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3.検査
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その病院のエントランスは広く、圧倒された。
入口に入ってすぐの受付カウンターに、紹介状を見せると、
「神経内科ですね。三階です」
と、看護服に身を包んだ受付嬢に、淀みなく言われた。
足を進めると、真ん中が大きく吹き抜けになっており、硬質ガラスが敷き詰められた高い天井からは、明るい日差しが差し込んでいた。
「すごいわね」
清子もこの病院に来るのは、初めてらしかった。
信二は、言うまでもない。
そもそも忙しさにかまけて、この間の町医者に行ったことですら、久方ぶりなのだ。
三階の神経内科専用の受付に、紹介状を渡すと、すぐ診察室に呼ばれた。
信二と清子、二人が診察室に入ると、紹介状をデスクに広げた医者が言った。
「いつから入院されますか?」
「ちょっ、ちょっと、待ってください。
いきなり入院なんて…」
「主人は、そんなに悪いんですか?」
二人は、面食らった。
「それを調べるための検査入院をするんです」
と、医者は表情も変えず、言った。
「あ、ああ…。検査入院…」
と、清子がホッとしたように言った。
だが、信二は納得できなかった。
「待ってください。検査なら、今日できる範囲のことで結構です。
そんな何日も、検査ごときで、仕事は休めない」
信二は、前回の打ち合わせで、クライアントからの手ごたえを感じていた。
(何とか、今年中にGOサインをもらわねばならん)
(社員のみんなを安心させて、年を越させてやりたい)
信二の思いは、強かった。
何度か医者との応酬が続いた後、諦めたように、医者が言った。
「わかりました。
できる限りのことは、やってみましょう」
血液を抜かれ、骨髄液を抜かれた。
肺活量を図られ、MRIに入れられた。
信二と清子は、あちらへ、こちらへ、と広い病院内を走り回らされた。
その中でも、一番閉口したのは、神経伝導検査、と言うやつだった。
電極の棒を足と腰に当て、微弱な電流を流す。
微弱とはいえ、電流が流れるたびに、体の中に針金をねじ込まれるような痛みが走った。
「いやあ、参った」
検査の空き時間に、清子と食事をしようと、病院内の食堂に向かった信二がこぼした。
「そんなに痛いの?」
「ああ。心構えのないところに、いきなり来るからな」
と、信二は苦笑いした。
「変な病気じゃないといいけど」
と、食事の席に着いた清子が、心配を口にした。
「なあに、疲れがたまっているだけだろうよ」
信二は、気にも留めていないようだった。
そして、ゆっくりと、二人だけの食事を楽しんだ。
信二が、ハンバーグランチを頬張る姿を見て、清子が、面白そうに笑った。
「なんだ?」
「あなたが、まともに食事する姿を見たの、久しぶりだわ」
「何を言ってる。
いつも見てるだろう」
「そうでもないわよ。
あなたは、忙しく新聞かデザイン業界誌を見ながら、いつも食事してるじゃない。
出された料理に、関心がないみたいに。
まともに料理に目を向けて、食べる姿を久しぶりに見たわ」
「そうかな」
「そうよ。生ごみ出しても、きっと気づかないで食べるんじゃないの、って思ったこともあるもの」
「馬鹿を言うな」
信二が、怒ったように言った。
「試さなかったけどね」
清子は、悪戯を楽しむ子供のように、笑った。
入口に入ってすぐの受付カウンターに、紹介状を見せると、
「神経内科ですね。三階です」
と、看護服に身を包んだ受付嬢に、淀みなく言われた。
足を進めると、真ん中が大きく吹き抜けになっており、硬質ガラスが敷き詰められた高い天井からは、明るい日差しが差し込んでいた。
「すごいわね」
清子もこの病院に来るのは、初めてらしかった。
信二は、言うまでもない。
そもそも忙しさにかまけて、この間の町医者に行ったことですら、久方ぶりなのだ。
三階の神経内科専用の受付に、紹介状を渡すと、すぐ診察室に呼ばれた。
信二と清子、二人が診察室に入ると、紹介状をデスクに広げた医者が言った。
「いつから入院されますか?」
「ちょっ、ちょっと、待ってください。
いきなり入院なんて…」
「主人は、そんなに悪いんですか?」
二人は、面食らった。
「それを調べるための検査入院をするんです」
と、医者は表情も変えず、言った。
「あ、ああ…。検査入院…」
と、清子がホッとしたように言った。
だが、信二は納得できなかった。
「待ってください。検査なら、今日できる範囲のことで結構です。
そんな何日も、検査ごときで、仕事は休めない」
信二は、前回の打ち合わせで、クライアントからの手ごたえを感じていた。
(何とか、今年中にGOサインをもらわねばならん)
(社員のみんなを安心させて、年を越させてやりたい)
信二の思いは、強かった。
何度か医者との応酬が続いた後、諦めたように、医者が言った。
「わかりました。
できる限りのことは、やってみましょう」
血液を抜かれ、骨髄液を抜かれた。
肺活量を図られ、MRIに入れられた。
信二と清子は、あちらへ、こちらへ、と広い病院内を走り回らされた。
その中でも、一番閉口したのは、神経伝導検査、と言うやつだった。
電極の棒を足と腰に当て、微弱な電流を流す。
微弱とはいえ、電流が流れるたびに、体の中に針金をねじ込まれるような痛みが走った。
「いやあ、参った」
検査の空き時間に、清子と食事をしようと、病院内の食堂に向かった信二がこぼした。
「そんなに痛いの?」
「ああ。心構えのないところに、いきなり来るからな」
と、信二は苦笑いした。
「変な病気じゃないといいけど」
と、食事の席に着いた清子が、心配を口にした。
「なあに、疲れがたまっているだけだろうよ」
信二は、気にも留めていないようだった。
そして、ゆっくりと、二人だけの食事を楽しんだ。
信二が、ハンバーグランチを頬張る姿を見て、清子が、面白そうに笑った。
「なんだ?」
「あなたが、まともに食事する姿を見たの、久しぶりだわ」
「何を言ってる。
いつも見てるだろう」
「そうでもないわよ。
あなたは、忙しく新聞かデザイン業界誌を見ながら、いつも食事してるじゃない。
出された料理に、関心がないみたいに。
まともに料理に目を向けて、食べる姿を久しぶりに見たわ」
「そうかな」
「そうよ。生ごみ出しても、きっと気づかないで食べるんじゃないの、って思ったこともあるもの」
「馬鹿を言うな」
信二が、怒ったように言った。
「試さなかったけどね」
清子は、悪戯を楽しむ子供のように、笑った。
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