王道くんと、俺。

葉津緒

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第六章

17

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「ゆ、う……ちゃん?」


焦るような優ちゃんの声が聞こえて、ハッと目が覚めた。


「良かった郁人、やっと目が覚めたか。お前ずっとうなされてて、声をかけても揺すっても中々起きなくて心配したんだぞ。……またあの悪夢を見たんだな?」

「悪、夢」


ああ、そうか。
ここは優ちゃんの寮部屋で、昨夜一緒に寝たんだっけ。いつもは同じベッドに入るのも嫌がるし、抱き枕にもなってくれない優ちゃんが、本当に珍しく俺の要望を叶えてくれて。驚いたけどすごく嬉しかったのを覚えてる。
そして俺の腕の中にすっぽり入る優ちゃんを、背後から抱きしめて(抱き枕の代わりにして)眠ったんだ。


「晴巳さんから言われてたんだよ、神経が高ぶってるから悪夢にうなされるかもしれないって。ああ、すごい汗だな。少し熱もあるようだし着替えるか? 水飲むなら持ってこようか?」


優ちゃんの少し冷たい手が俺の額の熱を計り、タオルで汗をぬぐってくれる。
小さなやわらかい声で話しかけられるとホッとして、あの薄暗い部屋悪夢からは解放されたんだって、実感できる。

今も、あのときも、俺を助けてくれたのは優ちゃん。


「ありがと……ごめんね、うるさくして」

「いいよ別に、俺のことは気にすんな。あー、もう寝るか? 着替えも水もいらないなら、眠いんだろ? お前まぶた閉じかけてるし。大丈夫、またうなされたら今度は容赦なく叩き起こしてやるから」

「……うん、お願い」


あの日より前もその後も。
優ちゃんは、いつだってずっと俺の隣にいてくれる大好きで大切な人。
今は昔よりも、だいぶ過保護で心配性になっちゃったような気がするけどね。

祥ちゃんや親衛隊の皆や亮ちゃん、敦くんにノア。りっちゃん先輩や慎ちゃん先輩、晴巳せんせぇと千葉ちゃん……。
他にもたくさんの人に守られたり、助けてもらったり。

だけどやっぱり誰よりも、俺がそばにいて安心するのは優ちゃんだから。
わがままで迷惑なのはちゃんと理解してるんだよ。
でもごめんなさい、今だけはこのまま手をつないでいてね。お願いだから離さないでね、絶対どこにも行かないで。
ずっとずっと、俺の――


「優ちゃん、大好、き……」





<優馬 視点>


「郁人きゅん、眠った?」

「……ああ」


部屋の外から小さなノック音と共に、敦兼が声をかけてくる。


「ちょっといい?」

「できるだけ手短にな」


少しだけ開いたドアの隙間から見える敦兼は、猫背ではなく、前髪も上げて顔があらわになっていた。
作業中だったのだろう、黒縁メガネを掛け「あー、目と首が痛ぇ」と呟く。


「また悪夢を見たんだね。かわいそうに」


去年、郁人と寮部屋が一緒だった敦兼は、悪夢にうなされる郁人を知っている。
その内容や原因、さまざまな事情も俺と共有している。というか、もともと全部知った上でこの学園へとやってきた奴だからな。
学園内(外)での、郁人と俺に関する噂や偽情報など、それらを操作するための全面的な共犯・協力者として。

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