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ツケ
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次の日、史は会社の上司に朝から呼び出され、オフィスを出て行ったのは仕事が始まる前。そしてその間、清子も全く仕事にならなかった。
警察官にも清子のようにITに特化した部門がある。その男が数人やってきて、清子のデスクにあるパソコンをチェックしていたのだ。
「このメッセージと、このメッセージの発信先は同じところですね。アカウントは違うようですが、同じパソコンから送っている。」
「そうですね。おそらくそれが加害者のものだと思います。」
「えぇ……。ホームページへの閲覧履歴も……。」
周りの人はこそこそと話をしながら、それでも自分の仕事をこなしていた。
「こちらのデータをコピーなさいますか?」
「そうですね。証拠品になりますから。それから……。」
犯人は二十代の男。清子のようなエンジニアであり、腕には覚えがあったらしい。それを利用してAVの動画を無料の動画サイトにアップしたり、「pink倶楽部」の画像や本誌のモザイクをとり世の中に流していた。そうすることで、動画の管理者から収入を得ていたのだ。
そして何より男は、あるAV女優の熱心なファンだった。女優がリリースするソフト、イベント、SNSなどすべてをチェックし、そしてその修正の向こうにまでたどり着いた。
それで自信が出たのだろう。
しかしある日、その女優のオフショットが掲載された「pink倶楽部」のホームページを見て、この修正を取ろうとした。しかし画像のコピーも出来ない。プリントアウトをすれば、画像が乱れる。画像に仕掛けをしてあるのだ。その仕掛けを取ろうと躍起になった。いろんな手を打ってみた。しかしそれをはずすことは出来ない。
自信はあるのにそれが出来ないとなると、男のプライドが許さなかったのだろう。そんな折り、男の元にその修正を取るという以来が舞い込んできた。ここで出来ないなどというと、男の信用は地に落ちる。
そして男が目につけたのは、「pink倶楽部」の史のコラムだった。紹介文には、史は元AV男優であり「pink倶楽部」の現編集長であると書かれている。
調子の良いことばかり書いて、笑顔で写真に写っている史がやがて男の怒りの対象になった。
「パソコンまで持って行かなくても良いですか?」
清子はメモリースティックを手にした警察官に声をかけると、その男たちは首を横に振る。
「良くこんなに管理してありますよね。」
「……こういう輩がいずれ出てくるとは思ってました。」
「だったらその前に、こちらに相談する手もありましたよ。そうすれば、脅迫だけで済んだかもしれませんね。」
「このような文章だけで脅迫の罪になるのだったら、どれだけの人を逮捕するかわかりませんよ。」
「確かにそうだ。この脅し文句は、すごいですね。」
「えぇ。実際言葉にしていない、パソコンやタブレットの中だから、文章にしても罪の意識がないと思ってるのでしょうかね。それを読んだ人がどんな思いをするか、考えてもないのでしょう。」
「その通りです。だから上が、今、それで罪にならないかと躍起になってます。」
「でしたら、早く法案が可決することを期待します。」
「えぇ。このようなことが二度と無いように。」
そう言って数人の男は、オフィスを出て行く。それを入れ替わりに史が戻ってきた。そして清子の方へ向かう。
「徳成さん。ちょっといいだろうか。」
立ち上げているパソコンをスリープ状態にして、清子は史についていく。そして史が清子を連れてきたのは、オフィスの隣にある倉庫だった。
二人っきりで話をしたいということなのだろうが、おそらくこの外には聞き耳を立てている人たちがいる。それは噂好きであるメディア関係なら仕方がないのかもしれないが、よけいなことを話さないで欲しい、そしてよけいなことをしないで欲しいと清子は思っていた。
「上の見解は、やりすぎたセキュリティにも問題はあるということだった。」
「……でしたら、ウェブに特化するのをおやめになった方がいいですね。どんな方法で彼らは進入してくるかわかりませんし。」
