夏から始まる

神崎

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想う人

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 ホストクラブの閉店して、水樹はキーボードを片づける。本来ならヘルプについているホストの仕事だし、水樹も彼についているヘルプにそれを任せていたことがある。だが毎日のように歌っている水樹に嫉妬したホストがそのキーボードを壊したことがあり、それ以来水樹は自分でそれを片づける。
 酒を置いている倉庫の片隅にキーボードを立てかけて、倉庫から出てくるとトイレを掃除していたホストがやってきた。背が高いホストだった。特徴的な髪型をしていて、周りを全部借り上げているのに、上の方の髪は結べるくらい長い。
「水樹さん。今日はアフターがないんですか。」
「終わったら来いって言われてる。」
 寝る女は決まっているが、その中に自分も入りたいと願う女は多い。だが水樹は新規の女に手を出すことはもうない。程なく、水樹はレコード会社に誘われて歌い手としてプロデビューするのだという。
 ホストクラブの代表はそれを止めている。この店のナンバーワンだということは、一番の稼ぎ頭なのだろう。止めるのも当然だ。
「お前も来るか?」
「はい。」
「元気だな。お前は。」
 若いときにしかできない仕事だ。それがわかっているから、稼げるときに稼いでおきたい。その男は入店前にそう言っていた。
「そんなに稼いでどうするんだ。」
「あー。俺、外国に留学したくて。」
「留学?」
「えぇ。留学目的だったら、現地でバイトも出来ないし。ためてる金で学費とか生活費とか捻出したいから。」
 行き当たりばったりでしているようには見えなかったが、そんな理由があったとは知らなかった。
「何の勉強したいんだ。」
「歌ですね。」
「歌?」
「水樹さんも音大出ているって言っていたけど、俺は現役ですよ。」
「お前、音大生だったのか。」
「えぇ。この間コンクール出て三位になったんですけど、金の工面が出来れば入学させてくれるって言われてるから。」
「……俺も留学はしたかったけどな。とりあえず金が欲しかった。」
「でも留学したら、結局ジャンルが狭くなる気がしますよ。オペラとか、クラシックとかしか選べなさそうに見える。」
「そうか?それが好きならそれでいいだろう。」
 すると男は少し暗い顔をした。おそらくコンクールに出たことで、その押しのけようとした周りの態度に人間の本性を見たのかもしれない。
 正直、水樹もそういうところはあった。
 押しのけて自分がのし上がろうとする姿勢は、ロックバンドよりもどろどろしている。それが見えてクラシックはないと思っていたのだ。だがジャンルは変わっても、押しのけないと上に立てないのはどの世界も同じかもしれない。
「そういえば、水樹さん仕事中に電話をしてたじゃないですか。」
「あぁ。ちょっと用事があってな。」
「……西川天音って名前が聞こえたんですよ。」
「音源を持っていないかって聞かれたんだよ。知り合いの娘にな。」
「ふーん。結構マイナーな人を捜してるんですね。」
 声楽をしているこの男は知っている人なのかもしれない。だが深く知っているとは思えない。
「体に似合わずカワイい声を出す人ですよね。ほら、毒を飲んで死ぬヤツ。可憐で一途。そんな役がぴったりだった。」
「そうだな。」
「西川天音もそんな人だったみたいですよ。アレ、指揮者でピアニストの永澤剛とおしどり夫婦って言われてたのに、いきなり旦那から捨てられたって。」
「……ん?永澤剛と夫婦だった?」
「そう。永澤剛が、同じオペラ歌手の武元英子と不倫してたって。っていうか、武元英子が奪ったって感じだったのかな。俺生まれたばっかだし、よくわかんないけど。」
「……それってインターネットとかで調べられるのか?」
「あー。なんかあまり詳しいことヒットしないですよ。書いても削除されるみたいで。」
 その話に違和感があった。もしかしたら、菊子は……。

