106 / 124
第六章
17
しおりを挟む
「ゆ、う……ちゃん?」
焦るような優ちゃんの声が聞こえて、ハッと目が覚めた。
「良かった郁人、やっと目が覚めたか。お前ずっとうなされてて、声をかけても揺すっても中々起きなくて心配したんだぞ。……またあの悪夢を見たんだな?」
「悪、夢」
ああ、そうか。
ここは優ちゃんの寮部屋で、昨夜一緒に寝たんだっけ。いつもは同じベッドに入るのも嫌がるし、抱き枕にもなってくれない優ちゃんが、本当に珍しく俺の要望を叶えてくれて。驚いたけどすごく嬉しかったのを覚えてる。
そして俺の腕の中にすっぽり入る優ちゃんを、背後から抱きしめて(抱き枕の代わりにして)眠ったんだ。
「晴巳さんから言われてたんだよ、神経が高ぶってるから悪夢にうなされるかもしれないって。ああ、すごい汗だな。少し熱もあるようだし着替えるか? 水飲むなら持ってこようか?」
優ちゃんの少し冷たい手が俺の額の熱を計り、タオルで汗をぬぐってくれる。
小さなやわらかい声で話しかけられるとホッとして、あの薄暗い部屋からは解放されたんだって、実感できる。
今も、あのときも、俺を助けてくれたのは優ちゃん。
「ありがと……ごめんね、うるさくして」
「いいよ別に、俺のことは気にすんな。あー、もう寝るか? 着替えも水もいらないなら、眠いんだろ? お前まぶた閉じかけてるし。大丈夫、またうなされたら今度は容赦なく叩き起こしてやるから」
「……うん、お願い」
あの日より前もその後も。
優ちゃんは、いつだってずっと俺の隣にいてくれる大好きで大切な人。
今は昔よりも、だいぶ過保護で心配性になっちゃったような気がするけどね。
祥ちゃんや親衛隊の皆や亮ちゃん、敦くんにノア。りっちゃん先輩や慎ちゃん先輩、晴巳せんせぇと千葉ちゃん……。
他にもたくさんの人に守られたり、助けてもらったり。
だけどやっぱり誰よりも、俺がそばにいて安心するのは優ちゃんだから。
わがままで迷惑なのはちゃんと理解してるんだよ。
でもごめんなさい、今だけはこのまま手をつないでいてね。お願いだから離さないでね、絶対どこにも行かないで。
ずっとずっと、俺の――
「優ちゃん、大好、き……」
<優馬 視点>
「郁人きゅん、眠った?」
「……ああ」
部屋の外から小さなノック音と共に、敦兼が声をかけてくる。
「ちょっといい?」
「できるだけ手短にな」
少しだけ開いたドアの隙間から見える敦兼は、猫背ではなく、前髪も上げて顔があらわになっていた。
作業中だったのだろう、黒縁メガネを掛け「あー、目と首が痛ぇ」と呟く。
「また悪夢を見たんだね。かわいそうに」
去年、郁人と寮部屋が一緒だった敦兼は、悪夢にうなされる郁人を知っている。
その内容や原因、さまざまな事情も俺と共有している。というか、もともと全部知った上でこの学園へとやってきた奴だからな。
学園内(外)での、郁人と俺に関する噂や偽情報など、それらを操作するための全面的な共犯・協力者として。
.
