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映画館と喫茶店
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普通の映画館よりは狭い。それに何かの匂いがする。その匂いは、あまりいい匂いとは言えないが、理由を考えればわかるだろう。
史は真ん中あたりに座ろうとしていた清子を止めて、一番後ろに席を座らせた。
「どうして?」
「後ろから首筋を舐められていいなら、真ん中に座ろうか。」
ぞっとして清子は素直に一番後ろの端の席に座った。史はそれを守るように、清子の隣に座る。
しばらくすると館内は暗くなり、普通の映画のように予告編が始まる。その全編はヤクザ映画か、AVのタイトルばかりだった。
そして本編が始まる。序盤は団地に住む若い奥さん。あまりかわいらしいというタイプではないが、胸が大きいのがエプロン越しでもわかる。
しばらくすると、旦那が酔っぱらって同僚と一緒に帰ってくる。奥さんはそれを介抱して、旦那を寝かしつけてリビングに戻る。そして同僚にお礼を言うと、その同僚がリビングのソファーで奥さんに襲いかかる。
「あっ……やめてください……。」
「そんなこと言ってもほら、体は正直じゃないですか。奥さん。」
画面一杯の女の胸。それが男の手によって揉みしだかれると、まるでスライムのように形を変える。ピンク色の乳首が隆起し、それに男が吸い付くと、女のあえぎ声が館内に響いた。
「あぁ……。」
少し離れたところに座っていた男は、もぞもぞと手を動かしているようだった。その様子に、史は清子が気になってちらりとみる。だが清子は何の表情も変えない。
「……あっ!あっ!」
スカートの中に手を入れられて、下着はまだ穿いたままだが手がその中に突っ込まれ、ぐちゃぐちゃと音を立てる。
それからモザイクはかかっているが、映画の中で何度か女はセックスをしていた。最後には旦那とその上司と、四人でセックスをする。
「……。」
その途中で館内に一人の男が入ってきた。そして史の隣に座った。色あせたGジャンの男は、薄ら笑いを浮かべて史に言う。
「兄ちゃん。このあとするのか?」
手で握り拳を作り、丸めた人差し指に親指を突っ込む。すると史は苦笑いを浮かべていった。
「取材なんですよ。」
「編集者か。つまんねぇな。ねぇちゃん。欲求不満なら相手してやってもいいぜ。」
ここへくる前に餃子か何か食べたのだろうか。息が臭い。
「何なら三人で……。」
すると清子は男をぎっとにらむ。
「うるさい。黙って見てろ。」
ヤンキーやヤクザなどに脅されたことはあるのだろう。だが清子のその表情に、男も、そして史も顔をひきつらせた。
「悪かったな。」
そういって男は離れていく。そして席に座る。
清子の表情はどこか血が通っていないように思えた。だが目だけは鋭く、そのままはものでもあったらさしてしまいそうだと史は思う。
だがそういうところが好きなのだ。
「落ち着いて。」
史はそういって清子の手を握る。しかし清子はその手を振りきった。
「心配しなくても落ち着いてますから。」
画面の女は全裸にエプロンをつけたままだった。男を寝かせて、上から挿入し、口にはもう一人の性器がくわえられている。そして手には、三人目の男の性器が握られていた。
そしてその口にくわえられていた男は、それを離すと、女の下の男と繋がったまま男の方に体を寝かせると、その後ろの穴にも性器を入れ込んだ。すると女は耐えきれないように、ひときわ高い声であえぐ。
映画館を出ると、清子はぐっと伸びをする。
「どうだった?」
史は聞くと、清子は少し笑って言う。
「現実離れは確かにしてましたね。非現実的。」
「そう言わない。」
まるでファンタジーだ。一人の女に寄ってたかってセックスを強要するというのもあり得ない。だいたい、最初の時点で同僚にフェラチオを強要されるのだから、そのまま噛みちぎってやればいいのにと思う。まぁそんなことをしたら、AVの材料にならないだろうが。
「これからどこかへ行くの?」
