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二年目
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携帯のぼんやりした明かりが灯したのは、葵さんのしゅっとした顎だった。柊さんではないその人に、私は少しがっかりしたような表情をしたに違いない。彼は少し笑い、外に出たまま話しかけてきた。
「柊かと思ったんですか。」
「……すいません。」
「この天気でも彼はいないんですね。」
少し呆れたように彼はため息を付いた。
「仕方ありませんよ。でも後で来るそうです。」
「待ってたんですね。」
「はい。」
「それは妬けるな。」
彼はそう言って私に手をさしのべた。その手は握り拳が握られている。そしてそれをゆっくりあけて、手のひらを指しだした。その上を照らしてみると、そこには見覚えのあるネックレスが光っている。
「あっ。」
「バックヤードに落ちてました。」
「すいません。わざわざ。ありがとうございます。」
「無くしたことも気が付いてませんでしたか?」
「……普段やっぱりつけないからですね。」
そう言うと彼は私の手にそれを乗せてくれた。
「こんなもので、あなたを縛り付けようと思ってるのですかね。」
「縛り?」
薄明かりの中、真顔になっているように見えた。
「いいえ。何でもありませんよ。」
そう言って彼はまたいつもの笑顔に戻る。
「ただ、こんなものが無くても繋がっているだろうと思ったんです。」
まぁ確かに一理ある。こんなものが無くても私たちは繋がっているのだから。
「でもその指輪はあなたの細い指にはゴツすぎませんか。」
確かに指輪をはめるとちょっと違和感がある。多分こういうものを選ぶのも初めてだからかもしれない。
「……そうですね。でも……。」
本物ではないから。本物って……。
良かった。暗くて。顔が赤くなっているのがばれてないよな。
「それから、あなたの母親から言付かってきました。」
「母さんが?」
「えぇ。今日はセックスをしないようにって。」
「は?」
「ゴムが無いそうですよ。」
なんつーことをいうんだよ。あの人は。しかも葵さんに!ますます顔を赤くして、私は頭を押さえ込んだ。
「どうしました?」
「ちょっと頭が痛くなりました。」
「それはいけない。休みますか?」
「いいえ。大丈夫です。」
奔放すぎて困るんだよな。あの人。
「前も言いましたけど、生でしてはいけませんよ。」
「わかってますから。」
「でも……気が付いてました?」
「は?」
「あなたとしたとき、私はゴムなんてしてなかったんですよ。」
「え?」
そう言えば……そうだったような。会 快感と背徳感であまり覚えていないけど、確か……あのとき……私の奥に温かいモノが……。
それから体を重ねて……。
「いい思い出ですね。」
「……悪夢です。」
「そうですか?私にはかけがえのない思い出になりましたよ。」
「……葵さんって……いつもそんなことを?」
「あなただからですよ。あなたのことが好きですから。」
そう言って彼は私の腕をつかんできた。あぁ。彼は隙があれば、私に手を出そうと思っているのだ。
今日キスしたように、また出来る。セックスだって出来るかもしれない。そして柊さんから私を引き離すことが出来るかもしれない。そうずっと思っているのだ。
「やめてください。」
そう言って私は手を離した。
「それに一人で十分ですから。もうすぐ柊さんがきますし。」
「柊……か。」
彼は手をみる。そして私にその腕を見せる。
「暗がりであれば、きっと誰だかわかりませんよ。」
それは違う。私は首を横に振り、それを否定した。
「いいえ。あなたと柊さんは全く違う。」
「彼のように強引にも出来ますから。柔軟な対応は出来ます。こんな風にね。」
そう言って彼はドアを蹴ってきた。もう閉めようと思っていたドアが開いて、彼は玄関の中に入ってくる。後ろ手でドアを閉めて、鍵が閉まる音がした。
「……何かするんですか。」
「何をしましょうか。まさか、コーヒーについて今から話すわけではないですよね。」
「……。」
「する事は一つでしょう?」
「あなたとはもうしません。」
「柊がいるからですか。」
「柊さんとしかしません。私は、彼しか愛さないから。」
すると彼は少し笑い、私の手に握られている携帯電話を奪い取り、電気を消す。真っ暗になったそこから、どこから手が来るのかわからない。
とりあえず感で動くしかない。後ろ向きに進み、私はそろそろと動く。彼から距離をとらないといけない。
「たかだか十七年か、十八年生きているだけなのにもう「最後の恋」とか言ってるんですか。早くないですか。」
「ヨーロッパの作家の作品の人は、十四歳で心中しようとしました。それを考えれば、全然遅い方だと思いますけど。」
足下に何かぶつかった。それでごつんと言う音がする。やばい。ここにいるってことがばればれだ。
そのとき私の腕に柔らかいものが触れた。それは彼の手だった。細い指が、腕に絡んでくる。そして逃げられないように肩にも手が置かれた。
「捕まえた。」
「……。」
「ご所望なのは、激しくすること?」
「あなたじゃない。」
温かい胸の温度が伝わってくる。そして彼は肩から腕を放し、指で伝うように首筋から後ろ頭に手を持ってくる。そして首を支えた。
「黙れ。」
