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第1章 転生したら属性至上主義の異世界でした

第4話 魔力切れと専属メイド(投稿ミス)

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 俺が魔力操作を始めてはや1ヶ月が経ち、非常に嬉しいことに、深呼吸をしなくても少し意識するだけで魔力溜まりを感じることが出来るようになった。
 その御蔭なのか分からないが、この頃やっと任意にほんの少しだけ魔力を動かせるようになっていた。
 しかしここで新たな問題が浮上している。

 それは――少しでも魔力を魔力溜まりから出すと、どんどん魔力が減っていくということだ。
 まぁ前世のラノベ風に言うなら『魔力切れ』と言った物が起きるようになった。

 これは俺が魔力を無理に動かそうとするから魔力が対抗して逃げていくと、体を浸透して逃げていくんだ。
 それに気付いた俺は、『何故体を通過できるのに魔力回路がいるんだ?』と思ってしまったが、今でもよくわからない。

 ただ、ラノベの主人公は魔力切れよく起こしてたけど、あれ実際になったら地獄だからなマジで。
 常時何も食べてないのに吐き気がするし、まるで頭を鈍器で殴られたのかと錯覚してしまうほどの頭痛、起きあがろうとしても眩暈で体を上手く支えられなくなるし、身体が怠く感じ、熱は39度を超える高温になるとかで兎に角最悪だった。

 正直赤ちゃん……と言うか子供の頃からするもんじゃ絶対にない。
 なんなら大人になってからもなったら我慢出来ないくらいの辛さだった。

 この経験は、人生で初めてオタクの知識を恨んだ瞬間だったな……。
 
 もし俺の他に異世界に転生した人が居るなら、ラノベの知識を鵜呑みにして魔力量を増やすために魔力切れなるのは気をつけた方がいい。
 本当に死んじゃうから。

 まぁそんな俺も毎日魔力切れになっているんだけどな……。
 上手い具合に魔力を動かすことができない今の俺はどうしても、魔力を動かす=魔力切れ、と言う状態になってしまうのだ。
 なので毎日順調に睡眠時間が増えている気がする。
 そろそろ本気で1日中寝てしまいそうなので、対策を何か考えないといけない。

 俺はそんなことを考えながら魔力切れで気絶した。
 
 




<><><>





 俺が目を覚ますと、目の前に1人の女の子のが俺の顔を覗き込むようにして立っていた。

「――あうあっ!?」
「――キャッ!? あわわわ……ご、ごめんなさいアルト様!!」

 俺もメイド服をきた女の子も驚いて声を出してしまう。
 そんな彼女の名前はアナスタシアと言う。
 瑠璃色の髪に女神である母さんと同じ綺麗な澄んだ青い目をしており、まだ8歳と言う年齢ながら顔は大人びていて、そこらでは御目にかかれない程の美少女だ。
 そして俺の専属メイドを務めている可愛い女の子である。

 だがなんで目の前にアナスタシアの顔が?
 まぁ起きた瞬間から美少女拝めるなんて最高なんだが。

 それに見ていて心が浄化されるし、そのお陰か分からないが魔力切れによる体調不良も少し良くなった。

 と言うか赤ちゃんに謝っても意味ないだろうに……俺以外は。
 もしかしてアナスタシアは天然なのだろうか?

 なんてことを思いながら、俺はずっとアナスタシアの青い目に見惚れていた。
 するとどんどんアナスタシアの頬が赤く染まり出し、アナスタシアが恥ずかしそうに俺の顔を手で隠しながら言う。

「ずっと見られると恥ずかしいですよアルト様。それにあまりずっと女の子の顔を見つめてはいけません。……大きくなったら私が女の子との接し方を教えてあげますからね」

 確かに普通に顔をジロジロ見られるのは誰でも嫌だしな……。
 前世でも学年で1番可愛いって言われてた女子に、見惚れてたらほんの少し見てたら舌打ちされたけど……。
 ひどくね?
 ほんの2、3秒見てただけで明らかに不機嫌というか汚物を見るような顔されたんだよ?
 俺その子と面識ないはずなのにさ。

 でもイケメンにはめっちゃいい笑顔で話してた。
 この時に俺は高校で彼女が出来ないなと悟ったよ。
 ついでにこの先も。

 しかし子供に――それもまだ1歳にもなっていない赤ちゃんに女の子の接し方を言うなと思ったが、それよりもずっと気になっていることがあった。

 それは――俺の顔を隠した手と反対の手で優しく頭を撫でてくるアナスタシアのことである。
 そのせいで先程顔を赤くしていたアナスタシアに変わって、今度は俺が顔を赤く染め上げる番となってしまった。