「だからといって緩くするのは、お門違いだ。」
「……。」
「だから上は、雑誌に対する意見や要望をホームページ上から募集をするのを辞めた方がいいと言うことだ。」
「……メッセージはリアルな読者の声です。それを辞めろと言うのは……、」
「それは俺も思うところだ。だったら君はどうすればいいと思う?」
清子は史から離れて、奥の窓の方へ向かう。そしてその窓から外を見た。
「そうですね……。この際、ユーザー登録をしてみてはいかがでしょうか。」
「ユーザー?定期的購読をしている人はそう言うことをしているけれど……。」
エロ本なのだ。個人出て行き購読をしている人は限られている。
「ページに入る前に年齢確認だけはしていますが、ユーザー登録をすれば特典の画像が見れるとか文章を読めるとすれば、アクセス数も増えることは考えられますし、メッセージを送るのに登録をすればよけいなことを発言すると個人の特定が出来ます。」
「登録には本名を登録するのではなく?」
「電話番号、メールアドレスを必須とすれば、警戒すると思います。ただ、その分セキュリティを万全にしなければ情報漏洩でつっこまれるのはこちらです。」
それだけ万全にするとすれば、それを管理する人が必要になる。清子は一年でいなくなるのだから、それを管理する人を作らなければ行けないのだろうか。それだけ会社が面倒を見るだろうか。
「上のものに伺いをたててみるよ。」
「情報の管理は、こちらの会社でもウェブの専門がいらっしゃいますので、私がいなくてもその方たちがしっかりしてくれれば何とかなりますから。」
だから自分はいなくていいのだ。そう言っているように聞こえる。違う。そんなことでいなくならないで欲しい。もっと自分のそばにいて欲しい。出来れば、ずっと。
「それから……もう一つ上から言われていることがある。」
それを言いたかったが、外で聞き耳を立てている人を考えるとそれも言い辛い。
「何でしょうか。」
「今回のことは俺が本誌にもホームページにも顔が割れていることで起こったことだ。」
「そうですね。」
「しばらく俺の画像を削除して欲しいと言っている。ホームページと、本誌と。」
「わかりました。名前と本文だけでいいのですね。先ほどの話が現実になるのだったら、ユーザー登録した方だけが読めるページに移行しても良いと思いますけど。」
そうすれば史のファンだという女性たちが、それを目当てにユーザー登録をするかもしれない。
「削除はいつ出来る?」
「すぐにでも。」
「本誌はこの間発売されたばかりだ。そこには写真が載っている。だから次の号では写真を載せないつもりだ。だから……次の号が発売されるまで、会社の目の届くところにいて欲しいと言うことだ。」
過保護だな。清子はそう思いながら少しため息をついた。
非力な清子でも出来るような護身術なら史でも出来そうなものだが、それすらしないで他人を頼るのか。まぁ、会社としては何かがあってからでは遅いと思っているのかもしれない。
「会社で寝泊まりを?」
「会社はそんなことは出来ないよ。寮に入って欲しいと言われてる。君もね。」
その言葉に清子は驚いたように史を見た。
「私もですか?」
「あぁ。昨日の動画がSNSで拡散されている。君にも影響があるのではないかと思われていたよ。特に……君は派遣でこちらが雇っているというよりは、頼んできてもらっている立場だ。何かがあったら、会社の信用問題になると思っているのだと思うよ。」
「……。」
それもそうかもしれない。清子は少しため息をつくと、うなづいた。
「わかりました。引っ越したばかりなんですけどね。」
「そう言っていたね。でも寮の方がウィークリーよりも安いかもしれないね。家具も家電もついているし。アパートやマンションの部屋を寮にしているんだ。そのいくつかの間取りが人事部から送られてくるよ。」
「わかりました。」
すると史はその窓際にいた清子に近づくと、耳元で囁いた。
「一緒に住む?」
「やです。」
その言葉に史は少し笑い、清子の肩に触れた。そして少しかがむと、軽く唇を合わせようとする。だが清子はその顔をぐっと押しのけた。
「やめてください。こんなところで……。」
