203 / 289
プロポーズ
202
しおりを挟む
我孫子が言うだけあり、焼き物も和え物の一手間も店でしか食べれないようなものばかりだ。それに見た目がとてもいい店で、それなのにあまり高くはない。
「ここ、行きつけにしたいな。」
晶はそういって少し笑っていた。久しぶりの酒だから気分が良いのだろう。
「俺、タクシーで帰るわ。徳成はどうする?」
腕時計で時間を確認する。それも史から貰ったもので、クリスマスに用意していたようなのだが貰ったのは最近の話だ。
「まだ時間はありそうなので、今日は電車で帰ります。」
「お前全然酔わないな。ちょっとは酔ったふりなんかした方が可愛げがあるのに。」
「必要ありませんよ。」
そう言いながら大通りにでる。そしてやってきたタクシーに我孫子は乗り込もうとした。そのとき清子にふと視線を送る。
「徳成。気をつけてな。」
晶が清子を想っているのはばればれだ。何かあれば連れ込もうとしているのだろう。だから注意をした。二股は絶対ばれる。だから我孫子も今の妻と結婚してから女遊びはしない。史のことが本気なら、浮気は清子の本意ではないと思う。強引に言い寄っているだけだ。
去っていくタクシーを見て、清子も晶の方を向いた。
「じゃあ、私も帰ります。パソコンは来ているのでしょう?」
「あぁ。でも軌道はさせてない。前のアカウントのパスワードを忘れてて、パソコン上のデーターをもって来れないから。」
「オフィスでも出来ますよ。それでデーターが壊れてないかチェックしてください。ファイル上は普通でも壊れてて開けないこともありますから。」
「それを復元することは?」
「出来ないことはないですけど……。」
「例のデーターが壊れてたら困る。」
そこまでして大事にしたいものとは何なのだろう。
「何なんですか。そのデーターって。」
その言葉に清子は驚いて晶を見た。そして言葉に詰まる。
いつか来たときは、史と一緒だった。だから気が楽だったのかもしれない。だが今は二人きりだ。気を抜かないようにしないと。
清子はそう思いながらテーブルの上にあるパソコンにコードを繋げると起動させた。真新しいパソコンは、以前に見た晶のパソコンの後継機で、画像もかなりクリアになっている。その分、あまり見ていると目が疲れるだろう。ブルーライトが遮断できる眼鏡でもあればいいと思う。
アカウントのパスワードを忘れたという事で、本社に問い合わせる。するとすぐに個人情報を入れるサイトに飛んだ。
「住所なんかは一緒ですか?」
「違うな。前に借りてたぼろ屋の住所だ。」
ここよりもぼろかったのか。そう思いながら、その席を譲ると晶に住所を打ち込ませた。それから電話番号などを入れると、晶の携帯電話にメッセージが届いた。それをチェックすると、晶は少し笑った。
「そうだったわ。パスこれにしてたんだっけ。」
最初の画面に戻り、そのパスワードを打ち込むと無事に起動した。前に見た画像のままだ。
そしてそのパソコンに、コピーしたハードディスクを繋げる。するとすぐにハードディスクは起動して、無数のファイルが映し出された。
「例のファイルはどれですか?」
「一番前だ。」
一番上にあるファイルを開く。そこには二枚の写真があった。一枚目は、祖母と知らない男の写真。若い頃のようで、祖母が見たこと無いような女の表情をしている。
「……始めて見ました。こんな写真。」
「うちの祖母さんが死んだとき、遺品整理してたら出てきたんだよ。スキャンして取り込んでおいて良かった。」
男は祖母よりも若く見える。丸刈りにしていて、くわえ煙草をしていた。意志の強そうな顔をしている。何かの職人だろうか。
清子はその手元を拡大してみた。するとその手元には昔の煙草のパッケージとジッポーが握られている。
「……誰なんでしょうね。」
「さぁな。これ以外に何も情報はないしわかんね。」
