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第21話 わざと
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賑やかな宴会は社長が挨拶をし、お開きとなった。
1階にバーもあるそうで、まだまだ飲みたい社員は飲みに行くそうだ。
俺は⋯部屋に戻るとするか。
飲み足りなくはないんだがなぁ。
温泉に行きたいんだ。
あの後はアリサもガンガン日本酒を飲んでたし、さっきのお土産のお酒は持ってこないだろ。
玉木さんを坂下先輩と抱えながら部屋に戻る。
この前の飲み会の日はこれを大地さんとしてたのね。
思った以上に酔った人を動かすのは大変だった。
「はぁ、もうダメ疲れたぁ」
「私も疲れたわ⋯ゆっくり休みましょ」
部屋に戻ると布団が敷かれていた。
玉木さんをそこに寝かし、両隣に私と坂下先輩も横になる。
もう既に寝ている玉木さん。
坂下先輩もすぐに寝ていた。
歯を磨いてないのに気付いたので、音を立てないようにして寝る準備を済ませていく。
酔ったらみんなこうなのかな?
私もお酒飲んだら玉木さんみたいに大地さんにあんなことできるのかな。
あんな⋯⋯⋯
いいなぁ、私も大地さんにくっつきたい。
布団に横になる。
部屋は真っ暗にしていなかった。
近くに置いてある自分のカバンの中からレッサーパンダのキーホルダーを取り出した。
手に持ちそれを眺めている。
大地さんとおそろい。
嬉しいけど、嬉しいんだけどなぁ。
飲み会になると全然大地さんと話せないのが辛い。
早く20歳にならないかなぁ。
ごちゃごちゃ考えてたら、なかなか寝付けない。
温泉⋯行こうかな。
酔ってはいるが、まだ寝れそうになかった。
サウナあったよなぁ。
得意ではないが行ってみるか。
まだ22時だもんな。
俺は準備をし、大浴場へと向かう。
部屋を出ると何故かそこにレッサーパンダのお揃いのキーホルダーを手に持った夢花がいた。
「あっ、大地⋯⋯さん⋯」
温泉に行こうとしてたのに、向かった先は大地さんの部屋の前だった。
どうしようか迷っていたら、部屋から大地さんが出てきてくれた。
「どうした?寝れないのか?」
⋯⋯寝れません。
あんなに色んこと見せられて、寝れるわけないじゃないですか。
大地さんを責める言葉を言ってしまいそうだった。
だから俯いて黙ってしまった。
「これから温泉に行こうとしててな。夢花も行ってきたらどうだ?」
玄関先で立ってるのも変だからな、一緒に行くことを提案してみたが⋯
温泉って貸切じゃ無い限り別々だもんな。
それでもいいんだ、俺が入りたいからな。
「はい、私も温泉に行こうとしてて、でもなんだか大地さんに会いたくて⋯」
「ん?俺に?」
「な、なんででしょうか⋯」
「そんな時もあるのかもな。一緒に大浴場まで行こうか」
酔っていたから曖昧なところもあるが⋯
夢花はまだお酒を飲める年齢じゃない。
自分だけ酔わないでいたら寂しくなるのかもしれないな。
「坂下先輩も玉木さんもたくさん飲んでたからなのか寝ちゃってて」
大地さんと並んで歩く。
散策デートじゃないけど、少しずつ気持ちが軽くなる気がしていた。
少しふらつく大地さん。
そんな大地さんを私は身体を使って支えた。
「おっと⋯すまない。飲みすぎたんだろうな」
「い、いえ⋯」
支えた勢いで腕を組んでしまった。
「ありがとう、そろそろ離して⋯」
「ダメです!またふらついたらどうするんですか?」
やっと2人きりなんです。
やっと掴めたんです。
やっとくっつけたんです。
簡単に離したくないです。
坂下先輩も玉木さんも女将さんも、この旅館に来てから3人の女性とくっついてるんですよ大地さん。
みんなずるい。
今は私の番だもん。
「うーん、じゃあしばらく頼むな?」
「はいっ!」
良くはないんだが⋯
まぁいいか。
考えちゃダメなんだが、こうもくっつかれると比べてしまうんだよなぁ。
玉木さんもアリサも中々の破壊力なんだが⋯⋯⋯⋯
これ以上は言うまい。
これから、そう、これからだ夢花。
「大地さん、何考えてます?」
「ん?もちろんありがたいなぁって思ってるところだ」
これは気づかれたのか?
まさかそんなわけない。
漫画やラノベじゃないんだ、気付かれたらエスパーだろ。
やったやった、大地さんの許可までもらっちゃった。
大浴場まで少しで着いちゃうかもだけど、それでもいいもん。
ふふ、嬉しい。
でも私がもっと女性らしい体付きなら、大地さんはもっと嬉しかったかなぁ。
少しお酒臭い。
普段は電車でこの匂いを嗅ぐと嫌悪感を覚えてたけど、今はなんだか嬉しい。
どうしてだろう、不思議だな。
大地さんだからなのかな。
私は今のこの雰囲気を堪能したくて黙って大地さんと歩いていた。
「あれ?こっちじゃなかったか?」
俺はわざとらしく道を間違えたフリをする。
「ごめんなさい大地さん、全然意識してなくて⋯」
「気にしないでくれ、俺が酔っ払い過ぎてるんだろう、俺の方こそすまなかった」
もっとこうしていたかったんだ。
夢花が謝ることじゃない。
「でも、このまま辿り着かなくても⋯」
「え?」
「ううん、なんでもないです⋯」
「そう⋯⋯⋯か」
俺はまたわざとらしく反対方向の道へと進む。
「こっちだったかなぁ」
そっちは反対です。
まだ酔ってるのかな。
でもそんな感じじゃない。
わざと⋯なのかな。
わざとだとしたらなんでなんですか?
大地さんも私と同じ気持ちなんですか?
特に会話はなかった。
夢花とくっついて歩いているだけ。
それだけで良かった。
なんでこんなことになったんだろうか。
早く離れないとダメなんだ。
ダメ⋯⋯⋯⋯なのに。
「あ、大地さん、ここから外に出るみたいですね。道⋯また間違っちゃってましたね」
「ああ、どうしたんだろうか。少し夜風に当たるために外に出ないか?」
目の前にベンチもあるみたいだ。
背もたれのない座面だけのベンチだ。
「少し座ろう」
大地さんが腰をかける。
その時に腕を取ってしまう。
「あっ⋯⋯⋯」
「どうした?」
「いえその⋯なんでもないです⋯」
私は大地さんの横にちょこんと座った。
チラッと大地さんを見た。
夜風が大地さんの髪を靡かせている。
黒くてサラサラな大地さんの髪。
髪をかきあげる仕草。
浴衣の隙間から見える肌。
なんだか色っぽく見えてしまう。
これが大人の魅力ですか?
ふわっと香る夢花のシャンプーの香り。
風が吹くことで俺の鼻腔を優しく刺激する。
組まれていない腕がとても寂しく感じてしまった。
わざとらしく俺は肘を曲げる。
これって⋯⋯⋯⋯
いいのかな、また腕組んでいいの?
大地さんのお顔を見る。
少し恥ずかしそうに⋯してる?
どうしよう。
「失礼します!」
勇気を出してくれたんだろう。
腕を組みに来てくれた。
「ありがとう夢花」
何を⋯⋯⋯これじゃあ嬉しがって⋯⋯
いや、嬉しいんだ。
して欲しかったんだ。
俺からお願いするのが恥ずかしかった。
なんてずるいんだ俺は。
こんな年下の夢花に無理させて⋯
自分が嫌になる。
だけど今この瞬間を楽しみたかった。
こうしているだけで嬉しい。
ドキドキしてる。
でもそれ以上に安心していた。
大地さんの体温が匂いを感じている。
ずっとこうしていたい。
大地さんはどうですか?