「違うところならいい?今夜から楽しみだね。」
「……。」
史はそう言って嬉しそうに微笑んだ。
警察官にも清子のようにITに特化した部門がある。その男が数人やってきて、清子のデスクにあるパソコンをチェックしていたのだ。
「このメッセージと、このメッセージの発信先は同じところですね。アカウントは違うようですが、同じパソコンから送っている。」
「そうですね。おそらくそれが加害者のものだと思います。」
「えぇ……。ホームページへの閲覧履歴も……。」
周りの人はこそこそと話をしながら、それでも自分の仕事をこなしていた。
「こちらのデータをコピーなさいますか?」
「そうですね。証拠品になりますから。それから……。」
犯人は二十代の男。清子のようなエンジニアであり、腕には覚えがあったらしい。それを利用してAVの動画を無料の動画サイトにアップしたり、「pink倶楽部」の画像や本誌のモザイクをとり世の中に流していた。そうすることで、動画の管理者から収入を得ていたのだ。
そして何より男は、あるAV女優の熱心なファンだった。女優がリリースするソフト、イベント、SNSなどすべてをチェックし、そしてその修正の向こうにまでたどり着いた。
それで自信が出たのだろう。
しかしある日、その女優のオフショットが掲載された「pink倶楽部」のホームページを見て、この修正を取ろうとした。しかし画像のコピーも出来ない。プリントアウトをすれば、画像が乱れる。画像に仕掛けをしてあるのだ。その仕掛けを取ろうと躍起になった。いろんな手を打ってみた。しかしそれをはずすことは出来ない。
自信はあるのにそれが出来ないとなると、男のプライドが許さなかったのだろう。そんな折り、男の元にその修正を取るという以来が舞い込んできた。ここで出来ないなどというと、男の信用は地に落ちる。
そして男が目につけたのは、「pink倶楽部」の史のコラムだった。紹介文には、史は元AV男優であり「pink倶楽部」の現編集長であると書かれている。
調子の良いことばかり書いて、笑顔で写真に写っている史がやがて男の怒りの対象になった。
「パソコンまで持って行かなくても良いですか?」
清子はメモリースティックを手にした警察官に声をかけると、その男たちは首を横に振る。
「良くこんなに管理してありますよね。」
「……こういう輩がいずれ出てくるとは思ってました。」
「だったらその前に、こちらに相談する手もありましたよ。そうすれば、脅迫だけで済んだかもしれませんね。」
「このような文章だけで脅迫の罪になるのだったら、どれだけの人を逮捕するかわかりませんよ。」
「確かにそうだ。この脅し文句は、すごいですね。」
「えぇ。実際言葉にしていない、パソコンやタブレットの中だから、文章にしても罪の意識がないと思ってるのでしょうかね。それを読んだ人がどんな思いをするか、考えてもないのでしょう。」
「その通りです。だから上が、今、それで罪にならないかと躍起になってます。」
「でしたら、早く法案が可決することを期待します。」
「えぇ。このようなことが二度と無いように。」
そう言って数人の男は、オフィスを出て行く。それを入れ替わりに史が戻ってきた。そして清子の方へ向かう。
「徳成さん。ちょっといいだろうか。」
立ち上げているパソコンをスリープ状態にして、清子は史についていく。そして史が清子を連れてきたのは、オフィスの隣にある倉庫だった。
二人っきりで話をしたいということなのだろうが、おそらくこの外には聞き耳を立てている人たちがいる。それは噂好きであるメディア関係なら仕方がないのかもしれないが、よけいなことを話さないで欲しい、そしてよけいなことをしないで欲しいと清子は思っていた。
「上の見解は、やりすぎたセキュリティにも問題はあるということだった。」
「……でしたら、ウェブに特化するのをおやめになった方がいいですね。どんな方法で彼らは進入してくるかわかりませんし。」
「だからといって緩くするのは、お門違いだ。」
「……。」
「だから上は、雑誌に対する意見や要望をホームページ上から募集をするのを辞めた方がいいと言うことだ。」
「……メッセージはリアルな読者の声です。それを辞めろと言うのは……、」
