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翌朝。
喬が起きてリビングに行くと朝食の準備ができていた。
「先に食べてて」
美貴が喬を見ると、喬は美貴にチュッと投げキッスを送った。
「ふふふ、もう...」
美貴は嬉しそうに笑い、キッチンの方に振り返った。
(早く子供が欲しいな...)
結婚して1年目。美貴はそろそろと意気込んでいた。
喬はみそ汁を手にとりクンクンと匂いを嗅いだ。
美貴はバナナとヨーグルトの入った小皿を2つお盆にのせ、テーブルに持っていこうと振り返った。
ズズ..ズズズ..ズズ...
喬がみそ汁を鼻から飲んでいた。
「..な、なんで鼻から飲むの!?」
驚いてる美貴を見て喬は慌てた。
「えっ! 違ってた? あ、いや、ボーッとしてただけ。はは...」
喬は急いでスマホで検索した。
すぐに何事もなかったようにスマホを置くと、箸をとり、箸を使って食べ物を食べた。
美貴はテーブルに座ると喬をジッと見た。
「ねぇ、昨日からなんか変じゃない?」
「え? 変って?」
「洗濯機を本当に回したり、うがいした後に飲んだり」
「つ、疲れてたんだ。ゴメンよ、心配かけて」
テンパる喬を見つつ、変と思いながらも、喬が謝るので美貴はそれ以上は訊かなかった。
「会社、行ってくる」
「うん、行ってらっしゃい」
美貴の笑顔に見送られ、喬は家を出た。
「鼻から飲んだ方が絶対おいしいのに。人間はわかんねーなー」
喬は難しい顔をして駅へ向かった。
途中、川沿いの公園でシェパード犬を散歩させている年配の女に出会った。
老女が喬に「おはようございます。今日もお仕事ね。行ってらっしゃい」と笑顔で挨拶したので、喬も「おはようございます。今日もお仕事ね。行ってらっしゃい」と投げキッスした。
「へ?」老女が目を大きく開いて振り返ると、犬が「ワンワンワンワン!!」と強く吠えだした。
喬は立ち止まり犬を睨んだ。
犬が「ガルルルゥ~!」と牙を剥くと、喬は地面に手足をついて四つん這いになり、「ワンワン、ワンワン!」と犬を睨みながら大声を出した。
答えるように犬が「ワンワンワン!!」と吠えると、喬は「...ウゥ~ワン! ワンワン!」と答えた。
犬は少し沈黙した後で「ワンワン、ワンワンワン」と吠えると、喬がニヤッとして「ワッフ~ン!」と喜んだ。
犬は吠えるのを止め、喬にお尻を向けた。尻尾をパタパタと軽く横に振ると、喬は起き上がり、「ありがと! じゃ、後でな!」と言い、駅へ向かった。
老女は、去って行く喬の後ろ姿をずっと見て首をかしげた。
「...あんな変わった人だったかしら?」
喬は電車の中で周りの人がいじっているスマホを覗き込んでいた。
(これが満員電車か...覗きたい放題じゃないか。サイコー!)
周りを見ながらモタモタしている喬は、電車から降りる時、後ろから誰かに押されたり突かれたりした。
(あ、あぁ...人間の体って気持ちいい...もっと押して、もっと押して~)
うっとりした顔でホームに突き飛ばされた。
改札を出てからも、キョロキョロしながら道を歩いた。
「通勤、楽し~い!」
ようやく会社に到着した。
喬の勤務先は食品を扱う商社だった。
「っざまーす!」と声を出してオフィスに入る男を見て、喬も「っざまーす!」とマネをした。
オフィスの中にはデスクがたくさんあった。
「オレのデスクどれだ?」
喬の鼻がピンク色に光ると、鼻が2倍ほど大きくなった。
クンクン、クンクン...
匂いのする方へ行くと、キレイに整理整頓されているデスクに辿り着いた。
「さすが、オレ。キレイにしてるな。ふっふっふ」
ニヤニヤしながらデスクに座り、パソコンを開いた。
昨夜と同じように指を画面に置き、指先をピンク色に輝かせ目を閉じた。画面上でデータやメールが高速に展開した。
「おっは、喬。朝来たばっかでいきなり寝るなよ」
隣のデスクの男の社員が声をかけた。
喬は目を開け、男の顔をジーッとみた。
「君は..山下稔。29歳。彼女いない歴イコール実年齢。初めての女は隣の県のソープ嬢」
「なんでフルネーム呼び捨てで、オレのプロフィール暴露すんだよ!」
「おい、ヘチマ」
「オレの小学校の時のあだ名を会社で呼ぶんじゃねー!」
「ゴメンよ、みのっち。ところで、今日のオレってどう?」
喬は背筋を真っ直ぐ伸ばし胸を張ってカッコつけた。
稔はサムアップし、ウィンクして即答した。
「いつも通り。平均以下だぜ!」
「うふっ!」
喬は手で口を覆いながら、嬉しそうに笑った目で稔を見た。
(よし、バレてない! 見た目はバッチリだな、オレ)
二人は目を合わせながらギャハハと笑った。
ハッ!