彼はそう言って私の唇に口づけをする。それは今までにない彼の行動だった。まるで柊さんに最初にされた口づけのように、激しく舌を求めてくる。
強引にしてくるそれは、私の足が砕けそうになるほど骨抜きにされそうだった。
「柊かと思ったんですか。」
「……すいません。」
「この天気でも彼はいないんですね。」
少し呆れたように彼はため息を付いた。
「仕方ありませんよ。でも後で来るそうです。」
「待ってたんですね。」
「はい。」
「それは妬けるな。」
彼はそう言って私に手をさしのべた。その手は握り拳が握られている。そしてそれをゆっくりあけて、手のひらを指しだした。その上を照らしてみると、そこには見覚えのあるネックレスが光っている。
「あっ。」
「バックヤードに落ちてました。」
「すいません。わざわざ。ありがとうございます。」
「無くしたことも気が付いてませんでしたか?」
「……普段やっぱりつけないからですね。」
そう言うと彼は私の手にそれを乗せてくれた。
「こんなもので、あなたを縛り付けようと思ってるのですかね。」
「縛り?」
薄明かりの中、真顔になっているように見えた。
「いいえ。何でもありませんよ。」
そう言って彼はまたいつもの笑顔に戻る。
「ただ、こんなものが無くても繋がっているだろうと思ったんです。」
まぁ確かに一理ある。こんなものが無くても私たちは繋がっているのだから。
「でもその指輪はあなたの細い指にはゴツすぎませんか。」
確かに指輪をはめるとちょっと違和感がある。多分こういうものを選ぶのも初めてだからかもしれない。
「……そうですね。でも……。」
本物ではないから。本物って……。
良かった。暗くて。顔が赤くなっているのがばれてないよな。
「それから、あなたの母親から言付かってきました。」
「母さんが?」
「えぇ。今日はセックスをしないようにって。」
「は?」
「ゴムが無いそうですよ。」
なんつーことをいうんだよ。あの人は。しかも葵さんに!ますます顔を赤くして、私は頭を押さえ込んだ。
「どうしました?」
「ちょっと頭が痛くなりました。」
「それはいけない。休みますか?」
「いいえ。大丈夫です。」
奔放すぎて困るんだよな。あの人。
「前も言いましたけど、生でしてはいけませんよ。」
「わかってますから。」
「でも……気が付いてました?」
「は?」
「あなたとしたとき、私はゴムなんてしてなかったんですよ。」
「え?」
そう言えば……そうだったような。会 快感と背徳感であまり覚えていないけど、確か……あのとき……私の奥に温かいモノが……。
それから体を重ねて……。
「いい思い出ですね。」
「……悪夢です。」
「そうですか?私にはかけがえのない思い出になりましたよ。」
「……葵さんって……いつもそんなことを?」
「あなただからですよ。あなたのことが好きですから。」
そう言って彼は私の腕をつかんできた。あぁ。彼は隙があれば、私に手を出そうと思っているのだ。
今日キスしたように、また出来る。セックスだって出来るかもしれない。そして柊さんから私を引き離すことが出来るかもしれない。そうずっと思っているのだ。
「やめてください。」
そう言って私は手を離した。
「それに一人で十分ですから。もうすぐ柊さんがきますし。」
「柊……か。」
彼は手をみる。そして私にその腕を見せる。
「暗がりであれば、きっと誰だかわかりませんよ。」
それは違う。私は首を横に振り、それを否定した。
「いいえ。あなたと柊さんは全く違う。」
「彼のように強引にも出来ますから。柔軟な対応は出来ます。こんな風にね。」
そう言って彼はドアを蹴ってきた。もう閉めようと思っていたドアが開いて、彼は玄関の中に入ってくる。後ろ手でドアを閉めて、鍵が閉まる音がした。
「……何かするんですか。」
「何をしましょうか。まさか、コーヒーについて今から話すわけではないですよね。」
「……。」
「する事は一つでしょう?」
「あなたとはもうしません。」
「柊がいるからですか。」
「柊さんとしかしません。私は、彼しか愛さないから。」
すると彼は少し笑い、私の手に握られている携帯電話を奪い取り、電気を消す。真っ暗になったそこから、どこから手が来るのかわからない。
とりあえず感で動くしかない。後ろ向きに進み、私はそろそろと動く。彼から距離をとらないといけない。
「たかだか十七年か、十八年生きているだけなのにもう「最後の恋」とか言ってるんですか。早くないですか。」
「ヨーロッパの作家の作品の人は、十四歳で心中しようとしました。それを考えれば、全然遅い方だと思いますけど。」
足下に何かぶつかった。それでごつんと言う音がする。やばい。ここにいるってことがばればれだ。
そのとき私の腕に柔らかいものが触れた。それは彼の手だった。細い指が、腕に絡んでくる。そして逃げられないように肩にも手が置かれた。
「捕まえた。」
「……。」
「ご所望なのは、激しくすること?」
「あなたじゃない。」
温かい胸の温度が伝わってくる。そして彼は肩から腕を放し、指で伝うように首筋から後ろ頭に手を持ってくる。そして首を支えた。
「黙れ。」
彼はそう言って私の唇に口づけをする。それは今までにない彼の行動だった。まるで柊さんに最初にされた口づけのように、激しく舌を求めてくる。
強引にしてくるそれは、私の足が砕けそうになるほど骨抜きにされそうだった。
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