13 / 24
13
しおりを挟む
土曜日の朝、美貴はさっさと家事を済ませた。
ゆうべ遅くにベロベロに酔って帰ってきたタカシは昼前にようやく起きてきた。
「ねぇタカシ、今晩、ミルさん家に何を持っていく?」
「ミルさんが手ぶらで来てねって言ってたから何も持っていかなくていいんじゃないの?」
「お呼ばれして本当に手ぶらじゃダメでしょ。何にしようかな? お孫さんってどんな感じなの?」
「高校生の男の子だよ」
「高校生か。難しいな...」
「女装の趣味があるって言ってた」
「へ? 女装?」
18時になり、タカシと美貴はミルの家を訪れた。美貴は豪華な一戸建ての家にビックリした。
「ご主人は生前、大学の教授をやってて、ミルさんはお花の先生をやってたらしい」
タカシが美貴に教えた。
ミルが玄関に迎えに来た。
「こんばんは。妻の美貴と申します。本日はご招待をありがとうございます」
美貴は礼儀正しく挨拶した。
「美貴さん、いらっしゃい。来てくださって嬉しいわ。タカシさんもいらっしゃい。どうぞ中に入って」
ミルは思った通りの感じの良い美貴に微笑んだ。
玄関をはじめ、至るところにきれいにお花が生けてあった。
「すごいわ。これ絶対プロの腕前だわ...」
美貴は驚きながら生け花を見ていた。
ミルがリビングのソファに座っている男の子を紹介した。
「孫の真佐希です」
「こ、こんにちは」
真佐希は小さな声で挨拶した。色白の美少年だった。
「こんにちは、真佐希君。お誕生日おめでとう」
美貴は笑顔で言った。真佐希は何も言わず頭を下げた。
「そして、こっちは甥っ子夫婦です」
50代の男女二人がソファに座りテレビを見ていた。
ミルが紹介しても無反応だった。
「こんにちは。本間と申します」
美貴が笑顔で挨拶すると
「はいはい、どうも」
二人は足を組んだままテレビを見続けた。
「甥は佐藤茂で、妻は京子さんといいます。二人ともいい歳して挨拶もロクにできないんです。ごめんなさいね」
ミルはタカシと美貴に謝った。
「うるせーな。そんなこといちいち言わなくてもいいだろう」
茂がミルを睨みつけて言った。
ミルは茂を無視して、タカシと美貴に孫がいる近くのソファに案内した。
「ごめんなさいね。実はまだごはんの準備が終わってないの。もうすぐだからここで待っててくださる?」
「あ! 私、手伝います!」
美貴は、見た状況から年老いたミルが一人で何もかもやってることを察知した。
「タカシ、私がミルさんを手伝ってる間、真佐希君にジャックと話せるところを見せてあげたら? ジャックには好きなコがいるんでしょ?」
「そうだな。犬語を伝授するか」
タカシは真佐希を見てニヤッと笑った。
「真佐希、タカシさんをジャックのところに案内してくれる? タカシさんが犬語を教えてくれるそうよ」
ミルは嬉しそうに真佐希に言った。
真佐希はタカシの様子にフフッと笑みをこぼし、ジャックのところに連れて行った。
「美貴さん、いいの? 手伝ってもらって」
「はい。お手伝いさせてください。いつもタカシがお世話になってるお礼に」
美貴は笑顔で答えた。
二人がキッチンに行くと、ミルがため息ついて話し出した。
「突然、甥っ子達がやってきたの。呼んでないのに...そして、ああやっていつも勝手に居候するの。今夜の食事はタカシさんと美貴さんの分しか準備していないから、メニューを増やさなきゃと思って困ってたところだったの。本当にごめんなさいね。招待しておきながら」
「いいえ、大丈夫です。気になさらないでください。甥子さん夫婦についてはタカシから少し聞いてます。でも、今日は真佐希君の誕生日だし、主役が喜んでもらうようにしましょう!」
美貴は笑顔で話した。
「美貴さんはとても幸せな家庭で育ったのでしょう。とても素敵な笑顔だし、大事に育てられた感じがするわ」
「ふふふ、逆です。子供の頃、母は蒸発して父は再婚したのですが、再婚相手の継母が私を嫌い、私は施設で育ちました」
「まぁ! 信じられない! あなたみたいな出来のいい子を施設に入れるなんて!」
「でも、そのおかげでいろんなことを学びました。一番多くのことを教えてくれたのは喬のお母さんです」
「タカシさんのお母さん....」
「喬が中学生の頃にご主人を亡くし、もんじゃ焼き屋を切り盛りしながら喬を大学まで出したんです。おっとりした人なのに芯が強くて、やさしくて、私にとっては本当の母のような人です。料理も全部お義母さんから習いました」
