夫が宇宙人になりまして...

ハミデタニク・イトヲカシ

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「コレ何? オレ、こんな美味うまいもん初めて!」
 たかしは耳をパタパタと動かしながらみそ汁を鼻から飲んだ。
 唐揚げをまた手で取り、口に放り込んだ。

「あ~、すげっ。サイコー!!」

 箸を使わず、手で唐揚げを食べては鼻でみそ汁を飲み、興奮して楽しんでる喬。
 美貴みきは怒りがこみ上げてきた。

「喬ぃぃっ!!」
 美貴の怒鳴り声に喬は動きを止めた。
「昨日からほんっと変よ! 絶対おかしい!!」

「え?..なんか気に障った?」
「みそ汁を鼻で飲むなんて! 昨日も鼻で飲んでたでしょ! なんでそんなことするのっ! 耳をパタパタ羽みたいに動かして。口をゆすいだ水を飲んだりして。変よ! 絶対変!」
「...鼻から飲まないの?」
「飲みません!」
「..おいしいのに..」
「はぁぁ?」
 美貴は呆れた顔で喬を見た。

(ヤバい...顔の反応が変だぞ。間違えてんのか、オレ...?)
「いや..その、美貴を楽しませようとしてわざとやっただけだよ。ははは..」
「絶対ウソ! 昨日、帰り道に倒れて気を失ってからおかしくなってる!」
「い、いや、そんなことないよ」
「ううん、本当におかしいわ。明日、病院へ行くわよ!」
 美貴は喬に凄んだ。

「病院!? いや、それはちょっとマズいなぁ...」
 喬は焦り出した。
「何言ってんの! このまま本当におかしくなったらどうすんの! 結婚したばっかりなのに...」
 美貴は涙ぐんだ。
「美貴、泣かないで! 本当になんでもないから」
「自分がおかしいことに気付いてないなんて、本当におかしい証拠よ! うっ、うっ...」
 とうとう泣き始めてしまった。

「美貴..」喬は黙った。
「なんでこんなことに..ひくっ..うっ..」

 泣いてる美貴を見てしばらく沈黙した後、喬は口を開いた。
「...美貴、実はその..気を失ったとき..そのぉ..喬の体の中に..宇宙人のが入ったんだ」
「本気で心配してるのに!そんなこと言って!!」

 美貴は立ち上がり、寝室へ駆け込むと、すぐに部屋のドアをロックした。
 喬はすぐ後を追い、ドアの前で立ち止まった。
 布団に顔を埋めて泣いている美貴の声が聞こえた。

「美貴! 本当なんだ! オレは宇宙人なんだ! 昨日宇宙から来て、宇宙船を着陸させる時、君の喬の頭に当たったんだ。喬が気絶している間に喬の体に入ったんだ。そうしないと、この星のガスが合わないから、宇宙人のオレはすぐ死んでしまうんだ。だから喬の体に入った」

 美貴は泣いたままだった。

「ずっとじゃない。1ヶ月経ったら自分の星に帰るよ。喬に体を返すよ。そうすれば元通りになる!」

 美貴の泣き声が静かになった。

「本当だ!1ヶ月後には元の喬に戻る。仕事が終わればオレは帰らなゃいけないし。オレの話が本当だって証拠を見せてあげるから出てきて! 美貴! 美貴、聞いてる? 美貴ぃ~!」

 突然、ガチャッとドアが開き、喬の顔にバン!と当たった。

「証拠を見せてちょうだい」

 目を真っ赤にした美貴が出てきた。鼻を真っ赤にした喬が美貴に微笑んだ。

「何を見せようかな」

 喬はキョロキョロした。
「これにしようか」
 テーブルに戻り、さっきまで飲んでいたみそ汁のお椀を手に取った。
 美貴の前でわざとお椀を床へ落とした。床に落ちたお椀はバウンドして転がり、みそ汁が飛び散った。
 喬が手を床にかざすと、手がピンク色に光り、倒れていたお椀が勝手に起き上がり、テーブルの上に戻った。飛び散ったみそ汁の具や汁もお椀の中に入り出した。
 あっという間に元に戻った。

「どう?」
 喬はニコッとして美貴を見た。
「え...何いまの? 私、何を見た?」
 美貴は自分もおかしくなったのかと焦り出した。
 喬は再度お椀を床へ落とし、飛び散ったみそ汁を元通りにして見せた。

「..マジで?」
 美貴は驚きながらも現実に起こっているのだと自覚し始めた。
 喬はピンクに光る手を美貴の頬にそっと置いた。泣いて真っ赤になった目がスーッと引き、泣く前の目に戻った。
 美貴は感覚で自分の目の腫れが引いたのがわかった。

「魔法? 魔法使いなの?」
「いや、宇宙人だよ。これは魔法じゃないよ。元通りにするのは物質に特定の熱と電磁波を加えて化学変化させるんだ。この星の生物がこれをできるまでにはあと6000年かかるかなぁ」

 美貴は喬の顔をマジマジと見た。
「..ホントに宇宙人なの? 土星の向こう側から来たの?」
 美貴は真顔で聞いた。
「ホントだよ。土星の向こう側から来たよ。オレ、学生なんだ。夏休みの課題で星を調査してレポートを書かなゃいけないんだ。宇宙チャートでこの星を見つけたんだ」
「...レポート書いたら帰るの?」
「うん。オレはここの環境に長居はできないからね」
「喬を元の通りの喬で返してくれるの?」
「もちろんだよ。だから、オレを病院に連れていかないで。喬の体の中でオレが生存できるよう喬の体液やいくつかの器官を少し変えてるんだ。病院へ行って血液検査とかされると異常だとバレてしまう」

 美貴はうつむき、しばらく考えて黙っていたが、顔を上げて喬を見た。
「いいわ。あなたの言葉を信じるわ。でも1ヶ月経っても星へ帰らなければ病院へ連れて行くわよ」
「いいとも!」
 喬は微笑んだ。
「それともう一つ。あなたは私の喬の体に入っているからタカシと呼ぶけど、私はあなたの妻じゃないわ。一緒に住むけど馴れ馴れしくしないでちょうだい」
「わかった。オレの調査に協力してくれる貴重な地球上の生物だ。大事に扱うよ」
 タカシはやさしい目で美貴を見た。
 美貴はその目を見て安心し、だいぶ落ち着きを取り戻した。

 穏やかに微笑むタカシに、美貴も笑顔を見せた。
「じゃ、ご飯食べよう!」
「おう!」

 タカシは唐揚げを手でとった。

「ちょっと待った! それがダメなのよ。お箸使って。で、飲み物は必ず口から飲んでちょうだい。人前では絶対口からよ。さっきのピンクの魔法も人前で使っちゃダメよ! 絶対変に思われるから!」
 美貴は必死に訴えた。
(こんなのバレたら絶対テレビに出されるわ)

 タカシは、一所懸命に教えてくれる美貴にやさしく微笑んだ。
「わかった。ありがとう、美貴」

 タカシは箸で唐揚げを食べ、みそ汁は口から飲んだ。
 ぎこちないが、人間らしく食べる努力をしているタカシを見て、美貴はふふふと嬉しそうに笑った。
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