セックスの価値

神崎

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対面

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 有川が出ていったあと、春川は台所に立つ。明日は夜まで帰れないかもしれないと、明日まで持つようにひじきを煮たのだ。それに味がしみているかとチェックする。悪くないようだ。
「春。」
 祥吾は台所にやってくる。そして彼女を呼び止めた。
「何ですか?」
「食事はもう出来ているのだろう?」
「はい。」
「だったら、ちょっと来て。」
 彼女は火を止めて、彼のそばへ行く。すると彼は彼女の後ろ頭に手を添えると激しく口づけをした。思わず後ろにのけぞってしまう。
「ん……。ん……。」
 やっと唇を離されると、彼は彼女の体を抱きしめた。
「どうしたんですか?」
「やはり、彼とは何かあったのだろう?」
「え?彼?」
「桂さんだ。奴はちらちらと台所の君を見ていた。気になっていたのだろうね。」
「何度かお世話になったから、とは思いませんか?」
「それだけじゃないと思う。」
「根拠は?」
「ない。だがそんなもの必要かな。」
 彼は彼女を離すと、彼女を見据えた。
「……祥吾さん。桂さんとは何もありません。でもあなたがそれで疑心暗鬼になっているのであれば、私は何でも答えます。」
 体を開かないといけないだろう。彼女は彼の胸の中で、ぐっと覚悟を決めた。
「春。いい覚悟だ。では君からキスをして。」
 彼女は彼の首に手を回すと、彼の唇にキスをした。煙草の匂いが香る。桂とは違う。桂とは全く違うのだ。
「ん……。」
 唇を重ねていると、彼は彼女の胸に手を当ててきた。乳房を服越しから揉みしだいていく。啓治とは違う細い指だった。
「ん……。」
「震えているね。まだ怖いのか。」
「……怖い……。」
「彼はどんな風にして抱いたのかな。」
「抱かれてません。」
「そうか。だったら体に聞くしかないね。」
 シャツの中に手を入れてきた。キャミソールの中にも手を入れて、下着のホックを外してきた。肩に下着の紐が掛かっている状態のままだった。
 その中に手を入れて、直に乳房に触れる。若い肌だ。張りがあって、まだ垂れる様子はない。誰よりも可愛らしいと思う。乳房に触れる度に頬を赤く染めた。
「んっ……。」
「こんなに早く乳首が立つなんてね。慣らされているのかな。」
「そんなこと……。」
「春。嘘だよ。君が敏感なのは知っている。ただ君を抱かなかったのは、セックスの度に君が怯えた表情になるからだ。」
「……。」
 ぎゅっと乳首を摘まれる。その力が少し痛くて声が出る。
「何かあったのだろうと思っていたが、それを君は言わない。春。だが愛しているのは私なのだろう?」
「はい……。私は……んっ……祥吾さんが……。」
 続きは言わせなかった。彼は彼女の唇に激しくキスをする。そして指は乳首の先をはじくように動かした。
「んっ。あっ!」
「あぁ。春。どうした。もう立っていられないのか。ずいぶん首にもたれている。」
「お願いします。ここでは……。」
「だったらそこで横になるんだ。」
 そこと言ったのは、ダイニングに置いてあるテーブルの上だった。彼女はおぼつかない足取りで、そのテーブルに向かう。すると後ろから祥吾は彼女のシャツを無理矢理脱がせる。
「きゃ……。」
「やはり綺麗だ。春。誰にも見せてはいけないよ。」
 そう言って彼は彼女の首もとに唇を寄せた。それはよく桂がしている行動で、思わず桂の名前を口走りそうになる。ぐっとそれを押さえて、テーブルに座り込んだ。すると彼はその乳房に舌を這わせる。
「んっ……んっ……。」
「春。ほら。痛いほど立ってるだろう?これも小説にする?」
「一人称では……。」
「だから人の演じられたセックスを見るのだろう?」
 彼はそう言って彼女のそのジーパンの中に手を入れてきた。下着に手を入れると、すでにそこは僅かに濡れている。まだそこに入れるには痛いだろう。ジーパンを脱がせて、下着を取ると、もうほぼ全裸の彼女がいた。
 彼も着流しを脱ぐと下着を取る。あばらの浮いたやせ細った体だった。だがその下はもうそそり立っている。こうなることを想定していたのか、彼の手元には小さな包みがあった。
「足を開いて、そう。私に見せて。」
 桂が相手なら彼はそのままそこに顔をつっこんで舐めあげたり、指がふやけるまで指をつっこむだろう。
 以前したときは、祥吾はそんなことをしたくないといっていた。だから期待はしなかったのに、彼は迷うことなくそこに指を這わせた。すると水の音がする。
「んっ……。祥吾さん……。」
 どうしてこんなことをするのだろう。自分が気持ちよくなればいいと、いつも乱暴に抱いていたのに。
「君、そんなに色っぽい顔をしていたかな。それにほら。こんなに蜜が溢れてきた。こんなに濡れやすかったかな。」
「祥吾さん。そんなこと……。」
「君がいやがると思った。でも今はほら。」
 ぐっと指を根本まで押し込まれる。そして指を動かされた。そのたびに声がでる。
「あっ!あっ!」
 指を二本入れられて、激しく動かす度に自然と声がでる。
「すごいね。こんなに淫らだったかな。」
 彼はそう言って指を抜く。そして自分のそれにコンドームをつけた。もう完全にそそり立っている。
「入れるよ。」
 そこにぐっと圧迫感があった。桂よりは大きくないように思えるが、桂としたのも時間がたっている。ぐっと締め付けてくるのだ。
「ああああ!」
「締め付けてくるな。すごく気持ちいい。春の中、すごい気持ちいいよ。」
「祥吾さん。んっ。あっ……。」
 彼は彼女の手を引くと、今度は座らせる。そしてそこに入れ込んだ。すると彼女が彼の首に手を回してきた。
「あっ……。あっ……。」
「すごい濡れてきた。ほら床に垂れてる。君のだろう?」
「すいませ……んっ!」
「ほらそんなに締め付けないで。すぐイかせたいのか?」
「そんなこと……言っても……。」
 この体勢になってどこか気持ちいいところに当たってる。このままだとすぐに果てそうだ。彼も果てさせようと、彼女の胸に指を這わせた。
「あっ。」
「すごいな。すごい締まる。」
 こんなにぎゅんぎゅん締まるのは、久しぶりだ。有川をはじめとした他の編集者は、彼を求めてくるがだいたいみんな数人と関係をしている。
 だが彼女は彼しか知らない。いいや。知らないことはないかもしれない。あの男がもう彼女を知っているのかもしれない。こんなに締まるこれを、好きなようにさせたのだろうか。
「春。」
 彼女は僅かに痙攣を起こしだした。震えは、打ち込む度に大きくなる。そしてそこもますます締め上げてくる。
「イきそう?」
「イきそうで……。お願いします。イかせてください。」
「だったら言って。好きって。」
「んっ。」
 彼女は腕を彼の首にのばし、そして彼の目を見ることもなく言う。
「好き。大好きです。」
 その言葉に彼は嬉しそうに彼女の腕を放し、キスをする。そして彼女の中に激しく打ち込んだ。そのたびに彼女の震えが大きくなる。
「あっ!あっ!イく。イっちゃう!ああああ!」
 最後は悲鳴に近かった。ぽたぽたと彼女の足に伝う露。そして彼もそのゴムの中に、自分を放出した。
「んっ!」
 しばらく抱きしめあい、キスをする。だが、彼女の頭の中に消すことは出来ない人がいる。
 今すぐ会いたい。啓治に今すぐあって抱きしめて貰いたい。
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