「もう家に帰ります。」
「その前に食事にでも行く?少し早いけど、美味しい食堂があるんだ。」
「……いいえ。今日の講習もチェックしたいし。」
普通の女なら、疑似でセックスをしているとは言ってもAVを観て興奮したりするはずだ。そしてその裏にあるホテルへ行くこともあるのだろう。
そもそもカップルで成人映画をしている映画館へ来るというのは、そういうことが目的なのだ。
だが清子は全くそういうことに関心を持たない。普通の映画を観てもこういう反応なのだろうか。
「チケット余っちゃったね。結局使わなかったし。」
「誰かと行ってください。」
「俺は君と行きたいけどね。来週、気になっていた映画が封切りするんだ。一緒に行かないか。」
「……別の方を指名してください。」
あくまで相手にしたくない。そう言われているようだった。夕べの話を本気にしていない証拠だろう。
「徳成さん。あのさ……。」
「私と行かなくてもいいでしょう。明神さんを誘った方が喜ばれますよ。」
その言葉に史は軽くため息を付く。そして清子をまっすぐに見た。
「夕べのことがわかってて言っているの?君は、人の気持ちを何だと思っているのか。」
「独占欲や嫉妬から言っている言葉が、信じれるわけがありません。それに……編集長の言葉は、私には軽く感じます。」
「今日は酔っていないよ。」
「えぇそうでしょうね。」
「だったら本気だと思わないのか。」
さすがに清子もその言葉に言葉を詰まらせた。だが答えるわけにはいかない。
「徳成さん……イヤ、清子。これから俺に付き合って欲しいところがあるんだ。」
「イヤです。仕事をしたい。」
「いいや。付いてきてもらう。」
清子は戸惑いながら、それでも史に手を握られる。そして引きずるように、喫茶店の横にある小道を行った。
「え……。あの……。」
「付いてきて。」
その先はラブホテルがある界隈だ。そこへ連れて行って何をしようと言うのか。
「アレは……。」
そんな二人をじっと見ている人がいた。そしてその女は晶に連絡する。
「ねぇ。史は、いつ彼女が出来たの?」
愛は史の古い知り合いだった。だから史が言い寄るのを初めて見た気がする。
いつも言い寄られて、勝手に別れを切り出されるとため息を付いていたのが嘘のようだ。
史は真ん中あたりに座ろうとしていた清子を止めて、一番後ろに席を座らせた。
「どうして?」
「後ろから首筋を舐められていいなら、真ん中に座ろうか。」
ぞっとして清子は素直に一番後ろの端の席に座った。史はそれを守るように、清子の隣に座る。
しばらくすると館内は暗くなり、普通の映画のように予告編が始まる。その全編はヤクザ映画か、AVのタイトルばかりだった。
そして本編が始まる。序盤は団地に住む若い奥さん。あまりかわいらしいというタイプではないが、胸が大きいのがエプロン越しでもわかる。
しばらくすると、旦那が酔っぱらって同僚と一緒に帰ってくる。奥さんはそれを介抱して、旦那を寝かしつけてリビングに戻る。そして同僚にお礼を言うと、その同僚がリビングのソファーで奥さんに襲いかかる。
「あっ……やめてください……。」
「そんなこと言ってもほら、体は正直じゃないですか。奥さん。」
画面一杯の女の胸。それが男の手によって揉みしだかれると、まるでスライムのように形を変える。ピンク色の乳首が隆起し、それに男が吸い付くと、女のあえぎ声が館内に響いた。
「あぁ……。」
少し離れたところに座っていた男は、もぞもぞと手を動かしているようだった。その様子に、史は清子が気になってちらりとみる。だが清子は何の表情も変えない。
「……あっ!あっ!」
スカートの中に手を入れられて、下着はまだ穿いたままだが手がその中に突っ込まれ、ぐちゃぐちゃと音を立てる。
それからモザイクはかかっているが、映画の中で何度か女はセックスをしていた。最後には旦那とその上司と、四人でセックスをする。
「……。」
その途中で館内に一人の男が入ってきた。そして史の隣に座った。色あせたGジャンの男は、薄ら笑いを浮かべて史に言う。
「兄ちゃん。このあとするのか?」
