王道くんと、俺。

葉津緒

文字の大きさ
109 / 124
第六章

20

しおりを挟む
土屋亮介が郁人のことを本気で心配しているのは俺にだってわかる。くそっ、だからといってお前に俺の郁人は渡さねーからな。


「美濃岡巧にはこれまで以上に警戒すべきだと思う。あれは、気違い女とどこか似てる感じがするよ」

「なんだと……?」

「昨日、郁人きゅんを襲った現場を立ち去る際、俺が見てた監視カメラに向かってウインクしてきやがった。普通なら絶対に見つからないようなカモフラージュをしてあるのにだよ。奴が話した内容も全部、盗聴器で聞いてたけど――おそらく完全に郁人きゅんの本性バレてるわ」


敦兼が淡々と話す内容に、血の気が引く。


「ついでに言うと、土屋亮介の攻撃もほとんど当たらなかったみたい。せいぜい、かすった程度だってさ。底が知れない相手って……俺、正直に言うと嫌なんだよね」


できれば二度と郁人きゅんと接触してほしくない相手かなぁ、と付け加えた。
それには俺も同意する、かなり難しいだろうが。
……これから親衛隊の皆にはさらに頑張ってもらおう。


「あ、ところで今更なんだけど。拉致事件のあとの弱った郁人きゅんに、どうしてBLを教え込むことになったの?」

「うちの姉貴の、単なる思いつきだ」と思う。多分。


あのあと、郁人は女性恐怖症みたいになり、しばらく自分とうちの家族以外の女を受けつけなくなった。
幼い子供やお年寄りにさえビクビクと怯える姿に、今度は姉貴がぶち切れたのだ。


『あーもう無理、我慢できない。わけのわかんないクソ女なんかに負けてんじゃねーよ、アホ郁人! この私が本物の愛ってやつを教えてやるわ!』

そう言って郁人となぜか俺まで、二人そろってBL漫画やら小説やらアニメやらをこれでもかと見せられた。
連日、読書感想文まで書かされるしで、もう本当に意味不明だったからな。
さすがに過激な内容はまだ早い、とかで免れたけど。

しかし物事はどう転ぶかわからない。幸いにもそれが郁人を救うきっかけとなったのだから。

『好きとか、愛してるだなんて言葉はもう信じられない。恋も愛も、そんなの存在しない……怖い……』

とまで言ってた奴が


『尊い……。受けを溺愛する一途な攻め……。命を捧げても構わないほど愛していたのに、最期まで決して本心を告げずに受けを助け、無残にも一人散りゆく高潔な攻め! または、純粋無垢な受けが初恋相手の攻めに、長年想いを伝えられずひたすら読者をヤキモキさせるぴゅあBL……。そ、そして全寮制学園で巻き起こる王道ドタバタBL物語……!?
ふおおおっ綾香ちゃん、綾香お姉様、綾香師匠! ありがとうございます師匠のおかげで目が覚めました。俺、一生ついていきますッ』


――見事に腐りまくった。
いやまあ、うん、元気になったし。一応ほら、な。
無言で遠い目になる俺を、敦兼が優しい眼差しで見守ってくれる。いや、余計な気遣いやめろ泣けてくるから。



「そんで、こっちが本題。海外にいる気違い女が、そろそろ戻ってくるかもしれない」

「え」

.
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

悪の策士のうまくいかなかった計画

迷路を跳ぶ狐
BL
いつか必ず返り咲く。それだけを目標に、俺はこの学園に戻ってきた。過去に、破壊と使役の魔法を研究したとして、退学になったこの学園に。 今こそ、復活の時だ。俺を切り捨てた者たちに目に物見せ、研究所を再興する。 そのために、王子と伯爵の息子を利用することを考えた俺は、長く温めた策を決行し、学園に潜り込んだ。 これから俺を陥れた連中を、騙して嵌めて蹂躙するっ! ……はず、だった……のに?? 王子は跪き、俺に向かって言った。 「あなたの破壊の魔法をどうか教えてください。教えるまでこの部屋から出しません」と。 そして、伯爵の息子は俺の手をとって言った。 「ずっと好きだった」と。 …………どうなってるんだ?

ひみつのモデルくん

おにぎり
BL
有名モデルであることを隠して、平凡に目立たず学校生活を送りたい男の子のお話。 高校一年生、この春からお金持ち高校、白玖龍学園に奨学生として入学することになった雨貝 翠。そんな彼にはある秘密があった。彼の正体は、今をときめく有名モデルの『シェル』。なんとか秘密がバレないように、黒髪ウィッグとカラコン、マスクで奮闘するが、学園にはくせもの揃いで⁉︎ 主人公総受け、総愛され予定です。 思いつきで始めた物語なので展開も一切決まっておりません。感想でお好きなキャラを書いてくれたらそことの絡みが増えるかも…?作者は執筆初心者です。 後から編集することがあるかと思います。ご承知おきください。

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

「王道くんと、俺。」番外編

葉津緒
BL
こちらは「王道くんと、俺。」の番外編になります。 会話文中心、if設定など。 ほぼパラレルワールド的な内容だと思ってお読み頂ければ……。 全寮制学園/王道/脇役/美形/腐男子/偽チャラ男/親衛隊持ち/訳あり/攻め複数 ※先に「本編」をお読みになってからご覧ください。 ※一部、記号や擬音を使用しています。苦手な方は回避をお願い致します。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

学園ものに転生した悪役の男について

ひいきにみゐる
BL
タイトルの通りにございます。文才を褒められたことはないので、そういうつもりで見ていただけたらなと思います。

処理中です...