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セックスしたい相手
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部屋には桂の他には誰もいなかった。春川は、ソファの上に置いてあったタブレットを手にする。
「あー良かった。これないと仕事になんなくて。」
「どっちのですか?」
桂はそういってうがい薬をしまおうとした。
「記事のほうです。あ、うがい薬。私にももらえませんか。」
「えぇ。どうぞ。」
「何か喉がいがいがして。」
そういって彼女はそれを手に、洗面所へ向かった。そしてうがいを済ませるとまた部屋に戻る。桂はまだ半裸のまま、写真を見ているようだった。
「……着替えないんですか?」
そういってうがい薬を手渡す。すると彼は少し微笑み、彼女の手を引こうとした。しかし左手のその指輪が目に映り、手を引っ込める。
「シャワー浴びてから。何かべとべとするんで。」
「べとべと?何か、撮影の時はぬるぬるって感じだったけど。」
「ぬるぬる?」
「うん。何か全体的に二人ともぬめっとしてるなって。ほら、潮吹きなんて、初めて見たし。」
「他人のセックス自体が初めてでしょう?」
「まぁね。あまりまじまじと見たことはありませんよ。」
すると彼は彼女の手を引くと、自分の体に手を押し当てた。
「ほら。べとべとしてる。」
これで普通の女だったら頬を赤らめるだろう。そして彼を見上げて、それを待つはずだ。そう思っていたのに、彼女は目を見開いてその体にさらに触れてくる。
「マジだ。べとべとしてる。ヤル前にも触っておけば良かった。今日ローション使わなかったのに何で?これって体液?体液だけでこうなるんですか?」
興味津々といった感じで、彼女はさらに触れてくる。それはさながらただの興味の対象だった。彼は少しため息を付くと、触れたいように触れさせる。
「汗もあるんでしょう。スル前も気になるんだったら、また来れば良いし。嵐さんなら、また見せてくれるでしょ。」
「それに暑かったですものね。女性もそうなってるんですか?」
「えぇ。多分ね。」
「いいネタが出来ました。ありがとうございます。」
そういって彼女は手を引っ込めた。
「不感症なんですか?」
「えぇ。そうなるべくしてなったというか……。」
「え?」
僅かに彼女の笑顔が消えた。だがすぐ笑顔になる。
「まぁ、プライベートなことなんで。」
そのとき彼女の携帯電話がなる。今時珍しいが、ガラケーだった。
「やばい。編集者からだ。もしもし。」
電話を始める彼女。もう彼のことなど眼中にないように見える。そして電話を切ると、彼女はため息を付いた。
「どっかカフェとかないですかね。」
「え?」
「原稿、今日までにアップして欲しいって言われて。」
「だったら今日まだ時間あるし、ここでしたらどうですか。」
「え?いいんですか?」
彼女にとっては思わぬ言葉で嬉しい言葉だった。うるさいカフェなんかで仕事をするより、邪魔の入らない空間で仕事をした方が良いに決まっている。
彼の返事を聞かないまま、彼女はソファの上に座るとさっきしまったタブレットをバッグから取り出した。そしてそれにつなぐように携帯型のキーボードを取り出す。
眼鏡をかけると、かたかたと音を立てて文字の入力を始めた。こうなると周りは見えないらしい。
彼女は、何も思わなかったのだろうか。他の女と寝ても何も思わず、何も感じなかったのだろうか。それだけ彼のことなど眼中にないのだろうか。
彼はモヤモヤした気持ちのままタオルを手にして、部屋の外にでる。
「あー桂さん。」
「何?」
スタッフから声をかけられて、彼は振り返る。その表情に彼は少し顔を強張らせた。
「シャワー浴びたら監督が来てくれって。」
その言葉に、やっと冷静になれた。いつもの彼に戻る。
「OK。あ、この部屋、ライターがまだいるから。」
「春川さん。まだいるんですか。」
「今日中に仕上げて欲しいってさ。今日の原稿。まだ時間あるだろ?」
「今日この一本だけなんでいいですけど。癖になったら困るんですよ。」
「なんねぇよ。どうせ嵐さんのことだ。あのライター気に入ってるみたいだし、文句言わねぇと思うけど。」
そういって彼はタオルを手に、バスルームへ向かった。