焦るような優ちゃんの声が聞こえて、ハッと目が覚めた。
「良かった郁人、やっと目が覚めたか。お前ずっとうなされてて、声をかけても揺すっても中々起きなくて心配したんだぞ。……またあの悪夢を見たんだな?」
「悪、夢」
ああ、そうか。
ここは優ちゃんの寮部屋で、昨夜一緒に寝たんだっけ。いつもは同じベッドに入るのも嫌がるし、抱き枕にもなってくれない優ちゃんが、本当に珍しく俺の要望を叶えてくれて。驚いたけどすごく嬉しかったのを覚えてる。
そして俺の腕の中にすっぽり入る優ちゃんを、背後から抱きしめて(抱き枕の代わりにして)眠ったんだ。
「晴巳さんから言われてたんだよ、神経が高ぶってるから悪夢にうなされるかもしれないって。ああ、すごい汗だな。少し熱もあるようだし着替えるか? 水飲むなら持ってこようか?」
優ちゃんの少し冷たい手が俺の額の熱を計り、タオルで汗をぬぐってくれる。
小さなやわらかい声で話しかけられるとホッとして、あの薄暗い部屋からは解放されたんだって、実感できる。
今も、あのときも、俺を助けてくれたのは優ちゃん。
「ありがと……ごめんね、うるさくして」
「いいよ別に、俺のことは気にすんな。あー、もう寝るか? 着替えも水もいらないなら、眠いんだろ? お前まぶた閉じかけてるし。大丈夫、またうなされたら今度は容赦なく叩き起こしてやるから」
「……うん、お願い」
あの日より前もその後も。
優ちゃんは、いつだってずっと俺の隣にいてくれる大好きで大切な人。
今は昔よりも、だいぶ過保護で心配性になっちゃったような気がするけどね。
祥ちゃんや親衛隊の皆や亮ちゃん、敦くんにノア。りっちゃん先輩や慎ちゃん先輩、晴巳せんせぇと千葉ちゃん……。
他にもたくさんの人に守られたり、助けてもらったり。
だけどやっぱり誰よりも、俺がそばにいて安心するのは優ちゃんだから。
わがままで迷惑なのはちゃんと理解してるんだよ。
でもごめんなさい、今だけはこのまま手をつないでいてね。お願いだから離さないでね、絶対どこにも行かないで。
ずっとずっと、俺の――
「優ちゃん、大好、き……」
<優馬 視点>
「郁人きゅん、眠った?」
「……ああ」
部屋の外から小さなノック音と共に、敦兼が声をかけてくる。
「ちょっといい?」
「できるだけ手短にな」
少しだけ開いたドアの隙間から見える敦兼は、猫背ではなく、前髪も上げて顔があらわになっていた。
作業中だったのだろう、黒縁メガネを掛け「あー、目と首が痛ぇ」と呟く。
「また悪夢を見たんだね。かわいそうに」
去年、郁人と寮部屋が一緒だった敦兼は、悪夢にうなされる郁人を知っている。
その内容や原因、さまざまな事情も俺と共有している。というか、もともと全部知った上でこの学園へとやってきた奴だからな。
学園内(外)での、郁人と俺に関する噂や偽情報など、それらを操作するための全面的な共犯・協力者として。
.
54
あなたにおすすめの小説
悪の策士のうまくいかなかった計画
迷路を跳ぶ狐
BL
いつか必ず返り咲く。それだけを目標に、俺はこの学園に戻ってきた。過去に、破壊と使役の魔法を研究したとして、退学になったこの学園に。
今こそ、復活の時だ。俺を切り捨てた者たちに目に物見せ、研究所を再興する。
そのために、王子と伯爵の息子を利用することを考えた俺は、長く温めた策を決行し、学園に潜り込んだ。
これから俺を陥れた連中を、騙して嵌めて蹂躙するっ! ……はず、だった……のに??
王子は跪き、俺に向かって言った。
「あなたの破壊の魔法をどうか教えてください。教えるまでこの部屋から出しません」と。
そして、伯爵の息子は俺の手をとって言った。
「ずっと好きだった」と。
…………どうなってるんだ?
ひみつのモデルくん
おにぎり
BL
有名モデルであることを隠して、平凡に目立たず学校生活を送りたい男の子のお話。
高校一年生、この春からお金持ち高校、白玖龍学園に奨学生として入学することになった雨貝 翠。そんな彼にはある秘密があった。彼の正体は、今をときめく有名モデルの『シェル』。なんとか秘密がバレないように、黒髪ウィッグとカラコン、マスクで奮闘するが、学園にはくせもの揃いで⁉︎
主人公総受け、総愛され予定です。
思いつきで始めた物語なので展開も一切決まっておりません。感想でお好きなキャラを書いてくれたらそことの絡みが増えるかも…?作者は執筆初心者です。
後から編集することがあるかと思います。ご承知おきください。
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
僕はただの妖精だから執着しないで
ふわりんしず。
BL
BLゲームの世界に迷い込んだ桜
役割は…ストーリーにもあまり出てこないただの妖精。主人公、攻略対象者の恋をこっそり応援するはずが…気付いたら皆に執着されてました。
お願いそっとしてて下さい。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
多分短編予定
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる