上 下
29 / 35
第2章 バグ同士集まって何が悪い!

24. 男のロマン

しおりを挟む
◇◇
こんにちは、この冒険の主人公のユーです。

俺の仲間(一部は仲間とは認めたくない)は4人だ。

金髪ツインテールのツンデレロリっ娘のシェリー。
料理上手で引っ込み思案だけど『天使の笑顔』を持つイオリ。
スタイル抜群だが、自称幼馴染・ヤンデレ・残念美人と様々なマイナス属性を持ったアカネ。
大きなトサカが特徴のトサカリザードだが、『バグ』でハゲになってしまったツルツル。

そして、俺を加えた4人と1匹は全員この世界では『バグ』。
その『バグ』を駆逐せんと、プレイヤーやモンスターに追われる毎日を送っております。

そんな俺たちの前に現れたのは、大きな城と、
そして、角、翼、尻尾を生やした女子高生風美少女。

彼女の名前は「りのりん」、絶対に本名じゃないだろ。
しかも彼女は自分を「魔王」で、「魔界のアイドルやってる」とサラッと言い放ったのだ。

これは波乱の予感しかしません。
◇◇

「君たちは『バグ』みたいだからね!大歓迎だよ~!是非りのりんの魔界に遊びに来て欲しいのだよ~」

魔王りのりんは俺たちを、目前の城の中に来るよう誘った。

正直、俺は面倒な予感しかしなかったので、華麗にスルーをしたかったのだが、
「お城!!!行く、行く~!!かしら~~!!」
「あは、結婚式を挙げるには、あの辺鄙な洞窟より、お城の方がいいじゃない!」
という二人の猛プッシュにより、立ち寄る事が半ば強制的に決まった。

その魔王城に向かう途中に聞いたのだが、先ほどの黒竜と今見えているりのりんの姿は、実は幻影だったらしい。

魔王の側近のジークという吸血鬼が幻影魔法を得意としており、近くに来た敵を追い払う為に使うのだそうだ。
もちろん幻影なので実体はなく、もしあのまま俺が黒竜に突っ込んでいたら、そのまますり抜けていたそうだ。

驚かせおって…ちょっとチビッたんだぞ…

「うわぁ~…お兄ちゃん…それは引くかしら…」
「あは、あとでそのパンツを貸して欲しいなぁ。私のパンツと交換して上げるから。ぐへへ~」

しまった…また『チャット』をオフにし忘れて、心の声が仲間に筒抜けになってしまっている。

「ククク!そこのお兄さん面白いねぇ!お名前はなんて言うの?」

ここは深入りすると、絶対に面倒なので、伏せておくにこしたことはない。
「お前に名乗る名などない」

ふっ!クールに決まったぜ!俺、かっこいい!

「ユーお兄ちゃんはなんで格好つけているのかしら!?」
「おい!このまな板っ娘!お前は何で余計な事を言うんだ!」
「ククク!ユーさんって言うお名前なのね!よろしく!ユー」

りのりんは「いかにも」な営業スマイルで俺に笑顔を向けた。

…魔王としての威厳みたいなのはないの?
ただ、「ククク」という笑い方だけは魔王っぽいな。

「そのアンバランスがりのりんの魅力の一つなんだぞぉ」

俺は心の中で溜め息をついた。

歩きながらりのりんはさらに質問を続ける。

「ユーさん達は、いつから『バグ』になっちゃったの?」
「ちょうど1週間前だな」
「おお!りのりんより1日早いのね!じゃあ、先輩だぁ!『バグ』としての先輩!」
「なんか嫌な先輩だな」
「ククク!いいじゃない!ユーせ・ん・ぱ・い!」

おお!なんか新鮮な響きがしたぞ!!
「せ・ん・ぱ・い」って美少女に言われるのって、男としてロマンだよな!
今のはナイスだったぜ!りのりん!!

俺はポーカーフェイスを保っている。心の中では感動に浸っていたが…

「サイテーかしら…お兄ちゃん、サイテーかしら」
「くっそ~~!『後輩』属性ときたかぁ!!ぐぬぬぅ!『幼馴染』と同等の属性持ちが現れるとは!アカネ、一生の不覚!」
「…ユーさん…いやらしいです…」

ノォォォォ!また『チャット』をオフにし忘れてるぅぅぅ!!
俺は急いでメニューを開いて、機能をオフにした。オフボタンを何度も押した。何度も、何度も。

「ククク!ユー先輩面白~い!私面白い人って『す・き!』キャッ!言っちゃった!」

「あの女…シェリーは無性に殴りたい気分かしら」
「ええ、火であぶって殺してしまいたいわ…」
「…まあまあ二人とも、冗談なんだから、本気にしちゃダメだよ…ね」

ちびっ子とヤンデレ幼馴染をたしなめる天使。
しかし、そこに小悪魔が返す。

「あっれぇ、そこの地味な先輩には冗談に聞こえちゃったかぁ。りのりん失敗!」

少し舌を出して、自分の頭をコツっと叩く。

あざと過ぎるだろ…

「…えっ?冗談じゃなかったの?りのりんさん…」
「ククク!冗談じゃなかったとしたら、地味子先輩に何か関係あるんですかぁ?」
「え…?そ、それは…と、とにかく冗談よね?」
「ククク!さぁ?どうでしょうかねぇ?ククク!」
「…もぅ、りのりんさんは悪魔です…」
「…なんか地味子先輩、手強いなぁ」

そんな天使vs小悪魔の頂上バトルなどを繰り返しているうちに、魔王城の門の前まで来た。



魔王の城の門には絶対にありえない、そんな門。

なんで大きなクマのぬいぐるみが二体置いてあるんだ!?
なんでキラキラしたイルミネーションの様な電飾的なモノが門の鉄格子に絡んでいるんだ!?
しかも電飾の色が三色とか、変な所で凝ってるし!

俺は認めんぞ!
これじゃあ元の世界にあった、千葉のネズミの国と同じじゃないか!!

「ククク、ようこそ!りのりんの魔界に!」


しおりを挟む

処理中です...