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Boy's Style
夏
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3 夏休み
僕は望み通り十番以内に入ることが出来た。それを見て担任教師も、親も驚いていた。
「あんたもやれば出来るのね。どうして今までやらなかったのかしら。」
よけいな一言ばかり言う母親のことはどうでもいい。それよりも君と過ごせる夏休みが嬉しいのだ。会えないと思っていたのに、会うことが出来ると言うことが嬉しいのだ。
やがて夏休みに入り、特進クラスの補習授業にやってきた。普段の特進クラスの人たちに混ざり、僕と君が混ざっている。どうやら普通クラスから入れたのは僕たちだけのようだった。
いつもの教室に机と椅子が二つ並べられていた。それが僕たちの机だと知って僕は飛び上がるくらい嬉しかった。
隣にいつも君がいるのだ。横を向けば君がいる。そう思うだけで心がときめいていた。
しばらくクラスで待っていると、君がやってきた。今日の姿も綺麗で後光が差しているような気がする。その君が僕の隣の机に座ろうとしている。なんて光栄なことなのだろう。
「安西さん。」
すると特進クラスの女子が君に声をかけた。君は少し驚いたようにその女子を見ていた。
「席が違うの。安西さんの席ここ。」
その女子が指さしたのは、その女子の隣の席だった。どうやら女子男子でまとまった席に付くのが決まりらしい。勉学をするのに気が散るからという理由なのだ。
全く余計な決まりだ。しかし普通クラスの教室よりは近い位置にいる。それだけが救いだった。
授業は難しく、それについていくのが精一杯だった。しかし下痢をしたという男子も、君に声をかけて席を注意していた女子も、もちろん君も余裕に見える。付いていけないのは僕だけなのかもしれない。
それが悔しくて、僕は授業が終わった後も市の図書館で今日の復習をしていた。それに夏休み明けの試験でがくんと順位を落としたら、君に軽蔑されるかもしれない。そう思うと、勉強しないとという強迫観念におそわれるのだ。
そんな日を何日か過ごしたある日のことだった。図書館で君を見た。君は制服のまま、本を返していた。そしてまた本を何か探しているようだった。偶然を装って声をかけるのもいいのかもしれない。だけど、君は真剣に本を選んでいるのだ。それをじゃましてはいけない。
僕は君が本を数冊選び貸出窓口へ行った後、自然にそのコーナーへ行ってみた。その作家はミステリー作家のようではあったが、いわゆるサイコ系の作家で、遺体がバラバラになっていたり両手足を切り取られた女の話なんかを得意とする作家だった。
こんな悪魔のような作品を普段読んでいるなんて。それでも僕は君を愛おしく思う。実際にそんなものが見たいというのだったら、僕は喜んで死体になろう。
君の望むことなら全てしてあげたいから。
4 花火
夏休みの中盤。さすがに補習もお盆まではない。三日間だけ補習が休みなのだ。三日間も君に会えないのかと気が狂いそう。それに図書館も休みだ。
君に会えるかもしれないという淡い気持ちもなくなってしまった。偶然でもない限り君に会えない。それが悔しかった。
そんなときだった。
「花火にいかないか。」
クラスの悪友からの誘いがあった。女子、男子混じって六人ほどで隣町の花火を見に行くらしい。昼間からごろごろしていた僕は、母親から「高校生なんだから、どっか遊びに行ってらっしゃい。」と言われ続けて、うんざりしていたところだったし、僕はその話に一応乗ってみた。
花火当日の夕方、隣町の駅で待ち合わせをした。女子、男子の中には浴衣まで着ている女子もいる。どうやらお目当ての男子とカップルになりたいのだろう。
「お前もちゃんとやれよ。」
苦笑いを浮かべながら、悪友はこっちを見ている女子を指さした。
制服ではないのでわからなかったが、その女子も同じクラスらしい。興味がなかった。と言うより君以外の女に興味がなかった。
やがて花火が始まり、大きな音と赤、青、黄色と色とりどりの花火が打ち上がっていく。
「きれーい。」
アホっぽい女子の声だ。そして僕は速攻でその場から離れたかった。なぜなら、悪友が指さしたあの女が必要以上に僕にすり寄ってくるからだ。
うまくやれというのはそういうことなのだろうか。
君なら大歓迎だが、他の女はイヤだ。
我慢して花火が終わるまでと耐えていたが、花火が終わり立ち去ろうとしたときだった。
「どこへ行くのー?」
「帰るの。」
そういって帰ろうとしたときだった。帰ろうとする人混みの中に、君がいた気がした。僕はそのとき初めて見たのだ。
君の笑顔を。
君は紺色の浴衣を着ていて、髪を上げていた。そして横にいる背の高い年上男に、笑いかけていた。幸せそうに。
絶望した。
僕は望み通り十番以内に入ることが出来た。それを見て担任教師も、親も驚いていた。
「あんたもやれば出来るのね。どうして今までやらなかったのかしら。」
よけいな一言ばかり言う母親のことはどうでもいい。それよりも君と過ごせる夏休みが嬉しいのだ。会えないと思っていたのに、会うことが出来ると言うことが嬉しいのだ。
やがて夏休みに入り、特進クラスの補習授業にやってきた。普段の特進クラスの人たちに混ざり、僕と君が混ざっている。どうやら普通クラスから入れたのは僕たちだけのようだった。
いつもの教室に机と椅子が二つ並べられていた。それが僕たちの机だと知って僕は飛び上がるくらい嬉しかった。
隣にいつも君がいるのだ。横を向けば君がいる。そう思うだけで心がときめいていた。
しばらくクラスで待っていると、君がやってきた。今日の姿も綺麗で後光が差しているような気がする。その君が僕の隣の机に座ろうとしている。なんて光栄なことなのだろう。
「安西さん。」
すると特進クラスの女子が君に声をかけた。君は少し驚いたようにその女子を見ていた。
「席が違うの。安西さんの席ここ。」
その女子が指さしたのは、その女子の隣の席だった。どうやら女子男子でまとまった席に付くのが決まりらしい。勉学をするのに気が散るからという理由なのだ。
全く余計な決まりだ。しかし普通クラスの教室よりは近い位置にいる。それだけが救いだった。
授業は難しく、それについていくのが精一杯だった。しかし下痢をしたという男子も、君に声をかけて席を注意していた女子も、もちろん君も余裕に見える。付いていけないのは僕だけなのかもしれない。
それが悔しくて、僕は授業が終わった後も市の図書館で今日の復習をしていた。それに夏休み明けの試験でがくんと順位を落としたら、君に軽蔑されるかもしれない。そう思うと、勉強しないとという強迫観念におそわれるのだ。
そんな日を何日か過ごしたある日のことだった。図書館で君を見た。君は制服のまま、本を返していた。そしてまた本を何か探しているようだった。偶然を装って声をかけるのもいいのかもしれない。だけど、君は真剣に本を選んでいるのだ。それをじゃましてはいけない。
僕は君が本を数冊選び貸出窓口へ行った後、自然にそのコーナーへ行ってみた。その作家はミステリー作家のようではあったが、いわゆるサイコ系の作家で、遺体がバラバラになっていたり両手足を切り取られた女の話なんかを得意とする作家だった。
こんな悪魔のような作品を普段読んでいるなんて。それでも僕は君を愛おしく思う。実際にそんなものが見たいというのだったら、僕は喜んで死体になろう。
君の望むことなら全てしてあげたいから。
4 花火
夏休みの中盤。さすがに補習もお盆まではない。三日間だけ補習が休みなのだ。三日間も君に会えないのかと気が狂いそう。それに図書館も休みだ。
君に会えるかもしれないという淡い気持ちもなくなってしまった。偶然でもない限り君に会えない。それが悔しかった。
そんなときだった。
「花火にいかないか。」
クラスの悪友からの誘いがあった。女子、男子混じって六人ほどで隣町の花火を見に行くらしい。昼間からごろごろしていた僕は、母親から「高校生なんだから、どっか遊びに行ってらっしゃい。」と言われ続けて、うんざりしていたところだったし、僕はその話に一応乗ってみた。
花火当日の夕方、隣町の駅で待ち合わせをした。女子、男子の中には浴衣まで着ている女子もいる。どうやらお目当ての男子とカップルになりたいのだろう。
「お前もちゃんとやれよ。」
苦笑いを浮かべながら、悪友はこっちを見ている女子を指さした。
制服ではないのでわからなかったが、その女子も同じクラスらしい。興味がなかった。と言うより君以外の女に興味がなかった。
やがて花火が始まり、大きな音と赤、青、黄色と色とりどりの花火が打ち上がっていく。
「きれーい。」
アホっぽい女子の声だ。そして僕は速攻でその場から離れたかった。なぜなら、悪友が指さしたあの女が必要以上に僕にすり寄ってくるからだ。
うまくやれというのはそういうことなのだろうか。
君なら大歓迎だが、他の女はイヤだ。
我慢して花火が終わるまでと耐えていたが、花火が終わり立ち去ろうとしたときだった。
「どこへ行くのー?」
「帰るの。」
そういって帰ろうとしたときだった。帰ろうとする人混みの中に、君がいた気がした。僕はそのとき初めて見たのだ。
君の笑顔を。
君は紺色の浴衣を着ていて、髪を上げていた。そして横にいる背の高い年上男に、笑いかけていた。幸せそうに。
絶望した。
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