部屋に戻ってくると、春川はまだ原稿を書いていた。桂が入ってきても気が付いていない。
彼はバスローブを脱ぐと、着てきたシャツとジーパンに身を包んだ。そしてその向かいに座る。いつ気が付くだろう。そう思いながら彼女を見ていた。
だが五分たち、十分たち、彼女の手は止まることはない。やがて彼は目を閉じた。
ふっと目を開けると、春川の姿がなかった。荷物はあるがどこへ行ったのだろう。
「あ、何か寝てるみたいです。」
「起こしてくださいよー。監督に来てくれって言われてんのに、まだ来ないから何してんだって言われてるんです。」
「OK。OK。力ずくで起こします。」
入り口で彼女が笑っている。やばい。いつの間にか眠っていたようだ。
「……。」
力ずくというのが気になったが、少し寝たふりをすることにした。しばらくして、ドアが閉まる音がする。そして足音。彼女のものだ。
そして彼女の手の感触が肩に伝わる。
「起きてください。桂さん。」
体を揺する感触。それが心地よかった。こうして起こしてもらうのは、久しぶりだったから。
「桂さん。」
両肩を捕まれて、うつむいていた顔を正面に向かされた。薄く目を開けると、彼女の微笑んだ顔が見えてきた。思ったよりも近い。
「起きた。監督さんが呼んでますよ。」
すると彼女はその手を避けようとしたときだった。彼はその手を掴んだ。柔らかい手だった。
「何?」
「起こしてくれません?足がしびれた。」
「変な格好で寝てるからですよ。」
呆れたように彼女はその手を引いてくれた。
「ありがとう。」
「いいえ。こちらこそ。原稿が仕上がったし、次作のプロットまで仕上がりそうな勢いだったので。」
「へぇ。よっぽど環境が良かったのかな。」
「やっぱり誰かいれば、はかどりますね。人の寝息って落ち着くし。」
彼女はそういって笑う。
「桂さん。」
外から声が聞こえる。
「私、このまま帰ります。」
「そう。あの……春川さん。」
「はい?」
「……連絡先を教えてくれませんか。」
その言葉に彼女は意地悪そうに笑った。
「人妻の連絡先を聞いて何するんですか。やだなぁ。」
「……いいじゃないですか。今日仕事はかどったんでしょ?」
「それはそうですけど。まぁまた会うときがあったら。そのとき教えますから。」
彼女はそういって荷物をまとめ始める。
「あー良かった。これないと仕事になんなくて。」
「どっちのですか?」
桂はそういってうがい薬をしまおうとした。
「記事のほうです。あ、うがい薬。私にももらえませんか。」
「えぇ。どうぞ。」
「何か喉がいがいがして。」
そういって彼女はそれを手に、洗面所へ向かった。そしてうがいを済ませるとまた部屋に戻る。桂はまだ半裸のまま、写真を見ているようだった。
「……着替えないんですか?」
そういってうがい薬を手渡す。すると彼は少し微笑み、彼女の手を引こうとした。しかし左手のその指輪が目に映り、手を引っ込める。
「シャワー浴びてから。何かべとべとするんで。」
「べとべと?何か、撮影の時はぬるぬるって感じだったけど。」
「ぬるぬる?」
「うん。何か全体的に二人ともぬめっとしてるなって。ほら、潮吹きなんて、初めて見たし。」
「他人のセックス自体が初めてでしょう?」
「まぁね。あまりまじまじと見たことはありませんよ。」
すると彼は彼女の手を引くと、自分の体に手を押し当てた。
「ほら。べとべとしてる。」
これで普通の女だったら頬を赤らめるだろう。そして彼を見上げて、それを待つはずだ。そう思っていたのに、彼女は目を見開いてその体にさらに触れてくる。
「マジだ。べとべとしてる。ヤル前にも触っておけば良かった。今日ローション使わなかったのに何で?これって体液?体液だけでこうなるんですか?」
興味津々といった感じで、彼女はさらに触れてくる。それはさながらただの興味の対象だった。彼は少しため息を付くと、触れたいように触れさせる。
「汗もあるんでしょう。スル前も気になるんだったら、また来れば良いし。嵐さんなら、また見せてくれるでしょ。」
「それに暑かったですものね。女性もそうなってるんですか?」
「えぇ。多分ね。」
「いいネタが出来ました。ありがとうございます。」
そういって彼女は手を引っ込めた。
「不感症なんですか?」
「えぇ。そうなるべくしてなったというか……。」
「え?」