「素敵な人なのね。タカシさんがいい方なのはお義母さんの教育かしらね」
「お義母さんはあまりうるさいことを言わないのですけど、多分、喬は働き者のお義母さんの背中を見て育ったのだと思います」
話をしながらも美貴はテキパキと料理を準備した。
「そう言えば! さっき、玄関に飾ってあったお花、素敵ですね。お花の先生だったって聞きました」
「うふふ、ありがとう。これでも昔は海外に行ってホテルや博物館にお花を飾ったこともあるのよ」
「海外!?」
「もう大昔の話だけど...」
「もしかして有名なデザイナーですか!?」
「うふふ...ただの好き者よ」
ミルは嬉しそうに答えた。
美貴は訝しんだが、今問い詰めるのはやめておくことにした。
出来上がったパエリヤやピザ、シーザーサラダ、モッツァレッラとトマトのカプレーゼを美貴はテーブルの上にどんどん並べた。
「へぇーうまそう!」
茂が自分のスプーンでパエリヤを一口分すくって食べた。
「茂! お行儀悪い! いい歳して何やってるの!」
ミルが怒った。
「なんだよ。食べてやってるんじゃないか」
「呼んでないのに勝手に来て!」
「一人で寂しいだろうから来てやってんだろう。お礼を言うのが普通だろ」
「もう帰って! 今度勝手にうちに来たら警察呼ぶわよ」
「ちっ、うるせーな!」
茂はスプーンを置いて、テーブルに座り静かにした。
タカシと真佐希とジャックが2階から降りてきた。
「美貴さん、タカシさんはすごいよ。本当にジャックと会話ができるんだ!」
明るくなった真佐希に美貴は微笑んだ。
「でしょう? タカシの唯一の取り柄なの」
「何言ってんの! 他にもオレの良さはいっぱいあるだろう~」
タカシが言うと美貴と真佐希は笑った。
「真佐希君、先にごはんを食べてね。ケーキは今冷やしているから後で出すわね」
「あ、はい」
真佐希は人懐っこい美貴の笑顔につられて微笑んだ。
美貴は皿を一枚取り、次々とおかずを盛っていった。甥夫婦が先取りする前に真佐希の食べる分を確保した。
「さ、食べましょう!」
美貴の掛け声で全員がテーブルについた。
6人と1匹は食事を楽しんだ。
ゆうべ遅くにベロベロに酔って帰ってきたタカシは昼前にようやく起きてきた。
「ねぇタカシ、今晩、ミルさん家に何を持っていく?」
「ミルさんが手ぶらで来てねって言ってたから何も持っていかなくていいんじゃないの?」
「お呼ばれして本当に手ぶらじゃダメでしょ。何にしようかな? お孫さんってどんな感じなの?」
「高校生の男の子だよ」
「高校生か。難しいな...」
「女装の趣味があるって言ってた」
「へ? 女装?」
18時になり、タカシと美貴はミルの家を訪れた。美貴は豪華な一戸建ての家にビックリした。
「ご主人は生前、大学の教授をやってて、ミルさんはお花の先生をやってたらしい」
タカシが美貴に教えた。
ミルが玄関に迎えに来た。
「こんばんは。妻の美貴と申します。本日はご招待をありがとうございます」
美貴は礼儀正しく挨拶した。
「美貴さん、いらっしゃい。来てくださって嬉しいわ。タカシさんもいらっしゃい。どうぞ中に入って」
ミルは思った通りの感じの良い美貴に微笑んだ。
玄関をはじめ、至るところにきれいにお花が生けてあった。
「すごいわ。これ絶対プロの腕前だわ...」
美貴は驚きながら生け花を見ていた。
ミルがリビングのソファに座っている男の子を紹介した。
「孫の真佐希です」
「こ、こんにちは」
真佐希は小さな声で挨拶した。色白の美少年だった。
「こんにちは、真佐希君。お誕生日おめでとう」
美貴は笑顔で言った。真佐希は何も言わず頭を下げた。
「そして、こっちは甥っ子夫婦です」
50代の男女二人がソファに座りテレビを見ていた。
ミルが紹介しても無反応だった。
「こんにちは。本間と申します」
美貴が笑顔で挨拶すると
「はいはい、どうも」
二人は足を組んだままテレビを見続けた。
「甥は佐藤茂で、妻は京子さんといいます。二人ともいい歳して挨拶もロクにできないんです。ごめんなさいね」
ミルはタカシと美貴に謝った。
「うるせーな。そんなこといちいち言わなくてもいいだろう」
茂がミルを睨みつけて言った。
ミルは茂を無視して、タカシと美貴に孫がいる近くのソファに案内した。
「ごめんなさいね。実はまだごはんの準備が終わってないの。もうすぐだからここで待っててくださる?」
