66 / 289
花火
65
しおりを挟む
昼近くになるまで飽きることなくお互いを求め合い、気を失うように眠りについた。目を覚ますと、あまり眠れていないのに頭がすっきりしている。
史も狭いベッドの中で、清子の体を抱きしめるように眠っていた。端整な顔立ちが目の前にあって、思わず清子はその頬に触れた。すると史もわずかに目を開ける。起きたときに清子がいてくれるのがとても嬉しい。こんな日々が続けばいいと思いながら少し微笑んでその額にキスをした。
「おはよう。」
「……おはようございます。」
「何時かな。おはようという時間なんだろうか。」
備え付けの時計をみて、夕方近くになっていたのに史は少し笑っていた。
「久しぶりにぐっすり眠ったよ。」
「狭くなかったですか?」
「狭いとひっついていられるから、それはそれで良いと思う。」
史らしい言葉だ。甘い言葉を息を吐くように言うから。その言葉に一喜一憂しない。いずれは離れる人だ。来年の春、清子はここを離れるし、そうなれば史もきっと清子を忘れて別の人を見るだろうから。
「どうしたの?」
不思議そうに史が聞くと清子は何もいわずに首を横に振り、その体から離れようと体をよじらせた。だが史は体を離す気はない。
「暑いです。」
「エアコンは利いてるよ。」
体を離すのには、史が離さないといけないだろう。清子はそのままの体勢のまままた時計をみる。
「荷物を取りに行かないと。」
「そうだね。でももう少しこうしていたい。」
「遅くなってしまいますよ。」
「明日は予定がある?」
「明日は講習会に。」
「そうか……だったら、今日中に終わらせたいね。」
横になったまま窓から外を見るが、カーテンがしてあってよくわからない。だが水の音がするということは、雨が降っているのだろう。
「でももう少しこうしていたい。」
そう言って体を抱きしめる力を強めた。
「清子。恋人と……言って良い?」
「やです。
「どうして?」
「好きじゃないから。」
清子はそう言って、体をまたよじらせた。しかし史はそれを止めるように、清子の顎を持ち上げると唇にキスをする。軽く触れて、そして舌を絡ませた。
「だったら俺しか見ないようにしてあげる。清子……。ほら。俺の……もうこんなになってる。清子がそうさせたんだ。」
手を捕まれて、史の性器に触れさせられる。そこはもう少しずつ堅さを増していた。
「起き抜けだからです。」
「いいや。ほら……どんどん固くなって……。清子のも濡れてきた。」
閉じられた太股の間に指を這わせると、そこはもう少しずつ濡れ始めていた。
「あ……。そんなにしたら……。」
赤くなる頬に史はまたゾクゾクし始めた。そして史の方から唇を重ねる。
次号の「pink倶楽部」の史のコラムからは写真が消えた。それにホームページの写真も削除すると、メッセージにファンらしい女性のメッセージが届く。
「昌樹さんの写真を載せてください。」
その言葉に、清子は断りを入れた。未だに人気があるのだろう。相変わらず、ウェブ上での史がAV男優として出演した動画は人気があるし、無料の動画も消えることはない。史の場合は難しいのだろう。
未だに需要はあるので、動画の削除も出来ない。香子のように検索からヒットしないようにすることも出来ないのだから。慎吾や美夏はそれを黙認しているようだったが、内心面白くないはずだ。
現役のAV女優や男優であれば、SNSなどからファンに訴えることも出来るのかもしれない。心があるファンなら購入してみるのだろうが、それもしないファンもいる。そんな奴はファンでもなんでもないだろう。
雑誌の発売とともに、清子は寮をでた。そして史も自宅へ帰ったようだった。一緒のマンションにいるときは、史の誘いで部屋へ行ったり部屋に来たりすることもあったがもう今はそんなこともないし、清子も自分の部屋に呼ぶことも教えることもなかった。
以前に戻ったようだった。こうして忘れていくのだろう。清子は安心したようにまたパソコンの画面を見る。
一方の史は、少しいらだちを隠せなかった。清子が仕事が終わったらさっさと帰ってしまうことや、自宅を言いたがないのも気に入らない。思わず社員リストを出して、清子の自宅へ押し掛けようかとも思うがそんなデリカシーのないことをしたくなかった。
「ただいまっと。」
外から晶が戻ってきた。カメラの入ったいつものバッグを持っている。
「お疲れ。今日ってなんの撮影?」
「んー。映画。」
「映画?」
「映画の撮影現場なんだけどさ、ほらAV男優の奴が十八禁だけどAVじゃねぇ映画に出るとかで、その撮影を撮影してきた。」
「へぇ……演技できるのか?そいつ。腰振るくらいしかできないだろうに。」
晶の隣の男はどれだけ失礼なことを言っているのかわからないのだろう。そのAV男優だった男が、ここにもいるのに。だが史の顔色は変わらない。特に気にしていないのだろう。
「でもうまかったぜ。ベテランの役者が食われそうだ。あ、そうだ。編集長。」
そういって晶は史のところへ足を向ける。
「どうした?」
「映画雑誌の「movie」から昼からインタビューして欲しいって言われてるんですけど、その男優が編集長だったら話をするって言ってます。」
「俺?「movie」の編集長じゃないのか?」
「じゃなくて、元同僚の方が話しやすいって言ってて。」
「……。」
まともな雑誌なら、その男優を色眼鏡で見るだろう。その映画化をする小説だって、元々は官能小説だ。聞きたいのはそれしかないようで、正直男優自身もうんざりしていたのだろう。
「誰だったか……。」
映画は好きだが海外のモノしか見なかった史にとって、邦画は得意なジャンルじゃない。役者にも興味がなかった。
「……あぁ……。この人か。一緒に絡んだこともある。」
「へぇ。3P?」
「じゃなくて、汁の時だな。この人がメインだった。確かに演技は上手そうだったし……普通の映画でも出来そうだったな。うん。わかった。都合を付ける。浅倉さん。」
そう言って史は、副編集長に声をかけた。といっても誰もが副編集長のように、動くことは出来るのだが。
「はい。」
「午後から少し出かけるので、ライターの誤字、脱字だけチェックしてもらっても良いですか。」
「OKです。」
「内容は帰ってきたら見ますから。」
ちらっと清子を見るが、清子はこちらの方には全く目を向けないまま、パソコンの画面を見ていた。いないことを少しは気にして欲しいと思うが、清子の関心は画面の中だけだった。
そのとき清子はふとお尻に手を伸ばして、携帯電話を手にする。そしてわずかに笑ったと思うと、またいつもの表情に戻った。
史も狭いベッドの中で、清子の体を抱きしめるように眠っていた。端整な顔立ちが目の前にあって、思わず清子はその頬に触れた。すると史もわずかに目を開ける。起きたときに清子がいてくれるのがとても嬉しい。こんな日々が続けばいいと思いながら少し微笑んでその額にキスをした。
「おはよう。」
「……おはようございます。」
「何時かな。おはようという時間なんだろうか。」
備え付けの時計をみて、夕方近くになっていたのに史は少し笑っていた。
「久しぶりにぐっすり眠ったよ。」
「狭くなかったですか?」
「狭いとひっついていられるから、それはそれで良いと思う。」
史らしい言葉だ。甘い言葉を息を吐くように言うから。その言葉に一喜一憂しない。いずれは離れる人だ。来年の春、清子はここを離れるし、そうなれば史もきっと清子を忘れて別の人を見るだろうから。
「どうしたの?」
不思議そうに史が聞くと清子は何もいわずに首を横に振り、その体から離れようと体をよじらせた。だが史は体を離す気はない。
「暑いです。」
「エアコンは利いてるよ。」
体を離すのには、史が離さないといけないだろう。清子はそのままの体勢のまままた時計をみる。
「荷物を取りに行かないと。」
「そうだね。でももう少しこうしていたい。」
「遅くなってしまいますよ。」
「明日は予定がある?」
「明日は講習会に。」
「そうか……だったら、今日中に終わらせたいね。」
横になったまま窓から外を見るが、カーテンがしてあってよくわからない。だが水の音がするということは、雨が降っているのだろう。
「でももう少しこうしていたい。」
そう言って体を抱きしめる力を強めた。
「清子。恋人と……言って良い?」
「やです。
「どうして?」
「好きじゃないから。」
清子はそう言って、体をまたよじらせた。しかし史はそれを止めるように、清子の顎を持ち上げると唇にキスをする。軽く触れて、そして舌を絡ませた。
「だったら俺しか見ないようにしてあげる。清子……。ほら。俺の……もうこんなになってる。清子がそうさせたんだ。」
手を捕まれて、史の性器に触れさせられる。そこはもう少しずつ堅さを増していた。
