わたくし、聖女様ではございませんっ!〜最低悪役令嬢ですので、勘違いはやめてください〜

Rimia

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本人無自覚の出会い編〈7歳~12歳〉

悪役聖女は誘拐される

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 誘拐っていっても、本当に誘拐されるわけじゃない。あくまで連れ去られたように見せて、自ら出て行くのだ。ある程度大きくなったら・・・・そう、7歳くらいになったらもう歩けるだろうし頃合いだろう。このくらいの歳なら一人で町を歩いていても怪しまれないだろうしね。

 そして私がいなくなっても、私を溺愛するメイドさんたち以外・・・家族はきっと悲しまないだろう。なぜなら愛されていないということが分かるから。

 今もお母様は赤ん坊である私の面倒を見ないでメイドさんに任せっきりだ。それに思い返してみれば、両親の顔を見たことがない。面倒を見ないにしても、普通なら様子くらいは見に来るだろう。
 それが一度もないことから悲しいことに、愛されていないと気づいたのだ。

 そんな邪魔者の娘が誘拐されていなくなったとしても、なんとも思わないだろう。それにメイドさんたちの会話から、両親と同じく見たことはないけど私にはお兄様がいるらしいので、家を継ぐとかの家督かとく問題は大丈夫なはずだ。

 だから今から7歳までの7年間、不審に思われないように完璧な侯爵令嬢を演じながら、冒険者としてやっていけるように、魔法の腕を上げていくのだっ!

 そう決めてからの行動は早かった。


  ☆    ☆    ☆    


 ハイハイができるようになってからは、部屋の本棚に置いてあった魔術の本を読み漁った。誰かに見つかったときは、不気味な子と思われないように、好奇心旺盛こうきしんおうせいな子供が本を開いているだけ~というフリをした。


 ・・・・・・・・・これが意外とキツかった。(精神的に)中身大人なのに赤ちゃんのフリとか、どんな罰ゲームだよおい。


 歩けるようになってからは、ダンスのレッスンなどのレディーとなるための練習が始まったので、必死に取り組んだ。その甲斐あって、数ヶ月後には完璧なレディーの振る舞いを身につけることができた。
 これが意外と便利で、頬が引きつりそうになるときでも自動で風雅な笑みをつくってくれるので助かっている。
 今では、先生にも絶賛されるほどにまでなり、上手く完璧令嬢を演じられているようで内心でほくそ笑む。


 ・・・・心の声は仕方ない。そう、仕方ないの!言葉遣いとか、全然、侯爵令嬢感ないじゃんとか、そこはツッコんじゃ駄目!!
 私だって、公の場ではちゃんと出来てるんだから。

 ・・・できてるよね?お世辞とかじゃないですよね先生?? ね!?




 最近では両親の顔を見るようになってきた。だが、部屋の窓からチラッと見かけるだけで話したことはない。家族関係大丈夫かなと思いつつ、この境遇のゲーム内のロゼットに同情する。そりゃ、ひねくれるワケだ。

 お父様は茶髪に青緑の瞳、お母様は銀髪に水色の瞳をしていた。そしてお兄様は見たことがないから分からないが、メイド達の話を又聞きするに、紫紺の髪に赤紫の瞳をしているらしい。

 そして私は髪はお母様譲りの銀髪に、瞳はお父様よりの瞳の色から青が消えた感じで、濃いハッキリとした緑色をしていた。ゲーム通りのロゼットの容貌。悪役令嬢にありがちなつり目ではなく、優しそうな顔立ち。これを悪用して、ロゼットは非道の道へと突き進む。


 ・・・だけどホントに、将来断頭台へ突っ走っていく悪役令嬢には見えない。今の私なら普通の令嬢として魔法学園でもやっていけるのではないかと思ったが、やめておいた。ゲームの強制力が働くかもしれない。いわれもない罪を着せられるのはごめんだし、やっぱり冒険者が一番だよね!





 そんなこんなであっという間に時は過ぎ去り、私は7歳の誕生日を迎えた。




今日は





 だが、祝うのは誕生日ではない。7年もの月日をかけて準備してきた計画の実行を、だ。

 この7年間、私は処刑を回避しようと全力で取り組んできた。

 冒険者としてやっていくために、家の裏でこっそり魔法の練習もしていた。元々魔力が人より多く、ロゼット自身の能力は低くなかった為、制御のコツが掴めれば大体の魔法は使えるようになった。
 そしてレディーの振る舞いも完璧で、誰も私が自ら家を去るなんて、絶対に思いもしないだろう。
 そう!私は今日、自由を手に入れる!

 ヒロインより幸せになる悪役令嬢というなんとも異色のエンディングを見せてやりますわっっ!
 思い知りなさいっ!ゲーム会社!!

 おほほっお~っほっほっほっ!!



 ・・・なんか今、悪役令嬢へ近づいた気がしたが、間違いであってほしい。





 今は真夜中。屋敷の者はみんな寝静まり、物音一つしない。

 私は部屋の中を荒らし、金品を袋の中へ入れた。屋敷の者達に、私が攫われたと思わせるためと、金品を売り払い、当分の生活の足しにするためだ。

 「っ・・・・・・さようなら。」

 そう言って屋敷の門を出る。
 ・・・・特に思い入れなんてないはずの家なのに、やけにさみしく感じる。その思いを断ち切るべく、力強い一歩を踏み出――――――――――――――



 「ロゼット様・・・・。行かれるのですか。」


 まだ少し高い男の子の声。私を見つめる紺碧の瞳に、冷たささえ感じさせる水色の髪がかかる。



  どうして・・・ドウシテ、アナタガココニイルノ?



 そう、屋敷から出た私の目の前にはここにいるはずのない人物がいた。
 我が家に代々仕えているゼルダン子爵家の長男、ユーリスト・ゼルダン。

 私が逃げようとしても、彼には絶対にかなわない。なぜなら彼はまだ9歳と幼いながらも、大人たちが入る騎士団に入隊したのだ。今はまだ年齢的に幼いため見習いだが、将来は国一番の剣の使い手となるだろう、といわれている。
 だからいくら魔法を使えるようになったといっても、今の私は彼にとってザコに等しいだろう。きっと、いや間違いなく瞬殺される。


 私は彼とほとんど関わりはなかったはず。いや、むしろ関わらないようにしていた。

 なぜか?


 それは彼が将来『ラブ・ラビ』攻略対象の一人、“氷の騎士”と呼ばれるようになる人物だから―――――――――――――――――――――。



          なぜ気がついた?

 さっきの言動からユーリストは、私が出て行くのを知っていたようだ。


 「・・・・さようなら。ロゼット様」


 そう言うなり、ユーリストは腰に差していた剣をスラリと抜き、刃先をあらわにする。
 そして、その剣をまっすぐ私へと向けた――――――――――――――――。


 あぁ、そうか。彼は私のことを・・・・


 思い返してみれば、娘に一度も顔を合わせることをせず、家の外聞ばかり気にする親が逃亡なんていう家名に泥を塗る行為を許すはずがない。

  たとえ、それが自らの娘でも。




 そう。私はここで・・・・・・・・・・






             
























                    

           殺される。

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