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来訪
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やはり晶が使っていたパソコンの中にあるアプリは今は存在しないものでアプリ自体がもう開発が終わっている。
「デベロッパのアップデートが必要ですが、もう開発は終わっているみたいなので機動は無理です。」
「えー?マジか。」
「似たようなアプリを入れたらどうですか。画像編集ですよね。」
「コレ使いやすかったんだよ。」
そう言って晶は清子に近づいてパソコンの画面を見る。
「似たようなものが良いなら、他のものを検索しましょうか。」
「ある?そんなの。」
「さぁ……調べてみないと。あまり私もこういうソフトを使わないから。思い切って、フリーで加工できるものではなく、ちゃんとソフトを買った方が良いですよ。」
「なんかごちゃごちゃ機能があって、面倒なんだよ。そんなのいらねぇってものばっかで。」
検索でもしてみよう。清子は立ち上がって、自分のパソコンを再起動させようとした。そのとき、玄関のチャイムが鳴る。史が来たのかもしれない。
清子はそのパソコンをそのままに、玄関の方へ向かう。
「はい。」
ドアを開けるとやはり史がそこにいた。手にはスーツケースがある。
「やぁ。」
「史。」
すると史は玄関先にあるスニーカーを見て、少し表情を変えた。
「まだ久住がいるの?」
「今パソコン関係のごたごたが終わったんです。」
「結構長かったね。」
「使うと言っていた割には、メンテナンスを全くしていなかったからですね。」
そう言って、史は部屋の中にあがっていく。すると晶は自分のノートパソコンをシャットダウンさせているところだった。
「久住。」
「悪いね、編集長。ちょっと清子を借りた。」
「別に良いけどさ。パソコンなんて画像編集に使うだけだろう?会社のパソコンでは出来ないのか?」
「別部署のとごっちゃにしたくねぇから。」
晶はそう言ってノートパソコンの電源が切れたのを見て、画面を閉じる。
「悪いな、清子。お前の仕事の時間無くなっただろ?」
「あとのソフトはどうしますか?」
「ま、それはこっちで探すわ。検索くらいなら俺でも出来るし。」
「変なソフトを入れないでくださいね。それから、ソフトによってはセキュリティが反応する場合もあります。そういったものは入れない方が良いですけど。」
「とりあえずのソフトを入れるわ。それからまた今度、有料のヤツでも教えてくれよ。」
今教えようと思えば教えることは出来るのだろうが、それを今しなかったのは史に遠慮したからだろう。
「それにしても編集長、引っ越ししてきたみたいな荷物だな。」
「ん?そうだな。しばらくここに居させてもらおうと思ってね。」
その言葉に清子は驚いたように史を見た。
「は?聞いてませんけど。」
「今初めて言った。これからうちの部署もだけど、他の部署も年末にかけて忙しくなるからね。家に帰れない日も続く。それだったら、家が少しでも近い方が良いかと思ってね。」
理由はわかった。だが相談もなしにされるのは、清子にとっても気分が良いものではない。
「……困るんですけど。」
「帰らない日もあると言ったよね。それにこの時期だけだ。」
「……。」
確かに今日、ここに来ないかと言ったのは清子だ。だがそんな事まで許可はしていない。
「編集長って割と勝手だよな。俺もそんな事をされたら、いらつくかも。」
バッグの中にノートパソコンを入れると、晶は立ち上がろうとした。だがそれを史が止めるように、晶の胸ぐらをつかむ。
「お前のやってることよりはましだろ?」
すると清子は焦ったように、史を止めた。
「やめてください。こんなところで。」
「お前が何をしているのか、聞いたから。」
まずい。手を出されたことがばれたのだろうか。自然と晶の視線が泳ぐ。
「お前、裏のパッケージもとってるだろ?」
「は?」
違う話だった。清子も晶も少しほっとした。
「裏?」
「インディーズのヤツ。藍子さんの店に行ったとき聞いた。お前のとったヤツは、ジャケ買いされるって。」
「……。」
藍子の店に行ったとき、史の耳元で藍子が言っていたのはその話だったのか。
「副職禁止は聞いているだろう?」
「知ってるよ。でも金がいるんだ。」
晶はそういって史の手を振り払う。
「金?ボーナスは出たばかりだろう?」
「あー。ちょっと物入りでさ。」
弟のことは言いたくないのだろう。確かに気分の良い話ではない。他人にあれこれ話せるようなことでもないのだから。
「久住。前から言っているが、お前はうちの会社に縛られることを嫌がっているんだろう?」
「んなことねぇよ。フリーよりよっぽどいいじゃん。保証もある。保険もある。あるある尽くし。」
「でも自由はなくなった。」
「……。」
史はスーツケースを置くと、ベッドに腰掛ける。
「確かに別部署にヘルプという形で撮影に行けば、それだけの実入りはあるだろう。だからうちの会社は副職は禁止なんだ。」
ライターもカメラマンも編集作業をしている人たちも、それはみんなに言えることだった。
使える人というのは少ない。だから、魅力的な文章を書ける人、引き込まれる写真を撮れる人というのは、別部署に呼ばれて仕事をすることがある。そしてその分「出張料」として、給料に色がつくようになっていた。
給料が多く欲しければ、実力を付けろ。それを導入したのは、今の社長だった。
「お前がそんな事をしてたら、示しがつかない。」
「わかってるよ。そんな事。」
「わかってない。だから裏のパッケージの仕事なんかも取るんだろう。それに……裏はやばいヤツも多いの知ってるのか。」
「ヤクザみたいな、チンピラみたいな、半グレみたいな奴らだろ?」
「あぁ。」
最低限のつきあいしかねぇよ。だから、メッセージもパソコン上でしかしない。フリーで取れるアドレスでしか取らないし。
結構危ない橋を渡っているな。清子はそう思いながら、ヒヤヒヤして晶を見ていた。
「だとしたら……よくウィルスに感染しなかったですね。」
「え?」
清子はその晶の手に握られているパソコンを見て、ため息をつく。
「ウィルスに感染させようとしているのは、そういった人たちばかりですから。もしかしたら……もし、これから以降、久住さんにお金の支払いをされなくなって請求すると、感染させようとしているのかもしれません。」
「……。」
「またはもうお金が必要なくなって、彼らとの繋がりを絶とうとしたときとか。」
すると晶は少し青ざめて言う。
「だとしたら……泳がされているだけか。」
「そうかもしれません。でも……今は必要なんですよね。」
「金か?あぁ。」
清子も知っていることなのか。史はぎゅっと自分の手を握る。
「……私はその辺は詳しくないので、何かあったときは我孫子さんに相談すると良いかもしれません。」
「我孫子?あぁ。あのお前の師匠みたいなヤツか。」
「良い弁護士を紹介してくれます。」
「金がかかるじゃん。」
また金か。何をそんなに必要なのだろう。思えば、晶は必要以上に稼いでいる気がする。何がそんなに必要なのだろう。
「相談だけなら無料ですし、それから契約書はプリントアウトしておくか、別の媒体に保存しておいた方が良いですね。」
「あぁ。そうする。じゃあ悪いな。邪魔した。」
晶はそういって今度こそ、部屋を出ていこうとした。そのとき史が立ち上がって、晶に言う。
「久住。あまり清子に頼るなよ。」
「わかってるって。でも今日は助かった。」
晶はそういって玄関を出て行った。ドアが閉まり、清子はリビングへ戻ろうとした。そのとき、急に手を引かれた。
「え?」
視線の先には史がいる。史は素早く清子を引き寄せると、ぐっと顔を持ち上げて、唇を重ねた。それはいきなり舌を入れられて、激しく、息をつかせないほどだった。