「起き抜けだからです。」
「いいや。ほら……どんどん固くなって……。清子のも濡れてきた。」
閉じられた太股の間に指を這わせると、そこはもう少しずつ濡れ始めていた。
「あ……。そんなにしたら……。」
赤くなる頬に史はまたゾクゾクし始めた。そして史の方から唇を重ねる。
次号の「pink倶楽部」の史のコラムからは写真が消えた。それにホームページの写真も削除すると、メッセージにファンらしい女性のメッセージが届く。
「昌樹さんの写真を載せてください。」
その言葉に、清子は断りを入れた。未だに人気があるのだろう。相変わらず、ウェブ上での史がAV男優として出演した動画は人気があるし、無料の動画も消えることはない。史の場合は難しいのだろう。
未だに需要はあるので、動画の削除も出来ない。香子のように検索からヒットしないようにすることも出来ないのだから。慎吾や美夏はそれを黙認しているようだったが、内心面白くないはずだ。
現役のAV女優や男優であれば、SNSなどからファンに訴えることも出来るのかもしれない。心があるファンなら購入してみるのだろうが、それもしないファンもいる。そんな奴はファンでもなんでもないだろう。
雑誌の発売とともに、清子は寮をでた。そして史も自宅へ帰ったようだった。一緒のマンションにいるときは、史の誘いで部屋へ行ったり部屋に来たりすることもあったがもう今はそんなこともないし、清子も自分の部屋に呼ぶことも教えることもなかった。
以前に戻ったようだった。こうして忘れていくのだろう。清子は安心したようにまたパソコンの画面を見る。
一方の史は、少しいらだちを隠せなかった。清子が仕事が終わったらさっさと帰ってしまうことや、自宅を言いたがないのも気に入らない。思わず社員リストを出して、清子の自宅へ押し掛けようかとも思うがそんなデリカシーのないことをしたくなかった。
「ただいまっと。」
外から晶が戻ってきた。カメラの入ったいつものバッグを持っている。
「お疲れ。今日ってなんの撮影?」
「んー。映画。」
「映画?」
「映画の撮影現場なんだけどさ、ほらAV男優の奴が十八禁だけどAVじゃねぇ映画に出るとかで、その撮影を撮影してきた。」
「へぇ……演技できるのか?そいつ。腰振るくらいしかできないだろうに。」
晶の隣の男はどれだけ失礼なことを言っているのかわからないのだろう。そのAV男優だった男が、ここにもいるのに。だが史の顔色は変わらない。特に気にしていないのだろう。
「でもうまかったぜ。ベテランの役者が食われそうだ。あ、そうだ。編集長。」
そういって晶は史のところへ足を向ける。
「どうした?」
「映画雑誌の「movie」から昼からインタビューして欲しいって言われてるんですけど、その男優が編集長だったら話をするって言ってます。」
「俺?「movie」の編集長じゃないのか?」
「じゃなくて、元同僚の方が話しやすいって言ってて。」
「……。」
まともな雑誌なら、その男優を色眼鏡で見るだろう。その映画化をする小説だって、元々は官能小説だ。聞きたいのはそれしかないようで、正直男優自身もうんざりしていたのだろう。
「誰だったか……。」
映画は好きだが海外のモノしか見なかった史にとって、邦画は得意なジャンルじゃない。役者にも興味がなかった。
「……あぁ……。この人か。一緒に絡んだこともある。」
「へぇ。3P?」
「じゃなくて、汁の時だな。この人がメインだった。確かに演技は上手そうだったし……普通の映画でも出来そうだったな。うん。わかった。都合を付ける。浅倉さん。」
そう言って史は、副編集長に声をかけた。といっても誰もが副編集長のように、動くことは出来るのだが。
「はい。」
「午後から少し出かけるので、ライターの誤字、脱字だけチェックしてもらっても良いですか。」
「OKです。」
「内容は帰ってきたら見ますから。」
ちらっと清子を見るが、清子はこちらの方には全く目を向けないまま、パソコンの画面を見ていた。いないことを少しは気にして欲しいと思うが、清子の関心は画面の中だけだった。
そのとき清子はふとお尻に手を伸ばして、携帯電話を手にする。そしてわずかに笑ったと思うと、またいつもの表情に戻った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる