王道くんと、俺。

葉津緒

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第六章

19

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事件後に郁人の父親おじさんから聞いた話では、女が郁人に一目惚れをした頃、親を通じて婚約の申し入れがあったそうだ。
常日頃からその手の打診は多く、一応相手のことを郁人にも尋ねてみたが首を傾げられ、それ以上は何も伝えずに断ったという。

以降、女はストーカーのごとく密かに郁人を付け狙い続け、郁人に近づいた他の女には悪質な嫌がらせを行っていた。
……なぜか俺もその対象だったし。
街中でいきなりチンピラに殴りかかられて、度々それを迎撃したり。
事情を知ったチームの仲間が、女を郁人と俺に近づけさせないよう協力してくれていたのだが――。


真っ向からでは対処できない。
だったら奇策で逃げるしかない。
せめてあの女が郁人を諦めるまでのあいだ、姿を隠し、時間を稼ぐにはどうするか。
考えた末、俺達は周囲の大人達も巻き込み突拍子もない案を実行した。

郁人と俺は二人揃って海外へ留学した、という偽情報うわさを流す。実際には理事長の協力のもと、密かに(試験を受けて)九条学園へ入学。
広範囲に及ぶ情報操作は敦兼がやってくれた。
そして呆気ないほど簡単に女はだまされ、存在しない郁人の影を追うように海外へ行ってしまったのだった。


こうして、ひとまずの安寧を得た郁人と俺は、その後全寮制の九条学園に“嘘”をばら撒きながら潜み続けている。万が一学園の外に郁人の存在がもれた場合もその“嘘”が敵を惑わせ、郁人の発見を遅らせ、逃げる時間を稼いでくれる……と良いのだが。

そのための偽情報や嘘の噂を撒き広めるサポート役が、敦兼だ。そのはずなんだけど。



「そういえば俺もお前に聞きたいことがあったわ」

「何?」

「昨日、どうして俺じゃなく、先に生徒会役員のノアに郁人の危険を知らせた?」


ノアが保健室で別れ際に『郁人、危険』のメッセージがスマホに届いていたことを教えてくれた。
敦兼の仕業だとすぐわかったが、名前は伏せ、送り主は俺達の仲間だ、とだけ伝えておいた。


「単純にそれ以外の選択肢がなかったから。偶然、現場の一番近くにいたんだよね、あの人。逆に言うと、会計しか間に合う距離にいなかった。優馬しゃんがいた場所からだと、助けは確実に間に合わない。ヤられちゃってたよ、郁人きゅん」

「……」


とりあえずは納得するしかないのか。
だが、ノアはこれが初めてではないようなことをほのめかしていた気も。


「報告しまっす。風紀委員長と会計が無事、郁人きゅんを襲ったもう一人の生徒を特定したよ」

「そうか」

「あと、三年生の寮棟で土屋亮介がちょっとした騒ぎを起こしたみたいで、おそらく数日間の謹慎処分停学だって」

「はあ?」

「美濃岡巧に殴りかかったんだってさ」

「……」

「たまたま出会でくわして、にやけた顔が気に入らないから殴ろうとしただけだ、って言ってるみたい。馬鹿だねー」


あの野郎。
意外と冷静で大人しくしてやがるな、と思えば……。ああ、まったく、ムカつくほど馬鹿なやつだ!

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