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音無響一

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演技は行為の前から始まっている|嘘の上塗り|永遠の虚無

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何してるんだろう。

やっぱり虚しい。

楽しいのは一瞬……ううん、もうそれすらも楽しい時間だったのか分からない。

いつからなんだろう。

いつから私はこうなんだろう。





「付き合ってください」


高校2年生の秋、私は告白された。

好きな人だった。

嬉しかった。

あの人は私にこう言った。


「君みたいな大人しい子が大好きなんだ」


そうなんだ、あなたがそういうなら、大人しい今のままの私でいるね。


「なぁ、なんでお前そんなに無表情なんだよ。つまんねーな」


私の初めての経験だった。

頭の中が真っ白だった。

でもあなたの好みが大人しい子だって言うのは分かってた。

あなたが大人しい子が好きだって言うからそうしてたのに、それじゃダメだったんだ。

あなたの好みの子にならないと別れないとなの?

どうすれば良かったの?







「もっと声出してくれよ、こっちだけ必死にしてるみたいで嫌なんだけど」


大学生の時だったな。

声出すの恥ずかしいんだもん、我慢するのもダメなんだ。

私、どうしたらいいか分からないよ。


「俺さ、Mの子が好きなんだ。ドMになってよ」


Mって何?


「俺の言うこと聞けばいいよ、出来んだろ?俺のこと好きなら」


好きだよ、大好きになったから……

言うこと聞けばいいの?

じゃあなんでも言うこと聞くね?

だからたくさん愛してください。








「言うこと聞くだけの女ってつまんねーわ」


社会人になって2年目だった。

数年ぶりの彼。

でもなんで?

男の人はそういうのが好きなんじゃないの?

Mになればいいんでしょ?

どうしたらいいかわかんないよ……


「恥ずかしがる女の方が可愛いんだわ。なんでなんでも言うこと聞いてんの?」


恥ずかしがるってどうすればいいの?


「はぁ、そんなのもわかんねーの?自分で考えて喜ばせろよ俺のこと」


……分かりました、考えます。



「お、ちょっとは盛り上がるじゃん、その感じ最高だよ、はは、可愛いな」


そっか、こういうのが可愛いって思われるんだ。

言うこと聞くだけじゃだめなんだ。

もっと可愛いって思ってくれるように演技しないと。


「お前さ、可愛いだけで全然しゃべらないし、会話も盛り上がらないじゃん。もっと話すのも上手くなれよ」


……そんなの無理だよ、どうしていいか分からないんだもん。

男の人は大人しい子が好きって、あなたもそう言ってたのに。








「最高に可愛いじゃん、こういうの好きなの?」


マチアプで出会った人とホテルに来た。

求められたから。

この人もこういうのを可愛いって思うんだ。

それなら私得意かも。


「はぁ、最高だったわ。また遊ぼうよ」


そんなに良かったんだ。

私の演技。





「すごいね、聞き上手でたくさん話しちゃった」


この人はナンパしてきた人。

気持ちよさそうに話してくれて良かった。

私の相槌とかも上手くなったみたい。


「良かったらこの後、どう?」


恥じらえばいいんだよね。

ほら、この人もこれでいいみたい。


「やば、気持ちいいわ、君も気持ちいい?」


うん、とっても気持ちいい振りしてるよ。

これが好きなんだもんね男の人は。

ふふ、喜んでくれてるみたい。

でも気持ちいいってなんだろう。

はぁ、久しぶりにしたから楽しかった……

のかな。

なんか分かんなくなって来ちゃった。






「君といると安心するね」


そうなの?

どんなところが?


「俺の話たくさん聞いてくれるし、優しいし、それに……」


ふふ、良かった。

久しぶりの彼氏だもんたくさん喜んでもらいたいな。

それしか知らないから。


「それに、ああ、やっぱり気持ちいいよ」


この人も気持ちいいんだ。

良かった。

私は……


「また今度、次はまた土曜日にね」


ふぅ、楽しか……ったのかな。

よろこんで貰えて良かったけど……

ううん、これでいいの。

だって私はわからないから。

演技するしか知らないから。

またあなたに会うまでに、何か覚えたら喜んでくれるのかな。

でも何があるんだろう。

もうわかんなくなってきちゃった。

何がしたいんだろう私って……

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