「や……史……何……ん……。」
頭を支えられて、何も言わせないようだった。そのまま、史はセーターの中に手を入れる。
「デベロッパのアップデートが必要ですが、もう開発は終わっているみたいなので機動は無理です。」
「えー?マジか。」
「似たようなアプリを入れたらどうですか。画像編集ですよね。」
「コレ使いやすかったんだよ。」
そう言って晶は清子に近づいてパソコンの画面を見る。
「似たようなものが良いなら、他のものを検索しましょうか。」
「ある?そんなの。」
「さぁ……調べてみないと。あまり私もこういうソフトを使わないから。思い切って、フリーで加工できるものではなく、ちゃんとソフトを買った方が良いですよ。」
「なんかごちゃごちゃ機能があって、面倒なんだよ。そんなのいらねぇってものばっかで。」
検索でもしてみよう。清子は立ち上がって、自分のパソコンを再起動させようとした。そのとき、玄関のチャイムが鳴る。史が来たのかもしれない。
清子はそのパソコンをそのままに、玄関の方へ向かう。
「はい。」
ドアを開けるとやはり史がそこにいた。手にはスーツケースがある。
「やぁ。」
「史。」
すると史は玄関先にあるスニーカーを見て、少し表情を変えた。
「まだ久住がいるの?」
「今パソコン関係のごたごたが終わったんです。」
「結構長かったね。」
「使うと言っていた割には、メンテナンスを全くしていなかったからですね。」
そう言って、史は部屋の中にあがっていく。すると晶は自分のノートパソコンをシャットダウンさせているところだった。
「久住。」
「悪いね、編集長。ちょっと清子を借りた。」
「別に良いけどさ。パソコンなんて画像編集に使うだけだろう?会社のパソコンでは出来ないのか?」
「別部署のとごっちゃにしたくねぇから。」
晶はそう言ってノートパソコンの電源が切れたのを見て、画面を閉じる。
「悪いな、清子。お前の仕事の時間無くなっただろ?」
「あとのソフトはどうしますか?」
「ま、それはこっちで探すわ。検索くらいなら俺でも出来るし。」
「変なソフトを入れないでくださいね。それから、ソフトによってはセキュリティが反応する場合もあります。そういったものは入れない方が良いですけど。」
「とりあえずのソフトを入れるわ。それからまた今度、有料のヤツでも教えてくれよ。」
今教えようと思えば教えることは出来るのだろうが、それを今しなかったのは史に遠慮したからだろう。
「それにしても編集長、引っ越ししてきたみたいな荷物だな。」
「ん?そうだな。しばらくここに居させてもらおうと思ってね。」
その言葉に清子は驚いたように史を見た。
「は?聞いてませんけど。」
「今初めて言った。これからうちの部署もだけど、他の部署も年末にかけて忙しくなるからね。家に帰れない日も続く。それだったら、家が少しでも近い方が良いかと思ってね。」
理由はわかった。だが相談もなしにされるのは、清子にとっても気分が良いものではない。
「……困るんですけど。」
「帰らない日もあると言ったよね。それにこの時期だけだ。」
「……。」
確かに今日、ここに来ないかと言ったのは清子だ。だがそんな事まで許可はしていない。
「編集長って割と勝手だよな。俺もそんな事をされたら、いらつくかも。」
バッグの中にノートパソコンを入れると、晶は立ち上がろうとした。だがそれを史が止めるように、晶の胸ぐらをつかむ。
「お前のやってることよりはましだろ?」
すると清子は焦ったように、史を止めた。
「やめてください。こんなところで。」
「お前が何をしているのか、聞いたから。」
まずい。手を出されたことがばれたのだろうか。自然と晶の視線が泳ぐ。
「お前、裏のパッケージもとってるだろ?」
「は?」
違う話だった。清子も晶も少しほっとした。
「裏?」
「インディーズのヤツ。藍子さんの店に行ったとき聞いた。お前のとったヤツは、ジャケ買いされるって。」
「……。」
藍子の店に行ったとき、史の耳元で藍子が言っていたのはその話だったのか。
「副職禁止は聞いているだろう?」
「知ってるよ。でも金がいるんだ。」
晶はそういって史の手を振り払う。
「金?ボーナスは出たばかりだろう?」
「あー。ちょっと物入りでさ。」
弟のことは言いたくないのだろう。確かに気分の良い話ではない。他人にあれこれ話せるようなことでもないのだから。
「久住。前から言っているが、お前はうちの会社に縛られることを嫌がっているんだろう?」
「んなことねぇよ。フリーよりよっぽどいいじゃん。保証もある。保険もある。あるある尽くし。」
「でも自由はなくなった。」
「……。」
史はスーツケースを置くと、ベッドに腰掛ける。
「確かに別部署にヘルプという形で撮影に行けば、それだけの実入りはあるだろう。だからうちの会社は副職は禁止なんだ。」
ライターもカメラマンも編集作業をしている人たちも、それはみんなに言えることだった。
使える人というのは少ない。だから、魅力的な文章を書ける人、引き込まれる写真を撮れる人というのは、別部署に呼ばれて仕事をすることがある。そしてその分「出張料」として、給料に色がつくようになっていた。
給料が多く欲しければ、実力を付けろ。それを導入したのは、今の社長だった。
「お前がそんな事をしてたら、示しがつかない。」
「わかってるよ。そんな事。」
「わかってない。だから裏のパッケージの仕事なんかも取るんだろう。それに……裏はやばいヤツも多いの知ってるのか。」
「ヤクザみたいな、チンピラみたいな、半グレみたいな奴らだろ?」
「あぁ。」
最低限のつきあいしかねぇよ。だから、メッセージもパソコン上でしかしない。フリーで取れるアドレスでしか取らないし。
結構危ない橋を渡っているな。清子はそう思いながら、ヒヤヒヤして晶を見ていた。
「だとしたら……よくウィルスに感染しなかったですね。」
「え?」
清子はその晶の手に握られているパソコンを見て、ため息をつく。
「ウィルスに感染させようとしているのは、そういった人たちばかりですから。もしかしたら……もし、これから以降、久住さんにお金の支払いをされなくなって請求すると、感染させようとしているのかもしれません。」
「……。」
「またはもうお金が必要なくなって、彼らとの繋がりを絶とうとしたときとか。」
すると晶は少し青ざめて言う。
「だとしたら……泳がされているだけか。」
「そうかもしれません。でも……今は必要なんですよね。」
「金か?あぁ。」
清子も知っていることなのか。史はぎゅっと自分の手を握る。
「……私はその辺は詳しくないので、何かあったときは我孫子さんに相談すると良いかもしれません。」
「我孫子?あぁ。あのお前の師匠みたいなヤツか。」
「良い弁護士を紹介してくれます。」
「金がかかるじゃん。」
また金か。何をそんなに必要なのだろう。思えば、晶は必要以上に稼いでいる気がする。何がそんなに必要なのだろう。
「相談だけなら無料ですし、それから契約書はプリントアウトしておくか、別の媒体に保存しておいた方が良いですね。」
「あぁ。そうする。じゃあ悪いな。邪魔した。」
晶はそういって今度こそ、部屋を出ていこうとした。そのとき史が立ち上がって、晶に言う。
「久住。あまり清子に頼るなよ。」
「わかってるって。でも今日は助かった。」
晶はそういって玄関を出て行った。ドアが閉まり、清子はリビングへ戻ろうとした。そのとき、急に手を引かれた。
「え?」
視線の先には史がいる。史は素早く清子を引き寄せると、ぐっと顔を持ち上げて、唇を重ねた。それはいきなり舌を入れられて、激しく、息をつかせないほどだった。
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