者に診せても首を振るばかりで、薬師にも診せたが何もわからなかった。
わしは国王だが、父としてたった一人残った息子すら守れない。
「ぐっ………がはっ。」
己の口から血を吐いた時、あの弟は兄のわしすら殺そうとしているのだと悟った。そして、もう長くないことも。だが、もうしばらく生きねばならない。なんとしても息子を救い、死なせてしまった妻と息子の仇を討たねば。
そのために、力ある四大侯爵の一つ、青き鳥の一族に力を貸してもらわねばならない。アーバン侯爵が代々受け継ぐあの力ならば、この身を蝕む呪いを解くこともできるだろう。
――――――頼む。
どうか、力を貸して欲しい。
「陛下、申し訳ありません…。妻は臨月でして、力を使うことは………。なにより、少し前に継承の儀をしたばかりなのです。」
――――――なぜだ。
なぜ、わしの言うことが聞けぬ!!!
頭ではわかっていた。継承の儀は受け継がれてきた力を子へ渡すもの。それを行ったばかりならば、その子はまだ力をうまく使うことはできないだろう。仕方がないことだった。
――――――だが!
ほどなくして、侯爵家に子が産まれたという一報が入った。
「アーバン侯爵家に男児が産まれたか。ならば、その男児と継承の証を奪ってくるのだ。他は殺してかまわぬ!」
間に合わぬというならば、血肉を喰らってでもわしは生きねばならぬ。力を受け継いだ母親とその娘を喰らえば、少々命を引き延ばせる筈だ。そう、これはこの国のためだ。そうだろう、ああ――――――目を開けておくれ。頼む………頼む頼む頼む――――――。お願いだから。
なぜ、わしは国王なのだ――――――。
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