一瞬ビクッとし、喬はキョロキョロと周りを見た。
(変だな...今、殺気を感じたんだが...)
視線の先には若くてかわいい女の社員がいた。パソコンを見ていた。
「ま、いっか」
喬は気にせず、引き続きパソコンに手を当て、仕事の内容を理解した。
何事もなく今日の仕事を終え、家に帰ると、美貴が晩ごはんの支度をしていた。
美貴に言われるがまま、すぐにお風呂に入った。
バスタブのお湯にシャンプーをドボドボ入れ、泡立てながらため息ついた。
「はぁ~、文明が低過ぎて特筆すべきことがないんだよな~...やっぱ別の星に行こっかな~...でも今から探すとなるとなぁ...」
ブクブクと泡立つ風呂に浸かりながらブツブツつぶやいていた。
風呂からあがるとテーブルに食事が並んでいた。
「今日は唐揚げよ。鶏肉が安かったの」
美貴はニコニコしてご飯とみそ汁を置いた。
唐揚げの匂いにつられ、スンスンと鼻を鳴らしながら、喬はゆっくりと唐揚げに近づいた。
無表情で唐揚げをジーッと見ている喬に、
「さ、食べましょ!」
美貴は笑顔で言った。
「先ずは野菜ね」
美貴は大きいボールに入った野菜サラダを喬の小皿によそってあげた。
喬の目は唐揚げに釘付けだった。真剣な目で唐揚げを見ながら1個とった。恐る恐る口の中へ入れた。
モグモグ、モグモグ...
「こ、これは...!?」
喬の動きが止まった。
一瞬、シーンと静かになった後、突然、喬の耳が動き始めた。
「美味い! すっごい美味い!」
喬は興奮しながら叫ぶと、まるで翼が羽ばたくように耳がパタパタ動いた。
美貴は固まった。
今までそんな耳の動きをする人を見たことがなかった。
喬が起きてリビングに行くと朝食の準備ができていた。
「先に食べてて」
美貴が喬を見ると、喬は美貴にチュッと投げキッスを送った。
「ふふふ、もう...」
美貴は嬉しそうに笑い、キッチンの方に振り返った。
(早く子供が欲しいな...)
結婚して1年目。美貴はそろそろと意気込んでいた。
喬はみそ汁を手にとりクンクンと匂いを嗅いだ。
美貴はバナナとヨーグルトの入った小皿を2つお盆にのせ、テーブルに持っていこうと振り返った。
ズズ..ズズズ..ズズ...
喬がみそ汁を鼻から飲んでいた。
「..な、なんで鼻から飲むの!?」
驚いてる美貴を見て喬は慌てた。
「えっ! 違ってた? あ、いや、ボーッとしてただけ。はは...」
喬は急いでスマホで検索した。
すぐに何事もなかったようにスマホを置くと、箸をとり、箸を使って食べ物を食べた。
美貴はテーブルに座ると喬をジッと見た。
「ねぇ、昨日からなんか変じゃない?」
「え? 変って?」
「洗濯機を本当に回したり、うがいした後に飲んだり」
「つ、疲れてたんだ。ゴメンよ、心配かけて」
テンパる喬を見つつ、変と思いながらも、喬が謝るので美貴はそれ以上は訊かなかった。
「会社、行ってくる」
「うん、行ってらっしゃい」
美貴の笑顔に見送られ、喬は家を出た。
「鼻から飲んだ方が絶対おいしいのに。人間はわかんねーなー」
喬は難しい顔をして駅へ向かった。
途中、川沿いの公園でシェパード犬を散歩させている年配の女に出会った。
老女が喬に「おはようございます。今日もお仕事ね。行ってらっしゃい」と笑顔で挨拶したので、喬も「おはようございます。今日もお仕事ね。行ってらっしゃい」と投げキッスした。
「へ?」老女が目を大きく開いて振り返ると、犬が「ワンワンワンワン!!」と強く吠えだした。
喬は立ち止まり犬を睨んだ。
犬が「ガルルルゥ~!」と牙を剥くと、喬は地面に手足をついて四つん這いになり、「ワンワン、ワンワン!」と犬を睨みながら大声を出した。
答えるように犬が「ワンワンワン!!」と吠えると、喬は「...ウゥ~ワン! ワンワン!」と答えた。
犬は少し沈黙した後で「ワンワン、ワンワンワン」と吠えると、喬がニヤッとして「ワッフ~ン!」と喜んだ。
犬は吠えるのを止め、喬にお尻を向けた。尻尾をパタパタと軽く横に振ると、喬は起き上がり、「ありがと! じゃ、後でな!」と言い、駅へ向かった。
老女は、去って行く喬の後ろ姿をずっと見て首をかしげた。
「...あんな変わった人だったかしら?」
喬は電車の中で周りの人がいじっているスマホを覗き込んでいた。
(これが満員電車か...覗きたい放題じゃないか。サイコー!)