そしてもう一枚の写真を出す。そこには三人の男が写っていた。真ん中の男だけ見覚えがある。史の実家へ行ったときに見せてくれた卒業アルバム。その中の省吾の姿だった。と言うことはこの両側の男二人がそれぞれ、長男と三男だろう。長男は体が大きいが、少し太っているように見える。そして三男は、省吾のような軟派さはなく真面目に見えるがその分冷たく感じる。だが顔立ちは悪くないし、今だったらモデルにでもなりそうなくらいすらっとしている。
そうか。この三男が、一枚目の男に一番似ていたのだ。
「……こいつが父親か?」
「たぶん。」
「似てるな。お前に。」
「そうですか?この人、相当男前ですよ。」
「お前も相当美人だって。」
「それはどうも。」
普通の女ならここで顔を赤らませるのだろうが、清子は全く相手にしていないように見える。それよりも初めて見る父親の顔に戸惑いを隠せないようだった。
「調べられないか。」
「顔写真だけではさすがに……それに、これ三十年以上前ですよ。」
「さすがに顔立ちも変わってるな。」
この省吾は、おそらく学生服を着ているところを見ると中学生くらいだろう。父親はその下だとしたら、十歳かそれ以上くらいだ。それにしても相当大人びている。
「それにしても役者っぽい顔立ちしているな。子役とかアイドルとかにいそうな感じ。」
「そんなものですかね。」
やはり写真だけではわからない。清子はあきらめて、パソコンをシャットダウンしようとした。それを晶が止める。
「何?」
すると晶は閉じたファイルをまた起動させる。そして一つのファイルを起動させる。
「良かった。こっちも壊れてなかったな。」
世界を回っていたときの写真だろう。
どこまでも続く砂漠、珊瑚礁の海、すべてが氷で覆われた街。そしてその中に住む人たち。
ふと晶は一つのファイルをクリックする。そこには見事な刺繍の服を着た女性が写っていた。
「ここら変の奴らは写真に写るのも嫌がるんだ。髪を写されたくないって。」
「どうしてですか?」
「髪は、旦那とか子供くらいしか見せないのがマナーなんだよ。顔を映さないところもあった。刺繍を撮させてほしいと言ったら、やっと撮させてくれた。」
きっと手縫いなのだろう。一針一針その模様に意味がある。
「刺繍の模様に意味があるんですか。」
「子供は特にな。大人になれるのも相当少ない。だから刺繍をすれば、魔除けになるんだと。」
「そんなものなんですね。」
「でも最近は、ここの地域もインターネットが繋がる。だから尊がやってきてたんだ。ブログにあげるんだと。」
「ブログ?」
「人気あったみたいだな。」
それだけの収入で世界を回れたのだ。確かに腕はあったのだろう。
「俺さ……辞めたいって言ったんだ。編集長に。」
「え?」
「今度は人を撮したいと思った。もっと日常のさ、生活をしている人たちの記録を撮りたい。そう思ってたんだけどな。」
事故をして身にしみた。保証がないと言うのは、厳しいものがある。もし今フリーでこんな事故をしていたら、一気に収入がゼロになる。そうなれば、清子を嫁に貰いたいとも言えない。
「歳を取れば臆病になるよな。それから……守りたいものがあれば尚更だ。」
そういって晶は清子をみる。その視線に心を揺らがされてはいけない。清子はそう思いながら、視線を逸らした。
「そうですか。」
もう我慢できない。その指にはめられた指輪も、時計も、すべて外して自分のものにしたい。
「清子。俺と一緒にならないか。」
パソコンから手を離して、清子の手に手を重ねる。
「……駄目です。私には……。」
「編集長と居てもお前がお前じゃなくなる。そんなの望んでたのか。お前はお前の道を歩くんじゃないのか。」
清子はその手を振り払い、晶をみる。
「私は……。」
「あいつがお前を想っているんじゃない。俺……。」
いつか史が言っていた。これを言うのは卑怯だと思う。だが、言わないといけない。
「お前を手に入れたのは、社長に言われたからだ。AV男優だったから、それくらい出来るだろうって。お前は全く男になれてない。だから、編集長くらいなら……。」
「違う!」
認めたくなかった。だが晶はその手をまた握ると、清子の体を抱き寄せた。だがその不安が、徐々にまた大きくなる。そしてその不安が、晶の手を振り払えなかった。
