平凡な365日

葉津緒

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回想9.5

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生徒会室にもあまり寄りつかなくなり、たまに会っても

「あっごめん俺、今忙しいからまたねー?」

と、ヘラヘラ笑いながら消えてしまう。
多分、二人の姿を見るのが辛いのだと思います。愛しい彼に対して何度もこれが「初恋」だと口にしていましたし。
ただ、それは生徒会役員たちの皆に言えることです。私だって……。



小さく溜め息を漏らし、横一列に並ぶ審査員席の左端に目を向けます。
本来そこにいなければならない筈の会計。
ですが予想通り彼の姿はありません。
可愛いアリスが出場している大事なミスコンの審査員役だというのに、これは明らかな責任放棄です。許せません。
私だって辛さを堪え、イチャつく二人の隣に座っているんですよ。一人だけ逃げるなんて狡いです!

逃げるといえば。
今現在、何故か舞台上で手品を披露しています双子書記。
……なかなか器用ですね。


突然中断したイベントに観客が騒ぎ、暴れ、収拾がつかなくなりかけた頃。


「わあー面白そう」

「にぎやかでワクワクするよねっ」
 
「僕たちも何か目立つことやろうか?」

「生徒会だしね!」

「泣く子も笑かす無敵の双子書記だもんね!」


そう言って舞台中央へと駆け出した二人。


「ちょっと、ま、待ちなさい!」


私の言葉を振り切り半泣きの司会役生徒からマイクを奪い、別のイベント実行委員に何かを告げ――。
直後にまた、キイィィインという耳障りな音が会場中に流れました。
耳をふさぎ不快感で多少静かになる観客席。

ですが。


「え、何だ……あれ」

「着ぐるみだよな、ゆるキャラ?」

「アザラシ?」


先程までとは違う意味でざわつく彼ら。
その視線は、舞台上方の巨大画面に映し出された『何か』へ向けられています。


「キャー可愛い! ぴょんぴょん跳ねてる!」

「あっ、転んだ」

「うおおっ!? スゲー、飛び起きたぞあのアザラシ」

「あ、またこけた」

「そんでまた飛び起きたよ不死身か、あのアザラシ」

「アザラシ君がんばってぇ」


どうやら『アザラシ』を応援しているみたいですね。
動物ドキュメンタリー映像でも流れているのでしょうか。

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