「あ! 私、手伝います!」
美貴は、見た状況から年老いたミルが一人で何もかもやってることを察知した。
「タカシ、私がミルさんを手伝ってる間、真佐希君にジャックと話せるところを見せてあげたら? ジャックには好きなコがいるんでしょ?」
「そうだな。犬語を伝授するか」
タカシは真佐希を見てニヤッと笑った。
「真佐希、タカシさんをジャックのところに案内してくれる? タカシさんが犬語を教えてくれるそうよ」
ミルは嬉しそうに真佐希に言った。
真佐希はタカシの様子にフフッと笑みをこぼし、ジャックのところに連れて行った。
「美貴さん、いいの? 手伝ってもらって」
「はい。お手伝いさせてください。いつもタカシがお世話になってるお礼に」
美貴は笑顔で答えた。
二人がキッチンに行くと、ミルがため息ついて話し出した。
「突然、甥っ子達がやってきたの。呼んでないのに...そして、ああやっていつも勝手に居候するの。今夜の食事はタカシさんと美貴さんの分しか準備していないから、メニューを増やさなきゃと思って困ってたところだったの。本当にごめんなさいね。招待しておきながら」
「いいえ、大丈夫です。気になさらないでください。甥子さん夫婦についてはタカシから少し聞いてます。でも、今日は真佐希君の誕生日だし、主役が喜んでもらうようにしましょう!」
美貴は笑顔で話した。
「美貴さんはとても幸せな家庭で育ったのでしょう。とても素敵な笑顔だし、大事に育てられた感じがするわ」
「ふふふ、逆です。子供の頃、母は蒸発して父は再婚したのですが、再婚相手の継母が私を嫌い、私は施設で育ちました」
「まぁ! 信じられない! あなたみたいな出来のいい子を施設に入れるなんて!」
「でも、そのおかげでいろんなことを学びました。一番多くのことを教えてくれたのは喬のお母さんです」
「タカシさんのお母さん....」
「喬が中学生の頃にご主人を亡くし、もんじゃ焼き屋を切り盛りしながら喬を大学まで出したんです。おっとりした人なのに芯が強くて、やさしくて、私にとっては本当の母のような人です。料理も全部お義母さんから習いました」
「素敵な人なのね。タカシさんがいい方なのはお義母さんの教育かしらね」
「お義母さんはあまりうるさいことを言わないのですけど、多分、喬は働き者のお義母さんの背中を見て育ったのだと思います」
話をしながらも美貴はテキパキと料理を準備した。
「そう言えば! さっき、玄関に飾ってあったお花、素敵ですね。お花の先生だったって聞きました」
「うふふ、ありがとう。これでも昔は海外に行ってホテルや博物館にお花を飾ったこともあるのよ」
「海外!?」
「もう大昔の話だけど...」
「もしかして有名なデザイナーですか!?」
「うふふ...ただの好き者よ」
ミルは嬉しそうに答えた。
美貴は訝しんだが、今問い詰めるのはやめておくことにした。
出来上がったパエリヤやピザ、シーザーサラダ、モッツァレッラとトマトのカプレーゼを美貴はテーブルの上にどんどん並べた。
「へぇーうまそう!」
茂が自分のスプーンでパエリヤを一口分すくって食べた。
「茂! お行儀悪い! いい歳して何やってるの!」
ミルが怒った。
「なんだよ。食べてやってるんじゃないか」
「呼んでないのに勝手に来て!」
「一人で寂しいだろうから来てやってんだろう。お礼を言うのが普通だろ」
「もう帰って! 今度勝手にうちに来たら警察呼ぶわよ」
「ちっ、うるせーな!」
茂はスプーンを置いて、テーブルに座り静かにした。
タカシと真佐希とジャックが2階から降りてきた。
「美貴さん、タカシさんはすごいよ。本当にジャックと会話ができるんだ!」
明るくなった真佐希に美貴は微笑んだ。
「でしょう? タカシの唯一の取り柄なの」
「何言ってんの! 他にもオレの良さはいっぱいあるだろう~」
タカシが言うと美貴と真佐希は笑った。
「真佐希君、先にごはんを食べてね。ケーキは今冷やしているから後で出すわね」
「あ、はい」
真佐希は人懐っこい美貴の笑顔につられて微笑んだ。
美貴は皿を一枚取り、次々とおかずを盛っていった。甥夫婦が先取りする前に真佐希の食べる分を確保した。
「さ、食べましょう!」
美貴の掛け声で全員がテーブルについた。
6人と1匹は食事を楽しんだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる