【完結】大人は恋で変われない〜35歳独身男。少女漫画で恋を学んだ結果〜

音無響一

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「この学生インタビューも自分を変えるためにご応募していただけたのですか?」

「実は、去年も応募しようとしたんです」

「そうでしたか」

「でも、なかなか一歩が踏み出せなくて」

「今年は踏み出せたんですね」

「はい、今年は……自分でも分からないんです。あの時、川村さんがいて、掲示板の貼り替えをしていて、何を貼ってるのか気になったんです」

「あ、あの時の見られてたんですね」

「ご、ごめんなさい。でも、どうして言えたのか自分でも分からないんです。川村さんだったからなんでしょうか。今も、こんなに話せてるのが不思議で……」

「人と話すのが苦手なんですか?」

「はい……小学生の頃からあまり友人もいません。友達と遊んだことすらあまり記憶になくて」


そうだったのか。
似てるな、俺に。
俺もそうだった。
ずっと自分の殻に閉じこもって生きてきたな。


「大学で友人を見つけられたらって思っていたのですが、どうしていいか分からなくて。だから未だに大学でも友人はいません」


友達もいないところまで似てるんだな。
何があっても何もない。
意思がなく流されるまま生きていくとそうなるんだ。
俺が一番それをよくわかっている。


「今も今までも、楽しみなんて何もないんです。自分のやりたいことも分からなくて」


彼女に逃げ場はあるんだろうか。
俺は逃げた、少女漫画に。
そして妄想の世界に閉じこもってたな。
それは今も変わらない。
変えようともしていないのに、この子は……


「高校生の時に思ったんです。このままじゃダメなのかなって。少しずつ違和感を感じたんです」


違和感、か。
ずっとその違和感から逃げてるな。
立ち向かう選択肢は俺にもあったんだろう。
あったんだがな……


「川村さんのおかげ、かもしれません」

「私の、ですか?」

「はい、あの時、あの場所に誰も居なかったら、私はまた踏み出せなかったかもしれません」

「それはたまたまでは……」

「いいえ、違うと思います。多分、川村さんじゃなかったら話しかけられなかったと思います」

「そんなことは……」

「なんでだろうって、私も考えました。今も私はたくさん話せてます。それは川村さんだからなんだって。他の方だったら無理だと思います」


なにか特別なシンパシーでも感じたんだろうか。
でも確かに不思議なんだ。
俺も話しやすく感じる。
この子に会いたいとすら思った。
会えるこの時間を楽しみにしている自分が確かに存在していたんだ。


「ありがとうございます。私なんかをそんな風に思って頂けて」

「いえ、私の方こそ……本当にありがとうございます」


なんだろうか。
眩しいな。
変わろうと思って頑張る子だからだろうか。
この子のために頑張ろう、そう思うインタビューだった。





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