周りを見ながらモタモタしている喬は、電車から降りる時、後ろから誰かに押されたり突かれたりした。
(あ、あぁ...人間の体って気持ちいい...もっと押して、もっと押して~)
うっとりした顔でホームに突き飛ばされた。
改札を出てからも、キョロキョロしながら道を歩いた。
「通勤、楽し~い!」
ようやく会社に到着した。
喬の勤務先は食品を扱う商社だった。
「っざまーす!」と声を出してオフィスに入る男を見て、喬も「っざまーす!」とマネをした。
オフィスの中にはデスクがたくさんあった。
「オレのデスクどれだ?」
喬の鼻がピンク色に光ると、鼻が2倍ほど大きくなった。
クンクン、クンクン...
匂いのする方へ行くと、キレイに整理整頓されているデスクに辿り着いた。
「さすが、オレ。キレイにしてるな。ふっふっふ」
ニヤニヤしながらデスクに座り、パソコンを開いた。
昨夜と同じように指を画面に置き、指先をピンク色に輝かせ目を閉じた。画面上でデータやメールが高速に展開した。
「おっは、喬。朝来たばっかでいきなり寝るなよ」
隣のデスクの男の社員が声をかけた。
喬は目を開け、男の顔をジーッとみた。
「君は..山下稔。29歳。彼女いない歴イコール実年齢。初めての女は隣の県のソープ嬢」
「なんでフルネーム呼び捨てで、オレのプロフィール暴露すんだよ!」
「おい、ヘチマ」
「オレの小学校の時のあだ名を会社で呼ぶんじゃねー!」
「ゴメンよ、みのっち。ところで、今日のオレってどう?」
喬は背筋を真っ直ぐ伸ばし胸を張ってカッコつけた。
稔はサムアップし、ウィンクして即答した。
「いつも通り。平均以下だぜ!」
「うふっ!」
喬は手で口を覆いながら、嬉しそうに笑った目で稔を見た。
(よし、バレてない! 見た目はバッチリだな、オレ)
二人は目を合わせながらギャハハと笑った。
ハッ!
一瞬ビクッとし、喬はキョロキョロと周りを見た。
(変だな...今、殺気を感じたんだが...)
視線の先には若くてかわいい女の社員がいた。パソコンを見ていた。
「ま、いっか」
喬は気にせず、引き続きパソコンに手を当て、仕事の内容を理解した。
何事もなく今日の仕事を終え、家に帰ると、美貴が晩ごはんの支度をしていた。
美貴に言われるがまま、すぐにお風呂に入った。
バスタブのお湯にシャンプーをドボドボ入れ、泡立てながらため息ついた。
「はぁ~、文明が低過ぎて特筆すべきことがないんだよな~...やっぱ別の星に行こっかな~...でも今から探すとなるとなぁ...」
ブクブクと泡立つ風呂に浸かりながらブツブツつぶやいていた。
風呂からあがるとテーブルに食事が並んでいた。
「今日は唐揚げよ。鶏肉が安かったの」
美貴はニコニコしてご飯とみそ汁を置いた。
唐揚げの匂いにつられ、スンスンと鼻を鳴らしながら、喬はゆっくりと唐揚げに近づいた。
無表情で唐揚げをジーッと見ている喬に、
「さ、食べましょ!」
美貴は笑顔で言った。
「先ずは野菜ね」
美貴は大きいボールに入った野菜サラダを喬の小皿によそってあげた。
喬の目は唐揚げに釘付けだった。真剣な目で唐揚げを見ながら1個とった。恐る恐る口の中へ入れた。
モグモグ、モグモグ...
「こ、これは...!?」
喬の動きが止まった。
一瞬、シーンと静かになった後、突然、喬の耳が動き始めた。
「美味い! すっごい美味い!」
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