僅かに彼女の笑顔が消えた。だがすぐ笑顔になる。
「まぁ、プライベートなことなんで。」
そのとき彼女の携帯電話がなる。今時珍しいが、ガラケーだった。
「やばい。編集者からだ。もしもし。」
電話を始める彼女。もう彼のことなど眼中にないように見える。そして電話を切ると、彼女はため息を付いた。
「どっかカフェとかないですかね。」
「え?」
「原稿、今日までにアップして欲しいって言われて。」
「だったら今日まだ時間あるし、ここでしたらどうですか。」
「え?いいんですか?」
彼女にとっては思わぬ言葉で嬉しい言葉だった。うるさいカフェなんかで仕事をするより、邪魔の入らない空間で仕事をした方が良いに決まっている。
彼の返事を聞かないまま、彼女はソファの上に座るとさっきしまったタブレットをバッグから取り出した。そしてそれにつなぐように携帯型のキーボードを取り出す。
眼鏡をかけると、かたかたと音を立てて文字の入力を始めた。こうなると周りは見えないらしい。
彼女は、何も思わなかったのだろうか。他の女と寝ても何も思わず、何も感じなかったのだろうか。それだけ彼のことなど眼中にないのだろうか。
彼はモヤモヤした気持ちのままタオルを手にして、部屋の外にでる。
「あー桂さん。」
「何?」
スタッフから声をかけられて、彼は振り返る。その表情に彼は少し顔を強張らせた。
「シャワー浴びたら監督が来てくれって。」
その言葉に、やっと冷静になれた。いつもの彼に戻る。
「OK。あ、この部屋、ライターがまだいるから。」
「春川さん。まだいるんですか。」
「今日中に仕上げて欲しいってさ。今日の原稿。まだ時間あるだろ?」
「今日この一本だけなんでいいですけど。癖になったら困るんですよ。」
「なんねぇよ。どうせ嵐さんのことだ。あのライター気に入ってるみたいだし、文句言わねぇと思うけど。」
そういって彼はタオルを手に、バスルームへ向かった。
部屋に戻ってくると、春川はまだ原稿を書いていた。桂が入ってきても気が付いていない。
彼はバスローブを脱ぐと、着てきたシャツとジーパンに身を包んだ。そしてその向かいに座る。いつ気が付くだろう。そう思いながら彼女を見ていた。
だが五分たち、十分たち、彼女の手は止まることはない。やがて彼は目を閉じた。
ふっと目を開けると、春川の姿がなかった。荷物はあるがどこへ行ったのだろう。
「あ、何か寝てるみたいです。」
「起こしてくださいよー。監督に来てくれって言われてんのに、まだ来ないから何してんだって言われてるんです。」
「OK。OK。力ずくで起こします。」
入り口で彼女が笑っている。やばい。いつの間にか眠っていたようだ。
「……。」
力ずくというのが気になったが、少し寝たふりをすることにした。しばらくして、ドアが閉まる音がする。そして足音。彼女のものだ。
そして彼女の手の感触が肩に伝わる。
「起きてください。桂さん。」
体を揺する感触。それが心地よかった。こうして起こしてもらうのは、久しぶりだったから。
「桂さん。」
両肩を捕まれて、うつむいていた顔を正面に向かされた。薄く目を開けると、彼女の微笑んだ顔が見えてきた。思ったよりも近い。
「起きた。監督さんが呼んでますよ。」
すると彼女はその手を避けようとしたときだった。彼はその手を掴んだ。柔らかい手だった。
「何?」
「起こしてくれません?足がしびれた。」
「変な格好で寝てるからですよ。」
呆れたように彼女はその手を引いてくれた。
「ありがとう。」
「いいえ。こちらこそ。原稿が仕上がったし、次作のプロットまで仕上がりそうな勢いだったので。」
「へぇ。よっぽど環境が良かったのかな。」
「やっぱり誰かいれば、はかどりますね。人の寝息って落ち着くし。」
彼女はそういって笑う。
「桂さん。」
外から声が聞こえる。
「私、このまま帰ります。」
「そう。あの……春川さん。」
「はい?」
「……連絡先を教えてくれませんか。」
その言葉に彼女は意地悪そうに笑った。
「人妻の連絡先を聞いて何するんですか。やだなぁ。」
「……いいじゃないですか。今日仕事はかどったんでしょ?」
「それはそうですけど。まぁまた会うときがあったら。そのとき教えますから。」
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