離れたくない⋯⋯な。
もういっそこのまま⋯って何を考えてるんだ。
そろそろ行くか。
こんな時間に2人っきりでいたらダメだ。
「そろそろ⋯行こうか」
「⋯⋯⋯はい」
腕を組んだまま立ち上がる。
旅館に戻り、大浴場の方へと歩く。
「え?課長と⋯井上さん?」
何も考えてなかった。
大浴場なんて誰かしらに遭遇する確率が高いことを失念していた。
1階にバーもあるそうで、まだまだ飲みたい社員は飲みに行くそうだ。
俺は⋯部屋に戻るとするか。
飲み足りなくはないんだがなぁ。
温泉に行きたいんだ。
あの後はアリサもガンガン日本酒を飲んでたし、さっきのお土産のお酒は持ってこないだろ。
玉木さんを坂下先輩と抱えながら部屋に戻る。
この前の飲み会の日はこれを大地さんとしてたのね。
思った以上に酔った人を動かすのは大変だった。
「はぁ、もうダメ疲れたぁ」
「私も疲れたわ⋯ゆっくり休みましょ」
部屋に戻ると布団が敷かれていた。
玉木さんをそこに寝かし、両隣に私と坂下先輩も横になる。
もう既に寝ている玉木さん。
坂下先輩もすぐに寝ていた。
歯を磨いてないのに気付いたので、音を立てないようにして寝る準備を済ませていく。
酔ったらみんなこうなのかな?
私もお酒飲んだら玉木さんみたいに大地さんにあんなことできるのかな。
あんな⋯⋯⋯
いいなぁ、私も大地さんにくっつきたい。
布団に横になる。
部屋は真っ暗にしていなかった。
近くに置いてある自分のカバンの中からレッサーパンダのキーホルダーを取り出した。
手に持ちそれを眺めている。
大地さんとおそろい。
嬉しいけど、嬉しいんだけどなぁ。
飲み会になると全然大地さんと話せないのが辛い。
早く20歳にならないかなぁ。
ごちゃごちゃ考えてたら、なかなか寝付けない。
温泉⋯行こうかな。
酔ってはいるが、まだ寝れそうになかった。
サウナあったよなぁ。
得意ではないが行ってみるか。
まだ22時だもんな。
俺は準備をし、大浴場へと向かう。
部屋を出ると何故かそこにレッサーパンダのお揃いのキーホルダーを手に持った夢花がいた。
「あっ、大地⋯⋯さん⋯」
温泉に行こうとしてたのに、向かった先は大地さんの部屋の前だった。
どうしようか迷っていたら、部屋から大地さんが出てきてくれた。
「どうした?寝れないのか?」
⋯⋯寝れません。
あんなに色んこと見せられて、寝れるわけないじゃないですか。
大地さんを責める言葉を言ってしまいそうだった。
だから俯いて黙ってしまった。
「これから温泉に行こうとしててな。夢花も行ってきたらどうだ?」
玄関先で立ってるのも変だからな、一緒に行くことを提案してみたが⋯
温泉って貸切じゃ無い限り別々だもんな。
それでもいいんだ、俺が入りたいからな。
「はい、私も温泉に行こうとしてて、でもなんだか大地さんに会いたくて⋯」
「ん?俺に?」
「な、なんででしょうか⋯」
「そんな時もあるのかもな。一緒に大浴場まで行こうか」
酔っていたから曖昧なところもあるが⋯
夢花はまだお酒を飲める年齢じゃない。
自分だけ酔わないでいたら寂しくなるのかもしれないな。
「坂下先輩も玉木さんもたくさん飲んでたからなのか寝ちゃってて」
大地さんと並んで歩く。
散策デートじゃないけど、少しずつ気持ちが軽くなる気がしていた。
少しふらつく大地さん。
そんな大地さんを私は身体を使って支えた。
「おっと⋯すまない。飲みすぎたんだろうな」
「い、いえ⋯」
支えた勢いで腕を組んでしまった。
「ありがとう、そろそろ離して⋯」
「ダメです!またふらついたらどうするんですか?」
やっと2人きりなんです。
やっと掴めたんです。
やっとくっつけたんです。
簡単に離したくないです。
坂下先輩も玉木さんも女将さんも、この旅館に来てから3人の女性とくっついてるんですよ大地さん。
みんなずるい。
今は私の番だもん。
「うーん、じゃあしばらく頼むな?」
「はいっ!」
良くはないんだが⋯
まぁいいか。
考えちゃダメなんだが、こうもくっつかれると比べてしまうんだよなぁ。
玉木さんもアリサも中々の破壊力なんだが⋯⋯⋯⋯
これ以上は言うまい。
これから、そう、これからだ夢花。
「大地さん、何考えてます?」
「ん?もちろんありがたいなぁって思ってるところだ」
これは気づかれたのか?