 いやしょうがないじゃん?
 前世で友達3人だったし、その3人も全員男子で変人だったんだもん。
 こんなに優しく女の子に声もかけられたこともないんだからさ、少し多めに見て欲しい。
 こらそこ、ぼっちざまぁ言うな! 
 悲しくなるし、さっき多めに見てって言ったろうに。

「――アルト様? アルト様?」

 あっ……やばい。
 ボーッとしていた……まぁ赤ちゃんだから別にいいと思うが。
 俺がアナスタシアの顔を見ながら手を伸ばすと、アナスタシアは安心した様に笑い、

「アルト様、今日は何をしますか? 昨日と同じように絵本をお読みしましょうか?」

 と聞いてきた。

 ふむ……昨日もその前も最近ずっと絵本見てるからなぁ……。 
 まぁ今日も絵本にするか。

 こくこくっ。

 俺は頷いて応じる。
 絵本は生後1ヶ月の頃からアナスタシアに読んでもらっている。
 ほんとは自分で読みたいのだが、文字が全く読めない為、絵で解釈しないといけなくなるからな。
 効率が悪い。

 と言うことでいつも読んでもらっており、特に、魔法とこの世界の歴史に関しての絵本を読んでいる。

 絵本の癖に、結構魔法のこととかちゃんと書かれているんだよな……。
 まぁ英雄譚とかは、これはあり得んだろと思ってしまうほど奇想天外なのだが。

 前世と違ってこの世界の絵本は学園で教科書として使われるほど、詳細に書かれている。
 なので、小さい子供の魔法の勉強としては重宝するものらしい。

 今日は、魔力に関して書いてあるものを読んでもらっている。
 そのまま読み進めていくが、前世のラノベで書いてあったような魔力増強法は勿論書いていなかった。

 まぁそれはそうだろうな。
 魔力切れってめちゃくちゃ危ないし、何よりわざわざなろうとする奴なんて前世の知識があるもの以外いないだろう。
 子供なら絶対に耐えられないと思うし。
 そう言えば確かラノベでも異世界人でこの増強法知らない人多かったな。

 絵本によると、この世界では魔力量は15歳までの成長でしか上がらないと言う考えが常識であることがわかった。

 なるほど……この世界では成長と共に魔力量も伸びるんだな。
 魔力切れはそれにブーストをかける感じか?
 まぁそれはまた次の機会に試してみるとしよう。

 そう言えば魔力枯渇は、下手したら死んでしまうとまで言われている。
 これに関しては間違いなく正解だと声を大にして言える。
 と言うかこれは多分先に精神が崩壊するだろうな。
 あれほど辛いことは病気でも中々ないだろうし。

 俺は頭ではこんなにうるさいが、実際は一言も発することなく違う所を読んでもらっている。
 そして今読んでいる所は魔法属性のことである。

 この世界には、火・水・風・土・光・闇の基本属性と、雷・氷・時・空間の上位属性の他に、固有魔法とある。
 また、属性のない魔法を無属性と呼ばれており、身体強化しかできない無能属性と言われ、無属性を持っている人は【不適合者】と呼ばれて、冷遇されている。

 まぁ魔力を体に流すだけでも身体能力は強化されるからな。
 ただ無属性の身体強化の方が倍率が少し上がるくらいなのだろう。
 なるほどな……でも小説では無属性って結構強い方だと思うんだけど。
 身体強化とか極めたら結構最強だし。

 まぁこの世界は属性至上主義みたいな世界だからしょうがないと言えばしょうがないのかもしれない。
 しかし無属性で最強になってみたいよな。
 こう言った成り上がりってラノベでは王道だし。

 まぁでもどうせ魔法を使うなら雷の魔法が使えたらいいな。
 雷ってめっちゃかっこよくない?
 攻撃力も火魔法と並んで属性の中では最強らしいし。

 まぁ今いくら自分の属性を考えたところで、魔力操作しか出来ないし、それすらもまだまだ完璧ではないので魔法も使えない。
 それにそもそも自分の属性もわからないため、俺はそこで考えるのを辞める。

 ちなみにこの世界で魔法属性は、3歳のステータス検査で分かるようになるらしい。
 因みにステータスは1度教会に行かないと開けない。
 これは俺が試してみたので確実だ。

 でも転生したらならステータスくらい見せてくれてもいいよな。
 よく転生特典でステータス見れる主人公多いし。
 改めて思うけど俺の転生は援助が少ないな……。

 俺はこの世界の神はケチいなぁと思いながら、アナスタシアが読んでくれている絵本へ意識を向けた。


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 新作投稿しました。
 ぜひ読んでみてください!

『チートを貰えなかった落第勇者の帰還~俺だけ能力引き継いで現代最強~』




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