さよならの代わりは

野村にれ

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証言2

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「私、そんなこと気にもしていなかったわ。でも、返してもらって、一応、私の物だとは確認したのだけど」
「既に見ていたのだから、内容が変わるなんてこともないですからね」
「ええ……特におかしな様子もなかったから」

 エミリーはララスにポイと返されて、嫌な気持ちにはなったが、渡した時と変わった様子もなかったことだけは確認をした。

「利用するために借りていったということですか」
「そういうことになります。おそらく、あなたが診断を受けたのをララス殿下はどこかで聞いたのでしょう」
「そんな……でも、しつこかったのはそういうことだったのですね」

 執拗にわざわざ貸すように言って来ていたのも、そういうことだったのならば、ララスの行動が理解ができた。

「聞いていいのか分かりませんが、ララス殿下は何かブライダルチェックに問題があったってことですか?」
「当時、問題があったかまではまだ調査中です」
「…失礼しました。ローラちゃん、生理不順も問題になるの?」
「えっ?」

 声を出したのはベリンス医師だったが、調査員たちも驚いた。

「ええ、なるわね」
「そうなんだ」
「もしかして、ララス殿下が生理不順だったと?」
「あっ、いえ、個人情報ですよね……」

 エミリーはポロっと口にしてしまったが、不味かったと反省していた。

「いえ、是非、お聞かせください」
「ララス殿下は生理が不規則だと話しているのを聞いたことがあります」
「有名な話なのですか?」
「い、いえいえ、今もいるかは分かりませんけど、乳母だった方がいらして、その方が話しているのを聞いたことがあって、私も若い頃は同じで、珍しいことではないと思っていたので、一緒だと思っていたのです」

 エミリーは当時20歳で、ララスは16歳。「へえ、そうなんだ」と聞き流す話ではあったが、エミリーも一緒だったので、記憶に残っていた。

「乳母の名前は分かりますか?」
「オメリー・ジンクという方です」
「ありがとうございます」

 既に話を聞いているかもしれないが、再度話を聞いてみようと思った。

「既にお預かりしている状態で恐縮ですが、お名前は伏せますので、証拠として診断書をお借りしてよろしいですか?」
「はい、お使いください」
「後、ララス殿下に診断書を奪われた日を覚えていますか?」
「えーっと、少しお待ちください」

 何か閃いたような顔をしたエミリーは部屋を出て行き、日記でも書いているのかと思ったが、戻って来るとその手には本を抱えていた。

「この本の発売日です」

 机の上に置かれたのは人気小説のシリーズ三作目で、調査員も知っていた。

「発売日で、その日の帰りに買ったのです。奪われて嫌な気持ちになったのを、小説で回復させたので、間違いありません」
「ありがとうございます、こちらで調べます」
「はい、よろしくお願いいたします」
「エミリーの好きな小説だものね」
「そう!だから、覚えていたの」

 エミリーはそう言いながらベリンス医師に微笑んでおり、調査員たちは目の前の二人に心から感謝をしていた。

「エミリー夫人の証言を書面にさせていただきますので、確認してサインをいただきたいのですが、よろしいですか?」
「はい」
「後、怖がらせる気はないのですが、念のためにこちらとご実家に警護を付けております。何かありましたら、叫んでください」
「えっ」

 エミリーは室内なのに、キョロキョロと見渡していた。

「念のためよ、パシム侯爵家が何か言って来たら、男爵家では対応できないわ」
「そうね……でも、そんなことして来るかしら」

 調査員たちはベリンス医師が、エミリーを守って欲しいと言っていた理由がよく分かった。診断書で繋がることは明らかであるのに、エミリーはあまり重く受け止めていない様子のままであった。
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