まさかそんなわけない。
漫画やラノベじゃないんだ、気付かれたらエスパーだろ。
やったやった、大地さんの許可までもらっちゃった。
大浴場まで少しで着いちゃうかもだけど、それでもいいもん。
ふふ、嬉しい。
でも私がもっと女性らしい体付きなら、大地さんはもっと嬉しかったかなぁ。
少しお酒臭い。
普段は電車でこの匂いを嗅ぐと嫌悪感を覚えてたけど、今はなんだか嬉しい。
どうしてだろう、不思議だな。
大地さんだからなのかな。
私は今のこの雰囲気を堪能したくて黙って大地さんと歩いていた。
「あれ?こっちじゃなかったか?」
俺はわざとらしく道を間違えたフリをする。
「ごめんなさい大地さん、全然意識してなくて⋯」
「気にしないでくれ、俺が酔っ払い過ぎてるんだろう、俺の方こそすまなかった」
もっとこうしていたかったんだ。
夢花が謝ることじゃない。
「でも、このまま辿り着かなくても⋯」
「え?」
「ううん、なんでもないです⋯」
「そう⋯⋯⋯か」
俺はまたわざとらしく反対方向の道へと進む。
「こっちだったかなぁ」
そっちは反対です。
まだ酔ってるのかな。
でもそんな感じじゃない。
わざと⋯なのかな。
わざとだとしたらなんでなんですか?
大地さんも私と同じ気持ちなんですか?
特に会話はなかった。
夢花とくっついて歩いているだけ。
それだけで良かった。
なんでこんなことになったんだろうか。
早く離れないとダメなんだ。
ダメ⋯⋯⋯⋯なのに。
「あ、大地さん、ここから外に出るみたいですね。道⋯また間違っちゃってましたね」
「ああ、どうしたんだろうか。少し夜風に当たるために外に出ないか?」
目の前にベンチもあるみたいだ。
背もたれのない座面だけのベンチだ。
「少し座ろう」
大地さんが腰をかける。
その時に腕を取ってしまう。
「あっ⋯⋯⋯」
「どうした?」
「いえその⋯なんでもないです⋯」
私は大地さんの横にちょこんと座った。
チラッと大地さんを見た。
夜風が大地さんの髪を靡かせている。
黒くてサラサラな大地さんの髪。
髪をかきあげる仕草。
浴衣の隙間から見える肌。
なんだか色っぽく見えてしまう。
これが大人の魅力ですか?
ふわっと香る夢花のシャンプーの香り。
風が吹くことで俺の鼻腔を優しく刺激する。
組まれていない腕がとても寂しく感じてしまった。
わざとらしく俺は肘を曲げる。
これって⋯⋯⋯⋯
いいのかな、また腕組んでいいの?
大地さんのお顔を見る。
少し恥ずかしそうに⋯してる?
どうしよう。
「失礼します!」
勇気を出してくれたんだろう。
腕を組みに来てくれた。
「ありがとう夢花」
何を⋯⋯⋯これじゃあ嬉しがって⋯⋯
いや、嬉しいんだ。
して欲しかったんだ。
俺からお願いするのが恥ずかしかった。
なんてずるいんだ俺は。
こんな年下の夢花に無理させて⋯
自分が嫌になる。
だけど今この瞬間を楽しみたかった。
こうしているだけで嬉しい。
ドキドキしてる。
でもそれ以上に安心していた。
大地さんの体温が匂いを感じている。
ずっとこうしていたい。
大地さんはどうですか?
離れたくない⋯⋯な。
もういっそこのまま⋯って何を考えてるんだ。
そろそろ行くか。
こんな時間に2人っきりでいたらダメだ。
「そろそろ⋯行こうか」
「⋯⋯⋯はい」
腕を組んだまま立ち上がる。
旅館に戻り、大浴場の方へと歩く。
「え?課長と⋯井上さん?」
何も考えてなかった。
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