夫が宇宙人になりまして...

ハミデタニク・イトヲカシ

文字の大きさ
18 / 24

18

しおりを挟む
 夕暮れが川沿いの道をやさしいオレンジ色に照らした。
 美貴みきとタカシはゆっくりと並んで歩いていた。

「はぁ~ビックリしたわね。今夜、眠れるかしら.....夢を見ている気分だわ」
「さっき寝てたじゃないか。大事な話の最中に」
「ね、寝てないわよ! 気を失っただけよ! だって3000万円よ。気後れしちゃうわ」
「ジャックに家を買ってやれる」
「ダメダメ! このお金は使っちゃダメ! ちゃんと真佐希まさき君が成人するまでとっておかなきゃね」
「真佐希君は億単位で金もってるからいらないんじゃないの?」
「ちょっと待ってよ...そんなに簡単に億とか言わないでちょうだい。ついてけないわ...」
 美貴は深くため息をついた。

 フラつく美貴のそばで、タカシはキョロキョロしていた。
「変だな~、この辺にあるはずなんだけど」

 2人は、以前、たかしが空から降ってきた小石のようなものが頭に当たり、気を失った場所を歩いていた。

「なーに? 何を探しているの?」
「宇宙船。この辺に着陸したんだけど見当たらないんだよな~...」
「宇宙船なんて、こんなところにあったら大騒ぎよ。どっか違うところにあるんじゃない?」
「いや、そんなはずない。この辺にあるはず...困ったな~、アレがないと帰れないんだよな...どこ行ったんだ?」

 タカシが地球に来てもう1ヶ月が過ぎていた。地球のもマスターしたと捉えたタカシは、レポートも完成させ、そろそろ帰ろうと思っていた。

 家に帰ると、喬の母がもんじゃ焼きを作っていた。
「二人とも、おかえり。準備オッケーよ!」
「やった~! もんじゃだ~。コレ食べてホッと一息つきたい!」
 ジャンプして美貴は喜んだ。
 喬の母も嬉しそうに笑った。
「海鮮もんじゃと親子もんじゃよ」
「親子もんじゃ?」
 タカシが不思議な顔で訊いた。
「鶏と卵を使った親子丼のもんじゃバージョンよ。喬が鶏が好きになったっていうからトライしてみたの」
「鶏ぃぃぃ~~~!!」
 タカシの耳がピクピクッと動いた。

 タカシは早速テーブルに座り、鉄板で親子もんじゃを焼き始めた。
「それはそうと、母さん、オレ達、3000万もらうことになったんだ」
「へ?」
 ソファに座って海鮮もんじゃを焼いている母がタカシを見た。
「真佐希君の後見人になることで、ミルさんから3000万円もらうことになったんだ」
「さ、3000万...!?」
 母は脱力して白目を剥き、とろけるようにソファから床へ流れ落ちた。

「お義母かあさん! 大丈夫? しっかりして! お義母さん!」
 美貴は駆け寄り、白目の義母を抱きかかえた。
 タカシは呆れ顔で2人を見た。
「なんで美貴も母さんも3000万って聞いて寝ちゃうんだよ。催眠効果があんのかな、3000万って。」
 タカシはもんじゃを食べた。
「うまっ! うまっ! 激うま!」
 耳をパタパタと羽がはばたくように動かした。

 母はようやく目を覚まし、落ち着きを取り戻して起き上がった。
「あ~、ビックリし...」
 目の前でタカシの耳がパタパタ動いているのが見えた。
「み、耳...み..」
 ギョッとして固まった。

「こ、こ、後遺症なの! 頭を打った時の後遺症なの! そのうち良くなるからお義母さん心配しないで!」
 美貴は焦って義母に言いながらタカシを見た。タカシはわかめスープを鼻から飲んでいた。
「タカシ!」
 美貴の声にタカシはハッとした。
「ははは。母さん、冗談だよ。冗談!」
 笑っているタカシの鼻から、わかめがニュルっと出てきた。
「ひっ!」
 母は再び白目を剥いてバタッと倒れた。
「お義母さ~ん!!」

 美貴の声が響くなか、タカシは嬉しそうな顔で鼻歌を歌いながらもんじゃを食べ続けた。

 朝、タカシはベランダで歯磨きをしていた。
「はぁ~、オレの宇宙船どこ行ったかなぁ?」
 空を見上げた。
「GPS衛生に信号を送るか」
 タカシはスマホの画面に指を置きピンクに光らせた。
 画面にゴーグルマップが表示され、青い丸が2つ重なって現れた。1つはタカシの位置で、もう1つは宇宙船の位置だった。
「あれ? 近いぞ」
 タカシは地図を拡大した。
「え? すぐ近くにある。え? どゆこと?」

 キョロキョロしていると、美貴が部屋から慌てて出てきた。
「遅刻しちゃう! じゃ、行ってきまーす!」
 玄関に向かう美貴のバッグにキラッと光る物が目に入った。
「あー!! オレの宇宙船!」

 タカシは美貴に駆け寄り、バッグにぶら下がっているキーホルダーをとった。
 キノコにキーリングが突き刺さり、キーホルダーにされていた。

「オレの宇宙船じゃないか!」
「なに言ってんの、ただのキノコのキーホルダーでしょ。こんなのが宇宙船なわけないでしょ」
「こんなとこに棒を突き刺して! これがないとオレ、家に帰れないんだよ!」
「こんな小さいキノコを宇宙船だって信じる人は誰もい・ま・せ・ん! じゃーね! 行ってきまーす!」
 美貴は急いで家を出た。

 バン!と閉まったドアをタカシは茫然と見ていた。
「オレの最新型の宇宙船に棒を突き刺すさんて...信じられない!」

 ガラガラガラガラ~~...
 手に持っていたコップの水で口をすすぎ、
 ゴクッ!と飲んだ。
「あ~、スッキリした!」

 ジッと見ていた母がドン引きした。
「おまえ...それ飲んじゃうの?」


 会社でみのるの様子が変だった。小指を立ててコーヒーを飲んでいた。
「なんで小指を立ててんの? アンテナ?」
 タカシは不思議そうな顔で言うと、
「実はアタシ、フランスに駐在することになるかも」
...?」
 フランスに駐在することよりも稔の言葉遣いにビックリした。
「そう、アタシ。フランスに行くかも」
 稔は女性のようなしぐさで横髪を耳にかけた。
「それって、安藤さんからのお誘い?」
「まーね、安藤さんがどうしてもアタシに来てほしいって言うから.....うふふ」
「もしかして、安藤さんのホテルとか行ったの?」
「や、やーね! 何を突然言ってるのかしら」
 稔は焦った。
 タカシの目がキラリと光った。
「もしかして、股間のブツの見せっことかした?」
「ゴ、ゴホンッ! アタシ、お下品な話は嫌いよ!」
「で、あっさり負けたんだろ」
 稔はビックリして口を開けたままタカシを見た。タカシはニヤッとした。
「オレは勝ったぜ!」
 
 これはタカシにとって、母星くにに持って帰る最大の自慢土産話ネタである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...