さよならの代わりは

野村にれ

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感謝

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「子どもが産めないかもしれないことだけで、王太子殿下の婚約者候補になれないことが許せなかったのではないでしょうか」
「候補者に選ばれたのに、外されることが恥ずかしいとも思ったのかもしれないわ」

 フェイリアの言葉に、ウィンラーも確かにそうだと思った。

 候補者に選ばれた令嬢たちは発表とまではいかないが、周知されており、ララスに何か原因があったのなら、外されるかもしれないと思い、あの性格なら耐えられないことだろう。

「産みたくても産めない辛さは計り知れないと思いますが、分かっていたのなら、同じ候補者として、辛い検査を受けたのに意味がないと思ってしまいます」
「それはそうよ」
「ですが、今さら証明はできないと思ってはおります。こんな話をして困らせてしまうとも思っております。ですが、話をしたいとずっと思っておりました、聞いていただきありがとうございました」

 ウィンラーはそう言って、深く頭を下げた。

 今さらそうだと分かっても、側妃が子どもを産んでおり、何になると言われるかと思ったが、どうしても話したかった。

「医師を調べることは可能だろう」
「ええ、診断書を出した者たちも調べられます。もしも、事実だったら可哀想な気持ちもあるけど、不正は許せないわ」
「診断書は間違いでしたわね、王宮だったら不正はできなかったでしょう」
「そうだな、今後は診断書は禁じよう」

 フェイリアは側妃のことも変える時期ではないかと思っているが、さすがに嫁いだ身としては、口を出すのはやめた。

 ウィンラーは話を終えて、ようやく王宮を後にすることになった。フェイリアが送ってくれることになり、感謝を伝えるチャンスだと思った。

「ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ彼女に嫌な思いをしたでしょう?」
「はい……」
「同席していた女性がいたでしょう?メイリーと言うのだけど、元は私の侍女で、今は母の侍女の一人なんだけど、指名して付いてもらったの」
「そうだったのですか」

 監視役なのだろうと思い、ララスの言いなりではないと分かったが、まさかフェイリアのおかげだとは思わなかった。

「止められるかと思っていたのですけど」
「もしおかしなことを言い出しても、何を言ったかだけ覚えておいて欲しい。脅すようなことがない限り、止めなくていいと言ってあったの。彼女も嫌いなのよ」
「え?」
「彼女の侍女に一時期なったことがあったのだけど、酷かったらしくて……私が里帰りした時に話を聞いて、お母様に付いた方がいいのではないかと助言したの」
「まあ」
「ブルーベル様に付きたいと思っているそうなんだけど、なかなか難しくてね」

 メイリーはブルーベルに付きたいと希望を出しているが、まだ叶っていない。

 フェイリアもメイリーがついてくれればと思っているが、モモリを受け入れるだけでも時間が掛かったことから、下手に付けられなかった。

「体調がお悪いと聞いております」
「ええ、そうなの……」

 ララスのことはいくらでも話してもいいと判断しているが、ブルーベルのことは慎重に進めたいところであったために、ウィンラーにも話す気はなかった。

「お美しい方なのでしょうね」
「ええ、そうね。王子と王女にそっくりよ。本当はブルーベル様にそっくりというのが正しいのだけど、皆様お顔を知らない方が多いから」
「はい、お二人を見て、美しい方なのだろうと思っておりました」
「言いたいことは分かるわ」

 フェイリアもララスの子どもなら、あのように美しくないだろうと言いたいのだろうと察した。

「言葉が過ぎました」
「いいえ、私も口には出さないけど、同じように思っているわ」

 人の顔のことを言うつもりはないが、ララスの中身を嫌っているせいなのか、顔も嫌になっていた。
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