「ここ、行きつけにしたいな。」
晶はそういって少し笑っていた。久しぶりの酒だから気分が良いのだろう。
「俺、タクシーで帰るわ。徳成はどうする?」
腕時計で時間を確認する。それも史から貰ったもので、クリスマスに用意していたようなのだが貰ったのは最近の話だ。
「まだ時間はありそうなので、今日は電車で帰ります。」
「お前全然酔わないな。ちょっとは酔ったふりなんかした方が可愛げがあるのに。」
「必要ありませんよ。」
そう言いながら大通りにでる。そしてやってきたタクシーに我孫子は乗り込もうとした。そのとき清子にふと視線を送る。
「徳成。気をつけてな。」
晶が清子を想っているのはばればれだ。何かあれば連れ込もうとしているのだろう。だから注意をした。二股は絶対ばれる。だから我孫子も今の妻と結婚してから女遊びはしない。史のことが本気なら、浮気は清子の本意ではないと思う。強引に言い寄っているだけだ。
去っていくタクシーを見て、清子も晶の方を向いた。
「じゃあ、私も帰ります。パソコンは来ているのでしょう?」
「あぁ。でも軌道はさせてない。前のアカウントのパスワードを忘れてて、パソコン上のデーターをもって来れないから。」
「オフィスでも出来ますよ。それでデーターが壊れてないかチェックしてください。ファイル上は普通でも壊れてて開けないこともありますから。」
「それを復元することは?」
「出来ないことはないですけど……。」
「例のデーターが壊れてたら困る。」
そこまでして大事にしたいものとは何なのだろう。
「何なんですか。そのデーターって。」
その言葉に清子は驚いて晶を見た。そして言葉に詰まる。
いつか来たときは、史と一緒だった。だから気が楽だったのかもしれない。だが今は二人きりだ。気を抜かないようにしないと。
清子はそう思いながらテーブルの上にあるパソコンにコードを繋げると起動させた。真新しいパソコンは、以前に見た晶のパソコンの後継機で、画像もかなりクリアになっている。その分、あまり見ていると目が疲れるだろう。ブルーライトが遮断できる眼鏡でもあればいいと思う。
アカウントのパスワードを忘れたという事で、本社に問い合わせる。するとすぐに個人情報を入れるサイトに飛んだ。
「住所なんかは一緒ですか?」
「違うな。前に借りてたぼろ屋の住所だ。」
ここよりもぼろかったのか。そう思いながら、その席を譲ると晶に住所を打ち込ませた。それから電話番号などを入れると、晶の携帯電話にメッセージが届いた。それをチェックすると、晶は少し笑った。
「そうだったわ。パスこれにしてたんだっけ。」
最初の画面に戻り、そのパスワードを打ち込むと無事に起動した。前に見た画像のままだ。
そしてそのパソコンに、コピーしたハードディスクを繋げる。するとすぐにハードディスクは起動して、無数のファイルが映し出された。
「例のファイルはどれですか?」
「一番前だ。」
一番上にあるファイルを開く。そこには二枚の写真があった。一枚目は、祖母と知らない男の写真。若い頃のようで、祖母が見たこと無いような女の表情をしている。
「……始めて見ました。こんな写真。」
「うちの祖母さんが死んだとき、遺品整理してたら出てきたんだよ。スキャンして取り込んでおいて良かった。」
男は祖母よりも若く見える。丸刈りにしていて、くわえ煙草をしていた。意志の強そうな顔をしている。何かの職人だろうか。
清子はその手元を拡大してみた。するとその手元には昔の煙草のパッケージとジッポーが握られている。
「……誰なんでしょうね。」
「さぁな。これ以外に何も情報はないしわかんね。」
そしてもう一枚の写真を出す。そこには三人の男が写っていた。真ん中の男だけ見覚えがある。史の実家へ行ったときに見せてくれた卒業アルバム。その中の省吾の姿だった。と言うことはこの両側の男二人がそれぞれ、長男と三男だろう。長男は体が大きいが、少し太っているように見える。そして三男は、省吾のような軟派さはなく真面目に見えるがその分冷たく感じる。だが顔立ちは悪くないし、今だったらモデルにでもなりそうなくらいすらっとしている。