手で握り拳を作り、丸めた人差し指に親指を突っ込む。すると史は苦笑いを浮かべていった。
「取材なんですよ。」
「編集者か。つまんねぇな。ねぇちゃん。欲求不満なら相手してやってもいいぜ。」
ここへくる前に餃子か何か食べたのだろうか。息が臭い。
「何なら三人で……。」
すると清子は男をぎっとにらむ。
「うるさい。黙って見てろ。」
ヤンキーやヤクザなどに脅されたことはあるのだろう。だが清子のその表情に、男も、そして史も顔をひきつらせた。
「悪かったな。」
そういって男は離れていく。そして席に座る。
清子の表情はどこか血が通っていないように思えた。だが目だけは鋭く、そのままはものでもあったらさしてしまいそうだと史は思う。
だがそういうところが好きなのだ。
「落ち着いて。」
史はそういって清子の手を握る。しかし清子はその手を振りきった。
「心配しなくても落ち着いてますから。」
画面の女は全裸にエプロンをつけたままだった。男を寝かせて、上から挿入し、口にはもう一人の性器がくわえられている。そして手には、三人目の男の性器が握られていた。
そしてその口にくわえられていた男は、それを離すと、女の下の男と繋がったまま男の方に体を寝かせると、その後ろの穴にも性器を入れ込んだ。すると女は耐えきれないように、ひときわ高い声であえぐ。
映画館を出ると、清子はぐっと伸びをする。
「どうだった?」
史は聞くと、清子は少し笑って言う。
「現実離れは確かにしてましたね。非現実的。」
「そう言わない。」
まるでファンタジーだ。一人の女に寄ってたかってセックスを強要するというのもあり得ない。だいたい、最初の時点で同僚にフェラチオを強要されるのだから、そのまま噛みちぎってやればいいのにと思う。まぁそんなことをしたら、AVの材料にならないだろうが。
「これからどこかへ行くの?」
「もう家に帰ります。」
「その前に食事にでも行く?少し早いけど、美味しい食堂があるんだ。」
「……いいえ。今日の講習もチェックしたいし。」
普通の女なら、疑似でセックスをしているとは言ってもAVを観て興奮したりするはずだ。そしてその裏にあるホテルへ行くこともあるのだろう。
そもそもカップルで成人映画をしている映画館へ来るというのは、そういうことが目的なのだ。
だが清子は全くそういうことに関心を持たない。普通の映画を観てもこういう反応なのだろうか。
「チケット余っちゃったね。結局使わなかったし。」
「誰かと行ってください。」
「俺は君と行きたいけどね。来週、気になっていた映画が封切りするんだ。一緒に行かないか。」
「……別の方を指名してください。」
あくまで相手にしたくない。そう言われているようだった。夕べの話を本気にしていない証拠だろう。
「徳成さん。あのさ……。」
「私と行かなくてもいいでしょう。明神さんを誘った方が喜ばれますよ。」
その言葉に史は軽くため息を付く。そして清子をまっすぐに見た。
「夕べのことがわかってて言っているの?君は、人の気持ちを何だと思っているのか。」
「独占欲や嫉妬から言っている言葉が、信じれるわけがありません。それに……編集長の言葉は、私には軽く感じます。」
「今日は酔っていないよ。」
「えぇそうでしょうね。」
「だったら本気だと思わないのか。」
さすがに清子もその言葉に言葉を詰まらせた。だが答えるわけにはいかない。
「徳成さん……イヤ、清子。これから俺に付き合って欲しいところがあるんだ。」
「イヤです。仕事をしたい。」
「いいや。付いてきてもらう。」
清子は戸惑いながら、それでも史に手を握られる。そして引きずるように、喫茶店の横にある小道を行った。
「え……。あの……。」
「付いてきて。」
その先はラブホテルがある界隈だ。そこへ連れて行って何をしようと言うのか。
「アレは……。」
そんな二人をじっと見ている人がいた。そしてその女は晶に連絡する。
「ねぇ。史は、いつ彼女が出来たの?」
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