「それは俺も思うところだ。だったら君はどうすればいいと思う?」
清子は史から離れて、奥の窓の方へ向かう。そしてその窓から外を見た。
「そうですね……。この際、ユーザー登録をしてみてはいかがでしょうか。」
「ユーザー?定期的購読をしている人はそう言うことをしているけれど……。」
エロ本なのだ。個人出て行き購読をしている人は限られている。
「ページに入る前に年齢確認だけはしていますが、ユーザー登録をすれば特典の画像が見れるとか文章を読めるとすれば、アクセス数も増えることは考えられますし、メッセージを送るのに登録をすればよけいなことを発言すると個人の特定が出来ます。」
「登録には本名を登録するのではなく?」
「電話番号、メールアドレスを必須とすれば、警戒すると思います。ただ、その分セキュリティを万全にしなければ情報漏洩でつっこまれるのはこちらです。」
それだけ万全にするとすれば、それを管理する人が必要になる。清子は一年でいなくなるのだから、それを管理する人を作らなければ行けないのだろうか。それだけ会社が面倒を見るだろうか。
「上のものに伺いをたててみるよ。」
「情報の管理は、こちらの会社でもウェブの専門がいらっしゃいますので、私がいなくてもその方たちがしっかりしてくれれば何とかなりますから。」
だから自分はいなくていいのだ。そう言っているように聞こえる。違う。そんなことでいなくならないで欲しい。もっと自分のそばにいて欲しい。出来れば、ずっと。
「それから……もう一つ上から言われていることがある。」
それを言いたかったが、外で聞き耳を立てている人を考えるとそれも言い辛い。
「何でしょうか。」
「今回のことは俺が本誌にもホームページにも顔が割れていることで起こったことだ。」
「そうですね。」
「しばらく俺の画像を削除して欲しいと言っている。ホームページと、本誌と。」
「わかりました。名前と本文だけでいいのですね。先ほどの話が現実になるのだったら、ユーザー登録した方だけが読めるページに移行しても良いと思いますけど。」
そうすれば史のファンだという女性たちが、それを目当てにユーザー登録をするかもしれない。
「削除はいつ出来る?」
「すぐにでも。」
「本誌はこの間発売されたばかりだ。そこには写真が載っている。だから次の号では写真を載せないつもりだ。だから……次の号が発売されるまで、会社の目の届くところにいて欲しいと言うことだ。」
過保護だな。清子はそう思いながら少しため息をついた。
非力な清子でも出来るような護身術なら史でも出来そうなものだが、それすらしないで他人を頼るのか。まぁ、会社としては何かがあってからでは遅いと思っているのかもしれない。
「会社で寝泊まりを?」
「会社はそんなことは出来ないよ。寮に入って欲しいと言われてる。君もね。」
その言葉に清子は驚いたように史を見た。
「私もですか?」
「あぁ。昨日の動画がSNSで拡散されている。君にも影響があるのではないかと思われていたよ。特に……君は派遣でこちらが雇っているというよりは、頼んできてもらっている立場だ。何かがあったら、会社の信用問題になると思っているのだと思うよ。」
「……。」
それもそうかもしれない。清子は少しため息をつくと、うなづいた。
「わかりました。引っ越したばかりなんですけどね。」
「そう言っていたね。でも寮の方がウィークリーよりも安いかもしれないね。家具も家電もついているし。アパートやマンションの部屋を寮にしているんだ。そのいくつかの間取りが人事部から送られてくるよ。」
「わかりました。」
すると史はその窓際にいた清子に近づくと、耳元で囁いた。
「一緒に住む?」
「やです。」
その言葉に史は少し笑い、清子の肩に触れた。そして少しかがむと、軽く唇を合わせようとする。だが清子はその顔をぐっと押しのけた。
「やめてください。こんなところで……。」
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「……。」
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