 目を覚ますと、菊子が隣で眠っている。お互い全裸のままだった。
 脱がされたシャツやズボンがベッドの下に落ちている。畳むのも惜しいくらい側にいたかったから。
 だが菊子は夕べ、どこかおかしかった。夏の初めまで何も知らなかったのに、今は体の線も丸くなり女らしくなった。そして何より、素直に蓮を求めてくる。
 慣れてきたと言えばそうかもしれない。最初の頃はキスすらたどたどしかったのに、友達の影響からかもしれないが、今は手も舌も器用に動く。梅子の影響ならそれでかまわない。だがそれが棗の影響だとしたら腹立たしい。
 蓮は菊子を抱き寄せてその額にキスをする。そして唇に軽くキスをした。すると菊子の目が少しあいた。
「おはよう。もうそんな時間?」
 ベッドの上にある時計を見上げると、仕事が始まるよりは少し早い。
「蓮。体きつくない?」
「俺はいい。お前を送ったら時間まで寝る。」
「……そう……。」
 安心したように菊子は蓮の体に体を寄せる。すると違和感を感じた。
「……蓮。あの……。」
「気にするな。俺も起きたばかりだ。起きたばかりだとこうなるだけだ。」
「若いもんね。」
 すると菊子はわざとだろうか、その堅いところにも体を寄せてきた。
「菊子。少し体を離して。」
「え?」
「収まらないから。」
「……あぁ……ごめん。そうだったね。」
 体を少し離すと、菊子は体を起こそうとした。だがそのとき棗の言葉が頭をよぎった。
「菊子を離すなよ。じゃないと、俺が取るから。」
 取られたくない。菊子を誰にも渡したくなかった。
「菊子。」
 名前を呼ぶと、菊子は蓮の方をみる。
「何?」
 そのとき、蓮は体を起こそうとした菊子の体をまたベッドに倒す。そして菊子をうつ伏せにすると腰を浮かせて、その閉じている足の間に堅いそれを挟み込んだ。
「蓮……何……え……。」
「足を閉じていろ。」
 自分の性器と、蓮の性器がこすれあう。固いところがこすれ、徐々に性器から愛液が溢れてきた。
「蓮……あっ……。こすれて……る……。」
 そのまま手を伸ばして、下に下がっている胸に触れた。それはもう固くなっている。指でそこを摘み上げてぎゅっと引っ張るとさらに声を上げた。
「あっ!」
「こんなに固くさせて……誰にも見せるな。俺だけのものだ。」
「うん……。あっ……あっ……。」
 足の間にあるそれが熱い。蓮はそれを一度抜くと、今度はそのまま足を広げた。濡れて太股が自分の愛液と、蓮の汁で濡れている。その性器に指を這わせると水の音がした。
「すごいな。朝からこんなに濡れるなんて。」
 尻を高く上げさせると、菊子の恥ずかしさが限界だった。
「蓮……この格好恥ずかしい。」
「そうか?ここすごい綺麗。濡れてて、ほらこんなに物欲しそうだ。」
 顔を近づけてそこに舌を這わせる。音を立てると、菊子はその音と感覚と、恥ずかしさと、いろんなものがにじみ出そうだった。
 菊子の体がびくっと震え、そして息を切らせる。そこから口を離すと、蓮は自分をあてがった。
「……菊子。熱いな。ここ。どろどろだ。」
 少しこすりつけるだけでどうにかなりそうだ。そしてそのままぐっと中に入れる。
「あっ……蓮の……。」
 音を立てて中に入っていく。少し入っただけなのにもう射精しそうだ。それくらい気持ちがいい。
「……まだ全部入ってない。くっ……でも気持ちいいな。菊子。あまり絞めるな。力を抜け。」
 息も絶え絶えだった菊子は枕に顔を押しつけて、少し息を整えた。すると蓮はそのまま奥へ進んでいく。
「入った……奥まで。」
「蓮……。」
 蓮はそのまま菊子の手を引き寄せると、少し体を起こした。そしてそのまま自分を打ち付ける。
「蓮!ああっ!奥……奥来てる!」
「あぁ。すごい気持ちいいな。」
 薄いゴム越しの感覚しか知らなかった。だが今は何もない。直接感じる菊子の中。とても気持ちいい。
 そして一旦、菊子の中から出ると今度は仰向けにした。すると菊子自身が体を起こしてきた。
「どうした。」
「キスして。奥でも口でもして欲しい……。」
 その言葉に蓮は少し笑い、菊子を寝かせると足を上げる。そしてそのままその体に乗り上げると、唇を重ねながらまた菊子の中に入っていった。
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