王道くんと、俺。

葉津緒

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第六章

21

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「あっちにいる知り合いからの情報提供。どうも最近、女の動きが変だってさ。一年以上探しても郁人きゅんが見つからないんじゃ、さすがにおかしいって気づくよねぇ?」

「……」

「てことで、まだ確定じゃないけど一応報告しておくよ」

「ああ。引き続き情報関連を頼む」

「はいはーい」


チッ、頭と胃が痛くなるような不安要素が次々と……。
ん? 話は終わったはずなのにまだ何か言いたそうだな。


「なんだよ敦兼」

「余計なお世話かもだけどさ。ベッドに入って一緒に寝たら? さすがにそのままだと風邪引くよ。どうせ優馬しゃんは、郁人きゅんに手なんか出さないんだし。あ、出ないんじゃなくて、出ないのかなぁ」

「うるさい。報告が終わったらドア閉めて出てけ!」

「へーい、おやすみー」


ニヤニヤ笑いながらドアを閉めて立ち去る敦兼。
部屋に残されたのはベッドで眠る郁人と、郁人と片手をつないだまま、ベッドの脇の椅子に座る俺。
さっき、郁人の汗を拭くタオルを取りにベッドから出て以降この状態だ。
まあ、確かにちょっと肌寒い。まだ五月だしな。

……手は出したくても出せねーし、出さない。
俺は誰よりも郁人に信頼されてるのを理解しているし、それを裏切るつもりもない。
理由は、以前こいつが言った

『好きとか、愛してるだなんて言葉はもう信じられない。恋も愛も、そんなの存在しない』

ってやつを俺自身でくつがえしたいから。
郁人が望まないのに手を出した時点で、それは本物の恋や愛じゃないという証明になってしまうだろう?
手を出すとしたら、郁人が心から俺を好きになってくれた、そのときだけ――。


「あー、しょうがないか。ほら郁人、もう少しそっち寄れ。俺のベッドを独占するなよ」

「んん、優ちゃ……寒い……」

「はいはい、抱き枕も兼ねて湯たんぽ代わりになってやるから」


片手をつないだままベッドに入る。
おお、ぬくい。やっぱりまだ寒かったんだなぁ。あと、俺より郁人のほうが温かいので湯たんぽ役は無理そうだ。すまん。

軽くぽんぽんと、つないでいないほうの手で郁人の手を叩く。


「明日、いやもう今日か。朝になったらまたいつものお前に戻ってくれよ。生BL観察やら腐妄想、ついでに王道だの、多少ならバカなこと言ってもいいから。俺は、いや俺達は、やっぱり元気で楽しそうな郁人の笑顔が見たいからさ」


むにゃむにゃと幸せそうに眠る相手に、そっとささやいた。


「おやすみ郁人――」



<優馬視点・終わり>






翌朝。
目が覚めたら、ばっちり風邪を引いてましたー。
ぶえっくしゅっ。


「うう、熱いし頭ガンガンするぅ」

「風呂上がりにあんな格好でうろつくからだ! とにかく今日は大人しく寝てろ、学校には届け出しておいてやるから。あとで晴巳さんも来てくれるはずだし」


人様のベッドを占領する俺を、呆れたような顔で見下ろす優ちゃん。その手には体温計を持ってます。ちなみに38度をちょっと下回る熱でしたぁ。
うー。ありがとう優ちゃん、お世話になります。

.
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