そうか。この三男が、一枚目の男に一番似ていたのだ。
「……こいつが父親か?」
「たぶん。」
「似てるな。お前に。」
「そうですか?この人、相当男前ですよ。」
「お前も相当美人だって。」
「それはどうも。」
普通の女ならここで顔を赤らませるのだろうが、清子は全く相手にしていないように見える。それよりも初めて見る父親の顔に戸惑いを隠せないようだった。
「調べられないか。」
「顔写真だけではさすがに……それに、これ三十年以上前ですよ。」
「さすがに顔立ちも変わってるな。」
この省吾は、おそらく学生服を着ているところを見ると中学生くらいだろう。父親はその下だとしたら、十歳かそれ以上くらいだ。それにしても相当大人びている。
「それにしても役者っぽい顔立ちしているな。子役とかアイドルとかにいそうな感じ。」
「そんなものですかね。」
やはり写真だけではわからない。清子はあきらめて、パソコンをシャットダウンしようとした。それを晶が止める。
「何?」
すると晶は閉じたファイルをまた起動させる。そして一つのファイルを起動させる。
「良かった。こっちも壊れてなかったな。」
世界を回っていたときの写真だろう。
どこまでも続く砂漠、珊瑚礁の海、すべてが氷で覆われた街。そしてその中に住む人たち。
ふと晶は一つのファイルをクリックする。そこには見事な刺繍の服を着た女性が写っていた。
「ここら変の奴らは写真に写るのも嫌がるんだ。髪を写されたくないって。」
「どうしてですか?」
「髪は、旦那とか子供くらいしか見せないのがマナーなんだよ。顔を映さないところもあった。刺繍を撮させてほしいと言ったら、やっと撮させてくれた。」
きっと手縫いなのだろう。一針一針その模様に意味がある。
「刺繍の模様に意味があるんですか。」
「子供は特にな。大人になれるのも相当少ない。だから刺繍をすれば、魔除けになるんだと。」
「そんなものなんですね。」
「でも最近は、ここの地域もインターネットが繋がる。だから尊がやってきてたんだ。ブログにあげるんだと。」
「ブログ?」
「人気あったみたいだな。」
それだけの収入で世界を回れたのだ。確かに腕はあったのだろう。
「俺さ……辞めたいって言ったんだ。編集長に。」
「え?」
「今度は人を撮したいと思った。もっと日常のさ、生活をしている人たちの記録を撮りたい。そう思ってたんだけどな。」
事故をして身にしみた。保証がないと言うのは、厳しいものがある。もし今フリーでこんな事故をしていたら、一気に収入がゼロになる。そうなれば、清子を嫁に貰いたいとも言えない。
「歳を取れば臆病になるよな。それから……守りたいものがあれば尚更だ。」
そういって晶は清子をみる。その視線に心を揺らがされてはいけない。清子はそう思いながら、視線を逸らした。
「そうですか。」
もう我慢できない。その指にはめられた指輪も、時計も、すべて外して自分のものにしたい。
「清子。俺と一緒にならないか。」
パソコンから手を離して、清子の手に手を重ねる。
「……駄目です。私には……。」
「編集長と居てもお前がお前じゃなくなる。そんなの望んでたのか。お前はお前の道を歩くんじゃないのか。」
清子はその手を振り払い、晶をみる。
「私は……。」
「あいつがお前を想っているんじゃない。俺……。」
いつか史が言っていた。これを言うのは卑怯だと思う。だが、言わないといけない。
「お前を手に入れたのは、社長に言われたからだ。AV男優だったから、それくらい出来るだろうって。お前は全く男になれてない。だから、編集長くらいなら……。」
「違う!」
認めたくなかった。だが晶はその手をまた握ると、清子の体を抱き寄せた。だがその不安が、徐々にまた大きくなる。そしてその不安が、晶の手を振り払えなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる